2022年11月 No.117 

インフォメーション コラム

「電線好き」からアンバサダーへ
伝えることで育む電線業界の未来

俳優 石山 蓮華 氏

プロフィール
 電線愛好家の俳優として独自の立ち位置を確立し、テレビ、ラジオ、イベント、トークショーなどで、熱い電線愛を語り続ける一方、Instagram(@renge_ge)などを通じて多彩な電線写真を発表している。2019年、日本電線工業会「電線の日」スペシャルコンテンツを監修。また、同年にリリースしたオリジナルDVD『電線礼讃』(アミューズソフト)では、プロデュース・出演を務めて話題となった。
 文筆家としても、2021年に初の単著『犬もどき読書日記』(晶文社)を刊行。2022年12月には電線偏愛エッセイ『電線の恋人』(平凡社)を刊行予定。『Rolling Stone Japan』(ネコ・パブリッシング)、『月刊電設資材』(電設出版)、『母の友』(福音館書店)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などのほか、『She is』『ホンシェルジュ』など情報ウェブサイトにも多数寄稿している。

写真:石山蓮華氏

 電線愛好家として知られる俳優の石山蓮華さんが、2022年6月に電線アンバサダーに就任。積極的に電線の現場に足を運び、取材と発信を継続する石山さん。電線の知識と愛もより深いものになりつつあるのではないでしょうか。今回は活動のお話を通じて、アンバサダーが電線業界にどんな役割を果たしていくのか伺いました。

電線の役割と魅力をすべての人に伝える活動

-電線アンバサダー就任後の活動について教えてください
 アンバサダーの主な活動として、ライターとして取材に行き、記事の執筆や情報の発信を行っています。レポーターとして私自身が動画に出演することもありますね。
 就任以前は、電線の形状や被覆材などの外見に惹かれ、個人的に楽しんでいました。ですが就任後は電線そのものだけでなく、そこに関わる人や社会環境も考えるようにもなりました。
 電線はあって当たり前の空気のような存在。だからこそ背景にどのような人が関わり、生産されているかはなかなか想像されにくいと思います。
 私自身アンバサダー就任式では電線業界の方々のお顔を直接拝見して、「本当にたくさんの方々のおかげで世の中の電線と電力供給は支えられていて、私は電線を愛でられていたんだ」と気づきました。
 以来、身近にあるのになかなか知られていない電線とその役割を、電線を使うすべての人々に伝えていきたいという思いから、精力的に活動しています。

-取材の様子を教えてください
 まずは日本電線工業会を通じて取材に協力してくれる企業様を募り、取材の企画書を作成。取材先の会社さんと打ち合わせをしながら、記事の方向性を決定しています。
 電線業界はB to Bで事業展開している企業様がほとんど。だからこそ、一般消費者の皆様が、作り手の顔や現場の様子を知り、電線の世界を少しでも身近に感じられるような記事を目指しています。

-実際に取材してみていかがでしたか?
 取材現場では、とても楽しそうに生き生きと電線について話してくださる方もおられて、ひとりの電線好きとしてとても嬉しいですね。
 一方で、謙遜される方も少なからずおられ、その背景にはもちろん、仕事への意識の高さがあると思います。それだけでなく、電線に対する認知度の低さや消費者からの声の届きにくさも関係していると思います。電線自体が長い時間を経ても形状が大きく変化していない製品だからこそ、細やかな改良や企業努力の伝わりにくさも一因しているのではないでしょうか。
 電線アンバサダーとして、丁寧な取材を通じて、電線の社会的な役目と面白さをお伝えしていきたいと思っています。業界で働く方々のなかにも電線愛好家を増やしていきたいですね。

「伝える」力で、業界の未来を盛り上げる

─電線アンバサダーとしてこれからの目標はありますか?

 電線アンバサダーのミッションは電線業界に関心を寄せる人を増やし、業界全体を盛り上げること。実は、電線業界は社会に欠かせない仕事である一方、次世代の担い手不足という課題を抱えています。
 その理由の1つとして、電線業界でどんな人がどんな仕事をしているか、具体的にイメージしにくいことがあるのではないでしょうか。
 だからこそ、現場で働く人にフォーカスし、電線産業の魅力とリアルな様子を伝えながら、次世代の担い手に訴求していきたいです。
 個人的な「電線愛好家」だった私が、電線アンバサダーに任命していただけたことで、電線業界に関わらせてもらう機会も増えました。
 アンバサダーの「伝える」という盛り上げ方は、時間をかけて芽が出てくるもの。電線愛を大切にしつつも、活動の一つ一つについて業界の皆様と真摯に向き合い、広報活動の積み重ねが未来の電線業界につながるよう使命感を持って取り組んでいます。
 そして、いつか「石山に頼んでよかったな」と思っていただけたら嬉しいですね。

写真

「電線のある風景」は魅力的

-最後に、気軽な電線の楽しみ方を教えていただきたいです
 たとえば、「電線の写真を撮る」というのは、簡単に始められる楽しみ方の1つ。形が固まり切らない柔らかい印象や合理的な理由で最適化された形状など、撮影することで細部まで観察でき、新たな発見があります。
 雪国や台風の多い地域では、その土地の気候に合わせて電線が張られているので、旅先でぜひ見つけてみてください。そして、積極的に風景に電線を入れ込みながら写真を撮って、「電線のある風景」を楽しんでいただきたいですね。
 個人的には、小説やエッセイ、漫画などに出てくる電線の描写にも注目しています。心理描写や場面を演出する要素として電線が絡められているシーンは、古い作品でも最近の作品でも用いられており、興味深いです。
 また、日本とそれ以外の国の作者を比べてみると、電線の描き方の違いに気がつきます。電線に着目することで、作品を楽しむ視点が増えて面白いですね。