2010年12月 No.75
 

塩ビサイディングの塩害保護効果を確認(VEC)

飛来塩分を遮蔽しコンクリートの劣化を防止。日本建築学会大会で発表

<つなぐ−継承と創生−>をメインテーマに、日本建築学会大会が、9月9日〜11日の3日間、富山大学五福キャンパス(富山市五福)で開催され、塩ビ工業・環境協会(VEC)が発表した「塩ビサイディング材の遮塩性評価に関する研究」(発表者=VEC高村環境広報部長)が、参加者の注目を集めました。

●8ヶ月間にわたる暴露試験の結果

  暴露の状況(上段が塩ビサイディング被覆)

 日本建築学会は、建築に関する学術・技術等の進歩発達を目的に設立された団体で、日頃の研究成果の発表と討論・研鑽の場として、年1回各支部持ち回りで大会を開催しています。今回の北陸大会では、延べ1万人が参加し、計3000件以上の研究報告が行われました。
 VECの「塩ビサイディング材の遮塩性評価に関する研究」は、沿岸地域における塩害からのコンクリート保護効果、都市部におけるコンクリート中性化抑制効果を検証するため、昨年7月から琉球大学の山田義智教授、日本大学の湯浅昇准教授の指導で進めているもので、塩害からの保護効果は沖縄県の辺野喜暴露試験場と北海道泊の暴露試験場で、中性化抑制効果は千葉県習志野市の日本大学で試験が行われています。今回の発表は沖縄の辺野喜暴露試験場で2009年7月から2010年2月まで約8ヶ月間にわたる暴露試験から得られた知見をまとめたものです。

●塩分浸透量の減少

 研究結果のポイントは次のとおりです。

  図1 暴露場における飛来塩分量

(1)塩ビサイディング材の表面被覆は飛来塩分を遮蔽する

 図1によると辺野喜暴露試験場では10月〜1月にかけての飛来塩分量が多く、方位も季節風の風況と一致する北および西側から多く飛来します。コンクリートのサンプルを分析した結果、塩化物イオンの浸透状況は、サイディングで覆った方が覆わない場合に比べて、浸透量も浸透深さも半分以下でした。

(2)表面被覆がない場合、飛来塩分量の約22%がコンクリート中に浸透する。

  図2 飛来塩分量と浸透塩分量の関係

 飛来塩分量と浸透塩分量の関係を見ると(図2)、サイディングで覆わない方は両者の量が比例しますが、サイディングで覆った方は飛来塩分量に拘わらず、浸透塩分量は一定となっています。このことからサイディングで覆った方は、飛来塩分とは別の経路で塩分が浸透していることが分かります。試験体を見直しこの経路を突き止めたところ、コンクリートとサイディングの隙間から浸透したものと見られ、現在この隙間を埋めて試験を継続しています。
 VECでは、今後北海道や千葉の試験体も加えて、経年変化のデータを積み重ね、今後も発表していく予定で、「 塩ビサイディング自体は、非常に耐候性に優れた建材だが、北海道では塩害と凍害、沖縄では塩害と遮熱による複合的な影響を見ることにより、一層安心して使用してもらえるデータが揃うものと思う」としています。また来年3月に開催される日本建築学会の九州支部大会でも一年間の結果を発表する予定にしています。