2009年12月 No.71
 

ミサワホーム(株)の新築現場ゼロエミッション活動

リサイクル拠点「関東資源循環センター」軸に、独自の広域回収システムを完成

分別回収された廃棄物のパレットが整然と並ぶセンターの構内
 ミサワホーム(株)(本社=東京都新宿区、竹中宣雄社長)が、今年(2009年)3月に建設した「関東資源循環センター」(千葉県野田市)が、6月から本格稼動を開始。広域認定制度(複数の都道府県にまたがって産業廃棄物を回収、処理することを許可する廃棄物処理法の特例制度)を活用して、関東エリアにおける新築現場のゼロエミッションに取り組んでいます。住宅建設に係る廃棄物の埋立処分と単純焼却をゼロにして100%リサイクルに回していく住宅メーカーの挑戦。その最新情報をご紹介します。

●ゼロエミッションは環境活動の最重要テーマ

 ミサワホームは現在、2006年度〜2010年度の5ヵ年で達成すべき環境目標を定めた「SUSTAINABLE 2010」に基づき積極的な環境活動を展開しています。この中で、CO2削減、資源の有効利用などと並んで最重要テーマのひとつに掲げられているのがゼロエミッションの推進です。同社では既に全国15の工場については2007年度までにゼロエミッションを達成していますが、新築施工現場についても2010年度までの達成を目指して取り組みが進められています。
 関東資源循環センターは、関東エリアの1都7県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨)を対象とした広域認定を3月31日付で取得した後、この6月から、年間約9000トン(およそ3500棟分)の処理能力を有する資源リサイクルの拠点として、本格的な稼動をスタートさせています。
 住宅メーカーとしては既に積水ハウス、大和ハウス工業、旭化成ホームズなどが広域認定制度を取得して新築現場のゼロエミッションに取り組んでいますが、ミサワホームの取り組みにもゼロエミッションを達成するための独自のアイデアを見ることができます。

●動脈物流と静脈物流が一体化

 その最大の特徴は、関東資源循環センターを関東物流センターの敷地内に併設することで、建設資材を納品するための物流ネットワーク(動脈)と廃棄物の回収ネットワーク(静脈)を一体的に運営している点にあります。
 関東物流センターは5年前に設立された住宅部品の納入拠点で、各種の部品はここで施主別にセットされた後、デポ(DP)と呼ばれる中継基地(関東エリアに8ヶ所設置)を経由して各建設現場に納品される仕組みとなっています。一方の廃棄物は、建築現場で木くず、廃プラスチック、石膏ボートなど10種類に分別された後、いったん最寄りのデポに集められ、納品帰りの空便を利用して関東資源循環センターに回収される仕組みで、既存の物流ネットワークを生かして、文字どおり資源が滞りなく循環するシステムが構築されています。
 このほか、納品用のモジュール・パレットを利用して分別品目ごとに積載したり、運搬車輌に11トンのウイング車(荷台の両サイドのパネル部分が跳ね上がるトラック)を使ってパレットの積み降ろし作業の効率を上げたりといった点も、同社独自の物流技術を駆使した取り組みといえます。

広域認定制度を活用した新築廃棄物の回収の仕組み

●分別データを廃棄物のリデュースに活用

 
 
 
  分別された塩ビ管(上)と電線被覆(下)

 一方、分別データの管理システムも、関東資源循環センターの注目すべき取り組みのひとつ。新築現場で分別された廃棄物には、袋詰めの際に施主情報や販売店情報を入力したQRコードラベルが貼付されており、センター内に搬入された後は、それぞれの選別ステーションに振り分けられて、ラベルの読み取りと計量測定が行われます。
 これにより販売店別、施主別、品目別に正確な排出量が把握され、そのデータはオンラインで本社の開発部門にフィードバックされて、廃棄物の減量化(リデュース)を進めるための貴重なデータとして役立てられています。
 また、10分別された廃棄物は、選別ステーションでさらに細かく分別され(計30品目。うち廃プラスチックは、塩ビ系、ポリエチレン、発泡スチロール、その他廃プラスチックなど13品目)、圧縮、減容などの処理を経て、専門の業者の手でリサイクルされることとなりますが、塩ビ系廃棄物としては塩ビ管、床材、電線被覆、壁紙、雨どいなどがあり、再生塩ビ管や床材の原料などに再利用されています。また、その他廃プラスチックの一部は、ミサワホームのリサイクル素材「M-Wood」(廃木材の微粉と廃プラを混合した新建材)や、RPF(固形燃料)の原料として再利用されます。
 関東資源循環センターでは、30品目を間違いなく分別するために、分別訓練道場と名づけた研修会を定期的に実施するなど、社員教育にも力を注いでいます。

 
廃棄物の写真を利用した分別訓練道場

 広々としたセンターの構内では、荷下ろしされたモジュール・パレットを各選別ステーションに届けるバッテリー式牽引車「こまわりくん」が動き回り、整然と区画されたレイアウトも含めて近代的な工場を思わせます。ちなみに、この「こまわりくん」も、空に成った後は各ステーションから出る処理品を積んで保管場所に戻すのが役目。前述した広域回収ネットワークと同様、構内においても小さな循環の輪が作られているわけで、こうした効率性の追求も同センターの特徴のひとつといえます。

 


■ 新築廃棄物の4割削減が目標

ミサワホーム(株)建設推進部 環境推進グループマネージャー 岡 靖明氏

 広域認定制度に基づくゼロエミッションの取り組みは、ハウスメーカーとしては当社が4番目となるが、広範囲に散在する新築現場から効率的に廃棄物を回収してリサイクルしていくという点では、当社の物流ネットワークの強みを生かした機能的なシステムが構築できたと考えている。
 環境問題への取り組みは、何より事業としてきちっと成り立つことが必要だ。資源循環センターを千葉県野田市に建設したのも、当社の販売エリアとしては全国最大のボリュウムゾーンである関東エリアでゼロエミッションに取り組めば、廃棄物の減量化と処理コストの低減が進んで事業として見合ってくると判断したためだ。目標としては、現在新築一棟当り約2.5トン程度排出されている廃棄物の量を1.5トンまで、約4割削減したい。その点で、計量データを本社の開発部門にフィードバックすることは大いに役立っている。
 現在、民生部門でのCO2排出の大きさが問題となっているが、当社の「SUSTAINABLE 2010」では、工場生産、建設現場、物流、居住の各段階をあわせて、1990年比で2010年までに20%削減が目標となっている。ハウスメーカーの責任として、ゼロエミッションの推進や環境配慮型商品の開発なども含めて目標の達成に取り組み、CO2削減に貢献していきたいと思う。今後、関東資源循環センターで得られたノウハウは東海、近畿など他の地域に展開していく計画である。