2022年07月 No.116 

特集 持続可能性と塩ビ レポート3

海辺で気づいた環境課題から生まれた、
マリンフロート防散カバー

 PVC Award 2021で特別賞を受賞した「マリンフロート防散カバー」は、海洋の環境問題への関心から生まれました。シンプルな構造と汎用性、取り付けの容易性は製品の大きなポイント。さらに、この製品に使われている技術は、現在特許出願中です。今回は、高畠伸幸社長に、マリンフロート防散カバー開発の背景を伺いました。

写真:イメージ

有限会社広谷商店

 1963年創業。岡山県倉敷市に本社を構え、ミシン・高周波溶着機・熱風溶着加工機を用いた幅広い加工技術と長年培ったノウハウで多種多様なニーズに応えている。土のう、コンテナーバッグ、トラックシート、溶着防水カバーのほか、船底シート、マリンフロート防散カバーなど海洋の課題解決に役立つ製品を製造する。

困りごとの解決から始まった海辺の製品づくり

 当社は、創業当時は畳表に使用するイグサを扱っていましたが、時代の流れの中で、合成樹脂や化学繊維を主材料とした製造・販売に移行。ミシンと高周波溶着機、熱風溶着加工機を使用し、積み重ねてきた技術とノウハウによって、お客様の多様なニーズに合わせた製造を行っています。
 プレジャーボートの船底にフジツボなどの海洋生物が付着するのを防ぐ「船底シート」は、当社を代表する商品の一つ。釣り好きだった創業者が、「船底の掃除は大変で、ボートオーナーの困りごとになっている」という声を聞きつけて製品化しました。
 このシートは船底をプロペラ部分まで覆うので、フジツボなどが一切つきません。船底をきれいに保つことで、船底の掃除や塗装のコスト削減、フジツボ付着による燃費悪化防止を実現。現在、累計3,500隻以上の船に使用されています。

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マリーナに設置された船底シート。

海辺で気づいた「環境課題」に向き合う製品

 PVC Award 2021で特別賞を頂いた「マリンフロート防散カバー」の着想は、船底シート設置の際に、いろいろなマリーナに立ち寄る中で生まれました。
 マリンフロートは、船が接舷する際の衝撃を和らげる発泡スチロールで作られたクッション。新品はきれいな円柱形ですが、海水や日差し、接舷の衝撃などの影響で、徐々に劣化。砕けて海に飛散してしまいます。私たちが船底シートの設置を行う際も、劣化したマリンフロートを数多く見てきました。
 そこで、当社でもSDGsの目標14「豊かな海を守ろう」に寄与する商品を事業化できないかと、マリンフロート防散カバーの開発を始めました。
 マリンフロートは、規定サイズより直径が大きいもの、劣化して形が変形したもの、フジツボが付着していびつな形状になったもの、係留ロープが濡れて解けないものなど、様々な状態で使用されています。状況に関係なく巻きつけられるよう、シンプルな構造で作りました。
 この製品の形状はシンプルで、広げると一枚の布状になっています。取り付けも簡単で、カバーをマリンフロートに巻きつけ、専用の杭を打ち、両側面を付属の紐で縛るだけ。ロープに繋がれたマリンフロートにも簡単に取り付けられます。

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マリンフロート防散カバーは、マリンフロートをロープから取り外すことなく設置可能。主なパーツは塩ビで作られ、両サイドの「袖」の部分は帆布でできており、広谷商店と同じく倉敷市に拠点を置く企業の製品。

 固定用の杭も、メーカーと協力して専用のものを開発。「返し」がついているので、刺さりやすく抜けにくいのが特徴で、カバーの取り付けやすさに一役買っています。
 製品の主な素材には、塩ビを使用しました。決め手となった理由は耐久性・耐候性があること。この製品のために開発した塩ビ製の生地は、5年経過後でも初期強度の80%を維持でき、非常に強度があります。
 カラー展開の面においても、塩ビが適していました。視認性を高めるために、開発当初からカラフルな商品を考えていましたし、お客様の中には、デザイン性にこだわりがある方も多いです。
 現在は青色に加えて格式高いイメージのネイビーの二色を展開しています。さらに、マリーナの雰囲気に合わせた色で購入したいというお客様からのオーダーにも応えています。

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マリンフロート防散カバーの固定時に使う杭。刺しやすさ、抜けにくさを考慮しながら、専用の杭を一から設計した。

この製品が役目を終えたとき、美しい海がよみがえる

 今後は、より多くの人にマリンフロート防散カバーを知って頂きたいです。展示会に積極的に出展して、お客様に直接製品のご説明をしたいですね。
 この製品は、海洋環境保全への貢献を意識した製品。だからこそ、お客様の環境意識が高まるほど、マリンフロート防散カバーの需要が増し、そして海の環境改善への貢献度も高まっていくと思います。
 レジャーボートのオーナーさんや、マリーナの運営会社は、海を愛する方ばかり。そんな方々に、海洋ごみ問題が現実として起こっていることを、この製品を通して改めて気づいてもらえるかもしれません。
 環境意識が高まり、劣化しやすい発泡スチロール材の海での使用が無くなれば、マリンフロート防散カバーは不要になるはず。この製品が役目を終えたときこそ、美しい海がよみがえった未来だと思います。
 広谷商店では、人々のお役に立てる製品作りはもちろん、海の環境を意識した製品作りも続けていきたいと思います。

写真:高畠伸幸社長
高畠伸幸社長