2026年03月 No.126 

トピックス 2

生産量国内第2位のシェアを支える「原着糸」技術と一貫生産体制の強み
/日本絨氈株式会社

 創業から140年余り、大阪・堺で織物を手がけてきたニッタン。1980年代後半に最新鋭機を導入し、「OEM供給」へと戦略的に舵を切って以来、現在に至るまで業界を支え続けています。同社の主力であるタイルカーペットのデザイン戦略や、環境性能に優れた「原着糸」の価値、そして全国どこでも狂わない「寸法安定性」の秘密とは。市場の変化をしなやかに乗り越え、5つのフィールドで快適空間を支え続ける同社の挑戦について、代表取締役社長 池﨑雄太氏と、常務執行役員 今津行雄氏からお話を伺いました。

写真:写真右から池﨑社長、今津常務
写真右から池﨑社長、今津常務

日本絨氈株式会社

 日本絨氈㈱(以下、ニッタン)は、大阪府堺市に本社を置く創業140年余のカーペットメーカー。ホテル宴会場などで使用する高級織りカーペットで培った技術を基盤とし、現在はタイルカーペットのOEM生産を主力事業として展開している。国内屈指の生産能力を持つ滋賀工場と本社工場から製品を供給し、タイルカーペットの生産量は日本第2位のシェアを誇る。確かな品質と高いデザイン力を競争力の源泉とし、オフィス、ホテル、スポーツ施設など多岐にわたる空間創造に貢献している。

5つのフィールドで、足元から快適な空間を支える

 古くから織物が盛んな大阪府堺市に創業したニッタン。社名にある、毛織の敷物、すなわち毛氈のことを意味する「氈(せん)」の字には、品質への誇りとこだわりが込められています。高級織りカーペットでの実績を基盤に、1980年代後半にはオフィス需要の高まりとともにタイルカーペットへ参入。「現在のOEM生産体制への変化のきっかけになりました」と池﨑社長は語ります。高い生産能力と納期対応力を武器にビジネスモデルを確立し、現在では5つのフィールドで快適な環境づくりを支えています。
 中核となるのは、タイルカーペットなどが主力の「オフィス分野」。「ホテル&ホーム分野」では客室向けの空間演出で培った品質をOEM生産を通じて、家庭向けにも展開しています。
 根底にあるのは、現在も「バンケット&ロビー分野」で手掛ける織りカーペットの品質へのこだわり。連綿と続く高品質への意識が、ロング人工芝で国内シェアトップの「スポーツ分野」やカーマットを製造する「カーライフ分野」でも活き、多様な生活環境を彩っています。

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自社紡糸のPPと再生ナイロン

 ニッタンの強みは、糸の調達・製造から製品加工までの一貫体制にあります。特に「ポリプロピレン(PP)糸」に関しては、工場内に3階層からなる巨大な紡糸設備を持ち、原料からの自社製造を行っています。
 最上段で原料チップを溶融し、顔料を練り込む「原着」を行うことで独自の色彩設計を実現しています。その後、中段、下段を経て強度のある糸になります。
 一方、「ナイロン糸」は、ケミカルリサイクルされた再生ナイロン「ECONYL®」を採用。廃棄物から作られ、何度も再生できる素材を利用することで、製造プロセスにおける環境負荷を軽減しています。
 自社技術で品質とコストをコントロールするPPと、環境性能に優れた高品質なナイロン。素材へのこだわりと使い分けが、次工程以降の品質を底支えしています。

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「ECONYL®」を使ったタイルカーペット

「生機」から「バッキング」へ。世界基準の品質を作り込む

 次に行われるのがタフト工程。2m巾で800本以上の針を備えたタフト機が不織布に糸を植え込み「生機(きばた)」を作ります。このままではパイルが抜けやすいため、続くバッキング工程で裏面をPVCで処理し、固定します。ニッタンではバッキング材にPVCのリサイクルシートも採用し、ここでも環境への配慮を行っています。その後、最終品への加工へ。
 これらの工程で作り込まれる品質の一つが「寸法安定性」です。「北海道から沖縄まで、どこでもきっちり施工できる」と池﨑社長が語る通り、どんな環境でもプロの施工現場で求められる精度を実現しています。
 また、ロットごとの品質のばらつきを抑え、数年後に汚れた一枚だけを交換しても違和感なく馴染む「均質性」、TVOC(総揮発性有機化合物)等の基準をクリアする「安全性」も確保。これら高い品質の積み重ねが、長年選ばれる理由となっています。

「原着ナイロン」が拓くデザインの可能性

 50cm角のタイルカーペットには、一枚の絵画のように表現できる織りカーペットとは異なる制約があります。「キャンバスが決まっている織りに対し、タイルはぶつ切りになる上、施工時に並べ方を細かく指定できない難しさがあります」と池﨑社長は語ります。
 この制約の中で意匠性を高めるのが「原着ナイロン」です。原料段階で着色するため発色が良く、表現の幅が広いのが特徴。「色の制約がなく何色でも糸を使えるため、デザインにこだわる当社の強みを発揮できる」と今津氏は語ります。社内には3D等の最新技術を駆使するデザイナー陣を擁しており、原着糸はデザイン力を最大限活かすための鍵となっています。
 また、水を大量に使用して染色する後染め商品とは違い、繊維の中まで着色されている原着糸は、アルコール消毒等が付着しても変色しにくいという機能面での優位性もあります。

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新たな市場への挑戦と展望

 市場の変化を見据え、新たな挑戦も進んでいます。タイルカーペットの国内市場の大部分を正方形が占める中、ニッタンは米国などで一般的な長方形に着目。滋賀工場に25cm×100cmで製造可能な全自動ラインを導入しました。同サイズの全自動生産は国内でも唯一であり、これによりヘリンボーン貼りなど、デザイン重視のオフィス需要への対応が可能となりました。
 また、家庭用市場への浸透も進んでいます。「徐々にではありますが、認知は確実に広がっている」と今津氏。プロユースの品質と、防音といった家庭ならではのニーズを満たす機能性が、新たな空間提案を後押ししています。

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方形のタイルカーペットによるヘリンボーン貼り

 オフィスから家庭へ、正方形から長方形へ。これまで培ってきた技術力と知見を基盤に、ニッタンは次の領域へ進化を続けています。

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