2006年9月 No.58
 

 床材から床材へ/塩ビ床材リサイクルの現状─インテリアフロア工業会

  実績の積み上げで循環型社会への貢献をめざす

 

    塩ビ床材メーカー8社で構成するインテリアフロア工業会では、平成15年から各社共同で床材のリサイクルに取り組んでいます。「床材から床材へ」を目標に、スタートからほぼ3年。リサイクル事業の現状と今後の課題をまとめました。(加盟8社:アキレス(株)/タキロン(株)/(株)タジマ/東リ(株)/日東紡績(株)/フクビ化学工業(株)/富双合成(株)/ロンシール工業(株))  

 

施工端材を回収してリサイクル

  インテリアフロア工業会(以下、IFA)が取り組むリサイクル事業は、ビルやマンションなどの新築工事現場から出る塩ビ床材の端材や余材を分別回収し、粉砕処理した後、IFA加盟各社の工場で再び床材にマテリアルリサイクルするものです。
 塩ビ床材には、もともと農ビなどの再生塩ビが原料の一部として利用されることが多く、塩ビリサイクルの重要な受け皿となってきました。一方、床材そのもののリサイクルについては、技術的な問題などもあって対応が遅れていましたが、IFAでは産業廃棄物の軽減と循環型社会への寄与を目的としてリサイクルへの取り組みを決定、回収方法やシステム全体のあり方などについて検討を重ねた末、平成15年3月環境省の「広域再生利用指定産業廃棄物処理者」の指定を取得して、10月から事業をスタートさせています。
 リサイクルシステムの概要は図のとおり。基本契約を交わした排出事業者(ゼネコンなど)の工事現場から床材の施工端材・余材を回収→中間処理工場(岐阜県のリサイクル会社・(株)タイボー)で粉砕処理→IFA加盟8社の工場で再び床材にリサイクルという流れです。
 回収の範囲は北海道と九州を除く全域ですが、現状では東京、埼玉、神奈川、千葉、愛知、京都、大阪、兵庫の8都府県が中心で、IFAでは順次地域を拡大していく方針。また、リサイクルの対象となる床材はビニル床シート及びビニル巾木、クッションフロア、ホモジニアス床タイルの3種で、コンポジションタイルについても現在、リサイクル方法の検討が進められています。

 

今年度は15トン達成の見込み

  事業の初年度となった平成15年度は、共立女子大(東京都千代田区)の校舎の新築工事から出た床材についてリサイクルを行いました。リサイクルした床材の量は0.8トン(5000平方メートル)。
 この年は、全く初めての作業だったため、現場での回収作業の状況、異物混入の度合いなどについて詳細な検討を行ったほか、処理拠点であるタイボーでの粉砕処理にも立会い、処理上の問題点について検証を行いました。また、会員メーカーの再生品の品質についても評価を行い、基本的な性能をクリアしていることを確認しました。
 平成16年度は、自治体のリサイクルに対する理解の下、東京都町田市の小学校2校について、合計約1.4トン(8000平方メートル)をリサイクルしました。自治体へのPR、情報提供にも積極的に取り組みました。
 平成17年度は、愛知県岡崎市の有料老人ホームの床材0.7トン(5000平方メートル)をリサイクルしました。
 平成18年度は、東京都港区芝浦に建築中の47階建超高層マンションについて、6月から作業を実施しています(写真参照)。既に第1回分4.5トン(27000平方メートル)が回収されており、年度末までに15トン程度の処理が達成できる見込みです。
 なお、契約を交わしている排出事業者は18年度でゼネコンなどを含め計15社となっています。

 

グリーン購入法の特定調達品目に認定

  以上のようなリサイクルの取り組み、そして塩ビ製品のリサイクル材の受け皿となってきた実績などが認められ、今年から塩ビ床材はグリーン購入法の特定調達品目として新たに認定されました。
 IFAのリサイクル事業は、床材メーカーが自らの手で「床材から床材」へマテリアルリサイクルする点に最大の特徴があります。
 また、前述の「広域再生利用指定産業廃棄物処理者」の指定を取得したことで、都道府県を跨いだ全国規模のリサイクルを業界一丸で実施できるようになったことも大きなポイントです。IFAの平山勲技術委員長(ロンシール工業)は、事業を立ち上げた当時の経緯について次のように話しています。
 「平成10年頃から、ダイオキシン問題への社会的関心が高まり、安心して塩ビ床材を使ってもらうためには何とかしてリサイクルしなければならない、という危機意識からリサイクルの具体的な検討を始めた。また、平成12年以降、循環型社会形成推進基本法や資源有効利用促進法などが相次いで法制化されたことも背景になっている。こうした法の考え方に即してどんな形のリサイクルにするべきか様々な議論を重ねたが、既に広域再生利用指定を受けていた日東紡の関係者から話を聞いて、この制度の下での取り組みを決定した。同制度の業界指定はIFAが第1号で、個別メーカーではなく、業界で取ったことに大きな意味があった」
 今後への課題としては、事業に対する行政・自治体等の理解と支援の促進、改正廃掃法に基づく認定制度への対応などが挙げられますが、IFAでは、システム全体の再点検なども行いながら課題に対応していく方針で、「まだまだ十分とは言えないが、引き続き着実にリサイクルの実績を積み上げていくことで循環型社会への貢献をめざす」(IFA事務局の市川薫氏)としています。

 

●島田啓三鹿島建設(株)環境安全部担当部長のコメント
 IFAは業界が協力して、再生利用個別指定を取得されました。これは画期的なことと思っています。環境省としても1企業ではなく、複数による申請ということで判断に迷ったようで、協会の方々は大変苦労されたように聞いています。複数企業が同じリサイクルルートに乗り、各企業が応分のリサイクルを行っていくことは今後のメーカー団体としての一つの方向を示しているように思います。現状ではリサイクルコストが高いことから、普及に苦労されていると聞いています。普及促進とシステムの改善によるコスト低減を図っていくことが重要だと思います。これは鶏と卵の関係かもしれませんが……。