2013年6月 No.85
 

廃棄物をデザインする。

捨てられる素材をデザインの力でアップサイクル。
塩ビ床材もオシャレなバッグに

重厚感あるビジネスバッグ(右)も、クラシックなウォレット(長財布)も、素材は塩ビ床材
 廃材をより高品質で美しいものに生まれ変わらせる「アップサイクル」が、いま資源循環の新しい流れとして注目されています。そのトップブランドが、サステナブルファッションのMODECO (モデコ、名古屋市中区)。塩ビ床材もオシャレなバッグに変身させる、デザインの力とは─。

●多様な素材を再利用したエコプロダクツ

 「MODE」+「ECO」=MODECO。そのベースコンセプトは「捨てられる素材に命を吹き込む」こと。フロアマット(床材)やシートベルト、タイヤのチューブ、カーテン生地など、国内に眠る再利用可能なさまざまな資源(製品の工場から出る端材や規格外品)をデザインの力で蘇らせ、省資源、CO2削減といったエコロジーの本質的価値をメッセージとして届けたい、それがMODECOのポリシーです。
 代表の水野浩行さんは、もとは名古屋市を中心に活動していたミュージシャンで、当時から動物愛護や環境保護など社会的メッセージをテーマにした音楽をやっていたとのこと。そんな活動の延長に実を結んだのが2010年のMODECOの立ち上げでした。床材のバッグはその第一弾として開発されたもので、以後、扱う廃棄物の種類もどんどん増えていったといいます。

●Made In JAPANへのこだわり

ひとつずつ手作り

 MODECOが扱う素材はすべて国内メーカーからの有価買取で、製造に携わるのも地元を中心に国内の職人ばかり。技術的にも資源の循環という意味でもMade In JAPANにこだわっているからです。塩ビバッグの場合、裁断などは地元の業者に外注し、最後に自社のラボラトリーで縫製します。バッグひとつに掛かる時間はおよそ5時間。秋冬は塩ビが硬くなるので、ストーブで柔らかくしながら縫っていくといいます。
 ひとつの端材から取れるのはせいぜい10個程度で、色も形も手触りもひとつずつ違う、まさに一期一会のマイバッグ。そのレア感とオシャレなデザインが女性の人気を集め、MODECOブランドは立ち上げからわずか3年で大手百貨店に常設店舗を構えるまでに成長しました。
 「間もなく輸出も始まります。日本ならではの『もったいない精神』に根ざしたエコプロダクトは、海外でもきっと理解されるはず」と言う水野代表は、若干28歳。そのフレッシュな感性が廃棄物の世界を大きく変えようとしています。

使われることなく捨てられる資源に目を向けたい(水野浩行代表)

 いま日本ではこんなにも多くの資源が未使用のまま捨てられている。でも、そうして捨てられる資源でも、デサインの力でこんなに多彩な表情を持つようになることを知ってほしい ─ それがMODECOを立ち上げたときの思いでした。使用済みの廃棄物ではなく、未使用の工場ロスを少なくすることに拘りたいと思ったのです。
 一度使われて寿命の尽きた廃材を有効活用することも大切ですが、生まれてきたにも関わらず、一度も使われることなく捨てられていく命。そこにも目を向けないと本当の資源循環は実現できません。時流に流されないブランドのさきがけとして、これからもMODECOにしかできないことをやっていきたいと思います。