2021年03月 No.112 

特集 リサイクル レポート 3

リサイクル塩ビ管メーカー、㈱丸昌の近況

「資源の国内循環」を追求して半世紀。注目のオーダーメイド事業も好調

2019年 プラスチックマテリアルフロー図

 特集の最後は、リサイクルの現場に目を向けます。取り上げるのは、茨城県坂東市を拠点にリサイクル材100%の再生塩ビ管づくりに取り組む㈱丸昌(北田承治社長)。再生塩ビ原料メーカー㈱照和樹脂(埼玉県吉川市)のグループ企業として、「資源の国内循環」を追求し続ける同社の近況をレポートします。

回収から最終製品まで

 同社が、照和樹脂の成形部門として設立されたのは1976年。以来、半世紀近くにわたって高品質のリサイクル塩ビ管を供給し続けてきました。この間の事業の推移について、北田社長は次のように説明します。
 「照和樹脂が弊社を立ち上げたのは、当時需要が伸び悩んでいた再生塩ビ原料を自らの手でリサイクル管に加工・販売しようとしたためだが、同時に、資源循環への対応という意味も大きかった。日本でも早晩資源循環の必要が高まると見越していた創業者の北田光哲(北田社長の実父、故人)が、回収から原料化、最終製品の製造までを一貫して手掛けていこうという高い理念を持ってグループ化戦略を進めたもので、様々な苦労はあったが、今ではグループ全体で国内循環をメインとした一貫生産体制が完成している」(北田社長)
 事業環境の悪化などで同業他社の淘汰が進む中、同社が関東で唯一のリサイクル塩ビ管メーカーとして生き残ってきた背景には、いち早く一貫生産による国内循環に着目した先見の明があったと言えます。

写真:北田社長
北田社長

リサイクル業者との協力関係

 現在、同社の取扱量は年間およそ1,200トン。原料の入荷先は、全体の4割が照和樹脂経由のペレット、残りの6割が各地のリサイクル業者からの粉砕品購入となっています。北田社長の話を聞くと、このリサイクル業者との、単なる取引先を超えた協力関係が、国内循環の基盤のひとつになっていることがわかります。
 「弊社と取引のあるリサイクル業者は、日本全国を回って一軒ずつ時間を掛けながら開拓してきたところばかり。粉砕品の粒度や洗浄レベルなど、こちらが望む品質のスペックを提示すると同時に、弊社と取引することのメリット、例えば、品質の安定した粉砕品を作れば当社以外の販路が広がり次の展開を狙えること、場合によっては輸出よりも利益が見込めること、などを説明しながら協力してもらう。国内でリサイクルできる高品質で安定した粉砕品を作ってもらえるようになるまで結構時間は掛かるが、それが循環型社会を作っていくための基盤になればという思いでも取り組んできた。お陰さまで、今当社に入ってくる原料はいずれも非常に高品質で、パイプを作る際に不具合が出るケースはほとんど見られない」

丸昌グループの一貫生産体制

顧客のニーズに応えるオーダーメイド管

 同社の製品ラインナップは、JIS規格と同等の排水用VU管とVP管をメインに、塩化ビニル管・継手協会規格(AS58)REP管、農業用ライト管(LP管)、ダクト用SU管(外壁用給気、排気等)など。近年は、建築着工数の低下でVU管VP管の需要が落ちてきているのに対し、LP管やSU管の伸びが目立っているとのことですが、注目したいのは、一種のオーダーメイド管とも言うべき特注品の製造です。営業担当の北田哲大氏が説明します。

写真:北田哲大氏
北田哲大氏

 「近年、お客様のニーズに応じて特殊用途の管を提案する仕事が増えている。例えば、坂東市周辺はハウス栽培が盛んなので、地元のハウス農家向けに、お湯を通して苗床の土を暖める小口径肉薄パイプを開発した。この方法は、ボイラーでハウス全体を暖める従来の方法に比べて、生育促進効果や、燃料代を含めたコスト低減効果が高いが、お湯を使うので、熱伝導と耐熱性のバランスを取るのが難しい。湯温の程度とそれに合う肉厚寸法などを細かく打ち合わせながら最終的な仕様を決めていかなければならず、その分手間の掛かる仕事だが、製品の付加価値が高くなって新たな市場が生まれることも期待できるので、今はこの仕事に力を入れている」
 オーダーメイド管の事業は既に全体の3割を占めるまで成長してきており、北田社長も「この仕事は地場産業への貢献にもつながる。単に水や空気を通す製品という考えでなく、作物栽培のためのパーツという新しい考えで取り組んでいきたい」としています。

写真:自作栽培
自作栽培
写真:移動式水道柱
移動式水道柱

バーゼル条約改正、コロナ禍の影響は?

 新分野開拓の成果もあって安定した経営を維持している同社ですが、バーゼル条約の改正に伴う輸出要件厳格化の問題(前項の記事)やコロナ禍の影響をどう捉えているのか、北田社長のご意見を伺いました。
 「前述のとおり、弊社の事業は国内循環をメインにしているので、バーゼル条約の影響はさほど大きくないと考えている。むしろ、条約改正で行き場を失う原料が出てくる可能性があるので、今後はそのへんにも手を広げていく必要があるだろうと思う。コロナ禍に関して心配なのは、最近物流がきつくなっていること。住宅の着工件数が落ちている中でモノの流れが停滞すると、リサイクル管の原料となるプラスチックの排出も減少する恐れがある。先行きは不透明だが、この点は懸念材料として捉えざるを得ない」