2008年6月 No.65
 

「塩ビリサイクル支援制度」の第1回対象案件決まる!

処理困難な複合製品のリサイクルをテーマとする独創的アイデア3件

 先に塩化ビニル環境対策協議会(JPEC)と塩ビ工業・環境協会(VEC)とで公表したリサイクルビジョンに基づいて、VECが創設した「塩ビリサイクル支援制度」の第1回対象案件が決まりました。応募の中から選ばれた3件は、塩ビリサイクルの進展を期待させる有用かつユニークなアイデアばかり。

●外部「評価委員会」の検討を経て

 「塩ビリサイクル支援制度」は、塩ビのリサイクル技術開発やリサイクルシステム構築などに関するアイデアを関係業界の企業・団体から公募して、「実用化の可能性が高く社会的にも有用性が認められる案件」に対し一定の範囲内で資金面での援助を行うもの。昨年(2007年)5月に塩ビ業界が発表した『リサイクルビジョン―私たちはこう考えます―』(塩ビのリサイクルシステム拡充と技術開発のための具体的指針)の実現へ向けた取り組みの一環となるもので、昨年12月締切りの第1回公募には、普通では気づきにくい視点にスポットを当てたものが多く、事前の予想を上回る数の応募が寄せられました。
  これらの応募案件に対して、外部有識者を中心とする評価委員会(委員長=中島邦雄・化学技術戦略推進機構理事長)で計画の実現性、技術やシステムの先導性、事業化した時の量的効果など、多角的な視点から議論されました。そこで出された意見を踏まえて、以下の3件が採択されることとなりました。

(1) 複合塩ビ廃材のマテリアルリサイクルシステムの開発(アールインバーサテック株式会社)
(2) PVCタイルカーペット廃材のリサイクルに関する研究(住江織物株式会社)
(3) 塩ビ壁紙廃材を原料とする吸着性炭化物の製造研究(株式会社クレハ環境)

 これらの案件をリサイクル手法別に見ると、マテリアルリサイクル(MR)2件((1)(2))、フィードストックリサイクル(FR)1件((3))となりますが、いずれもリサイクルの難しい複合製品の再資源化をテーマとしている点が大きな特徴となっています。


●塩ビリサイクルに新たな地平を拓く可能性

  耐久性に優れる塩ビは、同時にマテリアルリサイクルしやすいという高い環境性能を備えた素材ですが、『リサイクルビジョン』の中では、排出形態(分別排出か混合排出か)や製品組成(単体製品か複合製品か)に応じて、それぞれに適したリサイクル手法で再資源化すべきとの考えを示しています。
  このうち、塩ビと他の素材が一緒になった複合製品の多くはMRが難しく、通常はFRなどの対象とすることが妥当と考えられますが、今回採択された3案件のうち2件は、その困難な塩ビ複合製品のマテリアルリサイクルをテーマとするもので、塩ビ製品のリサイクルに新たな地平を拓く可能性を秘めた取り組みといえます。
  また、これらは、◎他材料の混入や汚れがあっても適用できるもの、◎排出現場でのコンパクトな施設による再資源化処理で輸送コストや廃棄物処理法上の制約回避に繋がるもの、◎再生材の用途を大きく広げる可能性を持つものなど、独自の方向性を持っており、新しい社会システム構築の起爆剤としての役割を担っていくことが期待されます。
  「塩ビリサイクル支援制度」に基づくアイデア公募は、今後2011年度まで4年間にわたり、毎年4月末、9月末、1月末を締切日として実施されることになっていますが、VECでは「将来の塩ビ製品のリサイクルの姿を変え、循環型社会の構築に大きく貢献してくれるものが必ずや生まれてくるという確信をもって取り組んでいく」と自信を示しています。