2008年6月 No.65
 

環境省オフィスのすべての窓が「塩ビサッシ」に

断熱リフォームの第3期工事完了。CO2削減へ率先垂範

 環境省が入っている
 合同庁舎5号館


  環境省が進めてきた一連の断熱リフォーム工事が完了し、東京霞ヶ関にある同省オフィス(中央合同庁舎5号館23階〜26階)のすべての窓に、塩ビサッシ(内窓)が施工されました。CO2削減の切り札・塩ビサッシの普及に大きなインパクトを与える動きです。


●塩ビサッシの省エネ・CO2削減効果

 京都議定書の第1約束期間(2008年度から2012年度)がスタートし、いよいよCO2をはじめとする温室効果ガスの削減へ向けた各国の取り組みが本格的に動き出そうとしています。日本の削減目標数値は基準年の1990年比6%削減となっていますが、2006年には逆に6.4%の排出増加となっており、目標達成は非常に困難な状況。特に、90年比で30%以上も増加している民生部門(家 庭および業務その他部門)では、省エネや環境に配慮した住宅やビルディングの設計が大きな課題で、今年3月に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」の改訂版(新達成計画)でも、「住宅・建築物の省エネ性能の向上」などの必要が指摘されています。
 その省エネ対策の決め手のひとつとして、いま各方面の注目を集めているのが塩ビサッシです。塩ビ製の窓枠に複層ガラスを組み合わせた塩ビサッシは、優れた断熱性と気密性により建物の開口部から失われる冷暖房の熱エネルギーを低減できるのが最大の特長。しかし、日本での普及率は、先進地である欧米に比べて、北海道・東北などの寒冷地を中心にまだ全国平均で8%程度となっているため、今後その普及を全国に拡大していくことで、日本におけるCO2排出量の削減に大きく貢献することが期待されています。


●2006年10月から工事に着手

環境大臣室も塩ビサッシで断熱リフォーム

 こうした中、かねて塩ビサッシの有効性に着目していた環境省は、その優れた断熱・省エネ効果を広く国民各層にアピールするため、2006年10月から窓の断熱リフォーム工事に着手。合同庁舎5号館にある同庁オフィスの一部に、はじめて内窓タイプの塩ビサッシ(既設のアルミサッシの内側に付設するタイプ)をモデル施工(第1期工事)し、他省庁に先駆けた塩ビサッシによる“冬期無暖房化”の実践として話題を集めました。
  また、翌2007年3月には、第1期工事の省エネ効果測定結果(塩ビサッシを長時間開放した場合と閉め切った場合とでは、室内の温度差が日中で平均2.7℃、最大4.6℃に達することなどを確認したもの)を踏まえて、環境大臣室、副大臣室、審議官室などの幹部執務室にも塩ビサッシを追加設置しています(第2期工事)。


●期待される他省庁の動き

第3期工事の模様
新たに取り付けられた塩ビサッシ
明るくなったオフィス環境

  今回行われた第3期工事は、先の2回の工事で未改修となっていたすべての窓(635m2、79カ所)を対象としたもので、取り付け作業は2月の第一週からスタートし、実質「土日のみの延べ10日」という短期間で、3月末に無事に完了しています。こうした施工性のよさも塩ビサッシの特長のひとつ。
 一連の断熱リフォームの総仕上げとなった今回の工事により、既設の36カ所とあわせて環境省の全ての窓(4フロア115ヵ所)に塩ビサッシが施工されたことになりますが、省内からは省エネ、CO2削減ばかりでなく、オフィス環境の向上という点でも「窓枠の色(ホワイト)も明るく、非常に快適になった」といった評価の声が出ているようです。
 塩ビサッシメーカーなどで構成する「樹脂サッシ普及促進委員会(JMADO)」では、
 「環境省の今回の取り組みは、洞爺湖サミットに向けての率先垂範という一面もあるのだろうが、こうした動きに追随して、他の省庁でも省エネ対策として塩ビサッシによる断熱リフォームの検討が進むことを期待したい。話は少し違うが、住宅の省エネ・断熱については、4月に行われた独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の『住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業』(住宅やオフィスビル等での塩ビサッシ施工など、エネルギー需要の最適な管理を行うためのシステム導入に対して、その経費の一部を補助する事業。住宅に係る分の補助予算額は20億円)の1次募集が、応募総数5240件、金額にして20.1億円に達し、2次募集を見合わせざるをえなくなりました。欧米に比べて遅れているといわれる日本の住宅業界が断熱・省エネに動き出したという意味では大変喜ばしい」と述べています。

 

東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 坂本雄三教授のコメント
 
  日本の省エネ・温暖化対策として、住宅と建築の断熱化が広く認められるようになりました。世の中で認められるようになるまでにはかなり時間がかかりましたが、今は京都議定書の目標を達成するために、国をあげて実施しなければならない対策の一つとなっています。特に日本の建物は窓が大きいので、窓の断熱化が重要になっています。
  歴史的に見ると、日本の窓は断熱性より軽量化・低価格を重視してきたために、窓の断熱化が後れていました。塩ビサッシは、断熱窓には欠かせないものです。欧米諸国の塩ビサッシの普及率は50%前後が標準です。日本の普及率は8%程度で、中国や韓国より低い数値です。環境立国・技術立国として、全く恥ずかしい数値と言わねばなりません。塩ビサッシの普及率が欧米並みになって、ようやく日本は生活大国と言える状況になるのではないでしょうか。