2016年9月 No.98
 

日本公防(株)の廃プラリサイクル事業

北海道の資源循環を支えて28年。農業用廃プラを高品質の再生原料に

廃プラリサイクルの心臓部。破砕・洗浄ライン   北斗市の本社工場
廃プラリサイクルの心臓部。破砕・洗浄ライン   北斗市の本社工場

 農業用プラスチックを高品質の再生原料にリサイクル。北海道北斗市に拠点を置く日本公防株式会社(葛西祐康社長/本社=北海道北斗市七重浜1-8-1 http://www.eco-nkb.jp)は、廃タイヤや廃プラなどのリサイクルにより、道内の資源循環を支える産廃処理業者です。北海道新幹線の開通で活気づく北斗市で、事業の現状を拝見させてもらいました。

●平成15年、廃プラリサイクルに着手

葛西社長
葛西社長

 日本公防が廃タイヤの収集業者として事業をスタートしたのは平成元年7月。「公害防止に役立ちたい」という思いを込めた社名のとおり、地元のセメントメーカーとの提携で廃タイヤの燃料リサイクルに取り組み、不法投棄問題改善の一翼を担ってきました。農業用廃プラのリサイクルに進出したのは平成15年のことで、専用の破砕洗浄施設を導入して、まずハウス、シートなどの塩ビ系廃プラの中間処理に着手。その後対象をポリ系にも広げ、同社の3大事業のひとつ(他に建設系木屑リサイクル)にまで廃プラリサイクルを育て上げました。
 廃プラリサイクルに進出した理由を葛西社長は次のように説明します。
 「この辺はメロン、トマトの産地で、作物の糖度を上げるために光線透過率の高いビニルハウスを使う農家が多いが、使用済み品の処理については殆どが埋立処分されてきた。廃プラに着目したのは、そういう資源の無駄を無くすと同時に、事業の多角化を図りたいという狙いから。産廃の分野では廃タイヤは廃プラ類に入るので、認可の問題などもクリアしやすかった」

●一部はサーマルリサイクルも

本社工場に集められた使用済みの農業用廃プラスチック
本社工場に集められた使用済みの農業用廃プラスチック

 同社が取り組む廃プラリサイクル事業は、農家から排出される使用済み品を回収した後、フラフ(薄片)に加工して、再生原料として海外に輸出するというもので、再生しにくい劣化品は製紙会社など向けの発電燃料としてサーマルリサイクルされます。
 また、ハウスに付着した汚泥もセメント会社で原料の一部に再利用されるため、トータルのリサイクル率は100%近くに達すると見られます。
 回収エリアは、道南、道央、道北の3地区で(道東地区はコストの関係で撤退)、農協の指定集積所に期日を決めて農家が持ち寄るほか、北斗市や函館市の一部など道南地区では本社工場に直接持ち込まれることになっています(ちなみに、中間処理の拠点は、廃プラが本社工場、廃タイヤが本社工場と旭川工場、木屑が石狩リサイクルセンターという分担)。排出には春と秋に2度のピークがあり、「この時期に一気にモノが集まってくる」(葛西社長)とのこと。
 年間の処理量はおよそ3,000トン。うち1,000トンが塩ビ系、2,000トンがポリ系という内訳で、塩ビ系については、製品として出荷されるのが900トン、残りはすべてサーマルリサイクルに回されます(ポリ系でサーマルリサイクルされるのは600トン程度)。

大量の水を使って入念に洗浄 高品質の再生原料が完成 梱包され出荷を待つ再生原料
大量の水を使って入念に洗浄   高品質の再生原料が完成   梱包され出荷を待つ再生原料

●徹底して均一素材を作り上げる

異物混入の完全防止へ、ベテランの目が光る
異物混入の完全防止へ、ベテランの目が光る

 廃プラ処理ラインは、混入を避けるため塩ビ用、ポリ用の2ラインが稼動しており、処理能力はともに600s/時間で1日5トン程度(8時間稼動)。
 処理工程は、大まかに前処理(裁断、異物除去)、洗浄、破砕、再洗浄、比重選別(浮遊物除去)、脱水という流れですが、金属混入で機械を傷めるのを防ぐため磁選機や金属探知機など、様々な高精度の付帯設備も導入。洗浄のために使われる大量の水も、水質洗浄施設を用いて循環利用されています。
 「とはいえ、処理工程でいちばん手間が掛かるのは手選別工程。前処理での異物除去を含めて、1ラインで最低限5人のスタッフが必要になるが、これこそマテリアルリサイクルならではの特徴で、手作業と目視チェックにより徹底して均一素材を作り上げるため、ベテランのスタッフが常時新人を教育している」(葛西社長)

●資源の有効利用へ、さらにレベルアップ

エコアクション21の登録・認定証
エコアクション21の登録・認定証

 昨年は環境省のエコアクション21(環境省が策定した環境活動ガイドラインに基づき、省エネ、リサイクル、新エネ利用、社員教育などに取り組む事業者を審査し、認証・登録する制度)も取得するなど、資源の有効利用へ向けてレベルアップし続ける日本公防。
 「現在、道内では当社を含めて数社が農業用廃プラのリサイクルに取り組んでいるが、これだけマテリアルリサイクルの実績を上げているところは他にない。クオリティの高い再生品を作って貴重な資源を守っていることを我々は自負している。ただ、現在のところ製品の出荷先はすべて輸出なので(中国、台湾、韓国)、今後は国内のマーケットを少し勉強したいと考えている。輸出は原油事情や在庫状況などで不安定になる恐れがあり、国内のチャンネルにも繋がっておく必要がある。もし、海外の状況が変動してうちが事業を断念することなったら、道内の廃プラはまた埋立に戻ってしまうし、雇用の安定を含めて当社には大きな責任がある。止めるわけにはいかない」と葛西社長は言います。