2020年12月 No.111 

リサイクルの現場から

大阪のリサイクル拠点、㈱ダイトクの近況

好調続く、塩ビシートのマテリアルリサイクル。資源の国内循環が重要テーマに

写真:大阪のリサイクル拠点、㈱ダイトク

 今回訪れたリサイクルの現場は、大阪府摂津市を拠点に、様々な資源の有効利用に取り組む㈱ダイトク(星山健社長、大阪府産業資源循環協会会員)。同社が得意とする塩ビシートリサイクルの現状を中心に、経営の状況と課題などを取材しました。

高品質な再生原料に高い評価

 1976年に㈱大特産業として創業して以来、OA機器や廃プラスチック、金属類などのリサイクル・再資源化に取り組んできた㈱ダイトク。2010年には、埼玉県加須市にも工場を新設し、液晶テレビに使われるインジウム(レアメタルの一種)のリサイクル(東北大学との共同特許)、製紙会社向けのRPF製造などのほか、昨年からは使い捨てコンタクトレンズのポリプロピレンのリサイクルをスタートするなど、新たな試みにも果敢に挑戦しています。
 事業の現状について星山社長は次のように説明します。
 「当社は早い時期から循環型社会の構築を視野に、資源の創出こそ我々の使命と考えて事業を進めてきた。廃プラスチックについても、高品質なリサイクル原料を供給することで、国内はもちろん海外の取引先からも高い評価を受けている。ただ、近年は中国や東南アジアで廃プラ輸入禁止が相次ぐなど海外事情は不安定な状況が続いており、資源の国内循環が重要になっている。国内フローへの転換には、コスト面などで依然ハードルの高い問題が残っているが、リサイクルに対する国民の意識の高まりを力に、設備投資、人材投資も含めて積極的に取り組んでいきたいと考えている」

写真:星山社長
星山社長

塩ビのリサイクル率98%

 現在、同社がリサイクルしている廃プラスチックの量は年間約2万トン。うち1万トンはPETボトルで、塩ビシートは(防水シート、遮音シート、クッションフロアなど)約1000トンとなっていますが、再生原料は100%国内向けで、星山社長が目指す資源の国内循環の優等生と言えます。
 塩ビシートリサイクルの流れは、シートメーカーの工場廃材を回収し、切断・破砕・分離して、再生原料をリサイクル事業者や加工メーカーに売却する、というもので、その処理拠点となっているのが、隣接する高槻市の西面第2工場。リサイクルシステム構築を担当し、現在はグループ会社の大阪クリーンテック㈱(星山社長、摂津市)で常務に就任している浅野孝一氏にお話を伺いました。

写真:塩ビシートリサイクルの拠点、西面第2工場
塩ビシートリサイクルの拠点、西面第2工場
 
 
写真:破砕機について説明する浅野常務
破砕機について説明する浅野常務。
騒音対策のため地下に設置して、四壁を防音シートで覆っている。
発熱量が大きいので、クーラーで冷却する。

 「塩ビシートのリサイクルは5年前まで本社工場(新在家工場)で行っていたが、西面工場を拡張して第2工場が竣工したのを機に、こっちに拠点を移した。現在、塩ビのリサイクル率は98%に達している。残渣物として、バッキング層のポリエステル繊維などが出るが、それも高炉のフォーミング剤(気泡抑制剤)などに利用されるので、実質的に再資源化率100%と言える」

塩ビシート(クッションフロア)の廃材
塩ビシート(クッションフロア)の廃材
分離工程
分離工程
塩ビの再生原料
塩ビの再生原料

塩ビリサイクルの要、ハイパワー破砕機

 その高度なリサイクルの技術的な要となっているのが、100馬力、1時間4トンの処理能力を有する一軸破砕機です。第2工場の竣工に際して導入したもので、5本掛けのベルトの力で高速回転(毎分1800回転)する50本の破砕刃により、塩ビ層を3㎜程度のサイズに破砕すると同時に、バッキング層をきれいに分離します。
 「当初は8㎜サイズに破砕していたが、それだと分離がうまくいかない。また、高速回転なので発熱量も大きく、これが製品の品質に影響する。機械というのは実際に使ってみないと分からないことが多く、破砕サイズの検討や発熱を抑制するための調整など、機械メーカーといろいろ相談しながら、オリジナルの仕様にだいぶ手を加えた。当社の望む性能に落ち着くまで、半年ぐらいは試行錯誤したと思う」(浅野常務)
 同社の再生塩ビは、工場などで使用する滑り止めや駐車場の車止め、家屋用の防音シートなどの原料として、幅広く利用されています。

写真:同社の再生塩ビ100%で作られた滑り止め
同社の再生塩ビ100%で作られた滑り止め

コロナ禍の影響は?

 星山社長によれば「再生塩ビの出荷は順調。受入れキャパシティもまだ残っている」とのこと。最後に、最近のコロナ禍でリサイクルの現場にどんな影響が出ているのかを星山社長に聞いてみました。
 「ここ数年、産廃の埋立地逼迫に伴って当社の処理費も少しずつ上がってきたが、この調子で続くかと思っていたところにコロナ禍が来た。とはいえ、リサイクル業界は他業種に比べると今のところ影響は小さいと思う。インバウンドの減少でPETボトルなどは量が少なくなっているとも聞くが、当社は去年と比べてそんなに減っていない。ただ、この先大手メーカーの製造量が減少するようなことになれば当社の扱い量も縮小していく懸念は捨てきれない。先行きは不透明と言わざるを得ないが、資源の創出により社会的な責務を果たしていくという覚悟は、どんな状況になっても持ち続けていきたいと思う」