2005年12月 No.55
 
建設混合廃棄物のリサイクルに取り組む、東京臨海エコ・プラント

操業開始から1年、順調な活動。首都圏における廃棄物・環境問題緩和の切り札

 

  高俊興業(株)(本社=東京都中野区、高橋俊美社長)が運営する東京臨海エコ・プラント(東京都大田区城南島3−2−15)は、首都圏における建設混合廃棄物リサイクルの新拠点。昨年12月の本格稼動から1年、東京スーパーエコタウン事業の中核施設として順調な活動を続ける同プラントの最新情報―。

●年間処理能力は84万トン

 
  東京スーパー・エコタウン事業は、国の都市再生プロジェクトの一環として東京都が平成14年度から取り組んでいる廃棄物リサイクル・処理施設の整備事業です。
 城南島を中心とする東京臨海部の都有地に、公募で選ばれた民間事業者が建設混合廃棄物や金属・OA機器、食品廃棄物などのリサイクル施設を建設して、首都圏における循環型社会づくりの一大拠点を整備しようというもので、高俊興業の東京臨海エコ・プラントは、建設混合廃棄物のリサイクル施設(実施事業者)として平成14 年に都の選定を受けた後、翌15 年7月に建設着工、昨年12 月から本格稼働に入っています。
 施設の処理能力は年間およそ84 万トン(日量約2,800トン)。エコ・プラントのエコ(EKO)は「EnvironmentKeeping Operation =環境保全活動」の頭文字から取ったもので、リサイクル率90%以上(重量ベース)を目標に、徹底した選別技術と再資源化技術を組み合わせて、リサイクルが難しい建設混合廃棄物を可能な限り再資源化していこうというその取り組みは、首都圏の廃棄物・環境問題を緩和する切り札として大きな期待を集めています。
 

●高度選別でリサイクル率は95%に

 
  高俊興業の笠原保専務によれば、本格稼働からほぼ1年を経過した時点で、「リサイクル率は目標どおり90%以上を維持
しており、10月の実績では95%に達している。このうちマテリアルリサイクルされているのは75.3%、サーマルリサイクルが19.6%で、埋立処分は4.6 %に過ぎない」とのこと。また、稼動状況については、「現在の搬入量では昼間の運転だけで充分処理可能であり、受入量にはまだ余裕がある。今後、24 時間稼働をしても選別精度を下げることなくリサイクル率の向上に努めていきたい」と、稼働率よりも選別精度の維持・向上を第一とする考えを示しています。
 東京臨海エコ・プラントの仕事は、様々な建設資材や土砂、瓦礫などが混ざり合った廃棄物を素材ごとに細かく分別し、それぞれを再生原料としてユーザーに提供することです。このため、処理工程も各素材別の専用ラインを組み合わせた複雑なシステムとなっていますが、基本的には、手作業と各種の選別機、破砕機などの最新技術を駆使して、廃プラスチック、段ボール、木くず、コンクリートがら、瓦礫類、金属くずなどを高精度に選別し、それぞれを圧縮梱包してユーザーに出荷する、というのが大きな流れ。中でも、最大のポイントとなる機械選別工程には、振動風力選別機、比重差選別機、回転式選別機(トロンメルスクリーン)、伸縮式選別機(ジャンピング・スクリーン)、磁選機、など多彩な新技術が採用されており、土砂分の多い建設廃棄物を徹底的に選別、再資源化する上で重要な役割を果たしています。
 

●塩ビ再生管や高炉還元剤、塩酸に再利用

 
  各素材別の専用ラインのうち、廃プラスチック類については塩ビ系と非塩ビ系に分けて2つの処理ラインが用意されており、それぞれ破砕、選別工程を経て、最終的に非塩ビ系は高炉還元剤やセメント燃料、塩ビ系は塩ビ再生管や高炉還元剤、塩酸などとして再利用されます。
 また、塩ビ建材のうち、単品で回収しやすい塩ビ管はダンピングヤード(荷降ろし場)であらかじめ人手によって選別されることが多く、その中の汚れの少ないものは再生塩ビ管の原料として首都圏の再生管メーカーに出荷されます。
 このほか、瓦礫類やコンクリートがら、段ボール、木くずなどもそれぞれのルートで各種の再生原料として利用されますが(図参照)、「日に数十トンは出る」という場内ダストを11台のバグフィルター(集塵機)で捕集して、混練機でセメントと混ぜ合わせて建設資材に再資源化しているのも大きな特徴のひとつ。「ダストといってもその成分は殆どが石膏粉やセメントの粉で、これを無駄にする手はない」(笠原専務)という発想に、東京臨海エコ・プラントならではの徹底した姿勢を見ることができます。
 
 

●課題は廃プラ・塩ビのリサイクル率向上

 
  今後の課題として笠原保専務は、廃プラスチック類、中でも塩ビ系廃プラスチックのリサイクル率向上を挙げています。
 「処理ラインを2系列用意した効果もあって、廃プラスチックのリサイクル率は昨年12月の45.5%から9月には75.5%と徐々に高まってきている。ただ、プラスチック建材は種類、形状が多様な上に、汚れのひどいものも多いため、仕分けが十分にできない分はどうしても埋立処分せざるを得ない。特に、容量で3割程度を占める塩ビ建材は、選別しやすい塩ビ管などを除いて、タイルカーペットや壁紙など埋立処分しているものが多い。廃プラスチック全体のリサイクル率を上げていく上では、我々自らが仕分け方の工夫や新たな供給先の開拓を積極的に進めていくことも必要だと思うが、汚れのひどいものや仕分けにくいものまでまとめて処理できるようなリサイクルシステムがあれば、と思う」
 塩ビ業界では現在、シュレッダーダストの処理システムを利用して建設混合廃棄物を非鉄金属製錬の熱源にリサイクルする共同実験(本誌No.53)を進めている最中ですが、笠原専務の言葉からは、こうした技術開発がますます急務になってきていると言えそうです。