2022年11月 No.117 

リサイクルの現場から

タイルカーペット廃材の水平リサイクルを
独自技術で実現

 自社製タイルカーペットの水平リサイクルを拡大している東リ株式会社。オフィスの床材として欠かせないタイルカーペットは、オフィスビルなどの建設やリフォームの時に大量に必要とされ、その分撤去時は大量に廃棄されることは想像に難くないはず。だからこそ、東リは高まる環境意識への対応と業界を牽引する企業の使命を果たすため、独自のリサイクル技術を確立しました。

写真:イメージ

東リ株式会社

 創業から100年以上の歴史がある老舗企業。ビニル系床材・カーペット・壁紙・カーテンなどの内装材メーカーとして業界全体を牽引する存在で、タイルカーペットの分野では国内トップシェアを誇っています。2021年には新たにタイルカーペットのリサイクルプラントを新設し、積み重ねられたノウハウを活かした環境負荷の軽減にも挑戦しています。

オフィスの利便性と快適性を高めるタイルカーペット

 タイルカーペットはナイロンやポリプロピレンでで きたパイル層と塩ビ樹脂でできたバッキング層を複合した床材で、高い施工性(50cm×50cm寸法でタイルを敷くように施工できる)と部分的に張替えができることを特徴としています。コンピューターの普及に伴いオフィスの床下に電源や通信ケーブルを敷設する需要が発生したことで、タイルカーペットは大きく普及しました(1980年代)。
 「特にケーブルを収納するために二重床を採用しているオフィスビルでは、レイアウト変更のしやすいタイルカーペットの需要が拡大しました。また、足元を柔らかい感触にできるので、体への負担軽減や音の反響の抑制効果も期待できるなど、病院やホテルでも多くの施工例があります」(CS環境室 東京グループ グループリーダー 佐野氏)

新技術の設備導入で、リサイクル製品がより身近に

 東リでは、2021年に「タイルカーペットリサイクルプラント」(以下、「リサイクルプラント」)の稼働を開始しました。現在、製造過程で発生した端材や回収した使用済み自社製品の再利用に積極的に取り組んでいます。
 東リのリサイクルプラントが画期的なのは、タイルカーペットをまるごと原料にリサイクルできる点。一般的にタイルカーペットの廃材は、表面の繊維層と塩ビ樹脂層に分離し、塩ビ樹脂部分のみをタイルカーペットに再利用しますが、東リは分離することなく、全層をリサイクルチップに加工することが可能になりました。そして、リサイクルチップはタイルカーペットのバッキング層に再生されます。
 「従来のリサイクル製品は、通常の製品よりも高コストになることが課題でした。しかし、リサイクルプラントを新設することで、リサイクルのコストダウンに成功。2022年6月に発売した『GA-3600サスティブバック』では、従来製品と同じ上代でご提供しています。社会的に環境意識が高まる中、東リはメーカーの使命である新たな技術の開発を通じて、お客様のご要望に応えてまいります」(広報企画部 部長 横山氏)

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回収した廃材タイルカーペットはタイルカーペットリサイクルプラントで加工され、リサイクルチップ(写真下)にされる。
回収した廃材タイルカーペットはタイルカーペットリサイクルプラントで加工され、リサイクルチップ(写真右)にされる。
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リサイクルチップは、タイルカーペットの裏面の「バッキング層」に生まれ変わる。

リサイクル促進のため広域認定制度を取得

 東リは2012年に使用済みで廃棄となった自社製タイルカーペットを自ら回収しリサイクルするために、広域認定制度を取得。この認定を取得すると国内各地の自社製使用済み製品を独自に回収可能になります。
 「使用済みタイルカーペットの回収は自分たちの手で行っていますが、回収拡大には解決する課題もあります。今後はこの取り組みを拡大するための推進体制を築いていきたいです」(佐野氏)

リーディングカンパニーとしてリサイクルを牽引する

 東リは製品製造時の端材を含め、工場から排出される廃棄物の水平リサイクルを推進し、カーペット工場のゼロエミッションを目標に掲げています。
 顧客からのリサイクル製品に対する期待は高いのだそう。東リでは、これからもリサイクル材を使用した製品を増やしていきたいと考えています。
 「SDGsや環境問題への関心の高まりから、リサイクル製品の需要が増加しています。しかし、これまでの市場の歴史を振り返れば、環境意識の高まりが一過性のブームで終わってしまったこともありました。東リはインテリア業界を牽引する企業として、ブームに流されることなく、ものづくりの力でリサイクルを推進し、持続的な社会の実現に貢献してまいります」(横山氏)

写真:広報企画部 部長 横山剛史氏(左)、CS環境室 グループリーダー 佐野嘉伸氏(右)
広報企画部 部長 横山剛史氏(左)、
CS環境室 グループリーダー 佐野嘉伸氏(右)