2005年12月 No.55
 
 

 住電資材加工(株)の電線・ケーブルリサイクル事業
   地球の動脈・電線の有効利用を通じて資源保護に貢献。塩ビ被覆材も積極リサイクル

 

    地球の動脈とも神経とも言われる電線・ケーブル。そのリサイクルに取り組んでいるのが、電線大手の住友電工(株)の子会社、住電資材加工(株)(柳淳太社長/大阪市此花区常吉1−1−19、TEL.06−6462−1691)です。住友電工グループが独自に開発したリサイクル技術を駆使しながら、使用済みの電線・ケーブルのリサイクルを通じて、資源保護と環境保全に貢献する、同社の現状をレポートします。  

リサイクルの拠点、大阪工場

 

  住友電工グループでは、古くからグループ全体で電線・ケーブルのリサイクルに取り組んできました。その中で、最大の決め手となる解体・粉砕加工の分野を一手に引き受けてきたのが、今回ご紹介する住電資材加工です。
 同社は、「時代を先取りした資源回収と廃棄物処理のモデル工場」として昭和48年に住電資材加工センターの名で設立、翌49年には現社名に変更して本格操業を開始しており、昨年で創立30周年を迎えています。
 同社では、大阪工場(本社敷地内)と横浜工場(横浜市栄区)の東西2事業所を擁していますが、このうち、横浜工場は電線・ケーブルの端末加工や光通信関連機器の加工・組み立てなどがメインで、リサイクルの主力はあくまで大阪工場が担っています。
 大阪工場には、使用済みの電力ケーブルや通信ケーブルが主に名古屋以西の工事現場から搬入されてきます。年間の処理量は平成16 年度の実績で約6,800トン。うち、銅、アルミなどの非鉄金属類が約4,400トン、塩ビやポリエチレンを素材とする被覆材部分が2,100 トン余りで(塩ビ約440トン、ポリエチレン8 0 0トン。残りはゴム被覆材など)、そのいずれもが様々な技術と工夫により、再生資源としてリサイクルされています。

   

二つのリサイクル手法―剥線解体と粉砕処理

 
  住電資材加工における電線・ケーブルのリサイクル方法は、大きく分けて、径が10mmを超える太物を対象とする剥線解体と、10mm以下の細物を対象とする粉砕処理の二つに分けられます。
 大阪工場に搬入される使用済み電線・ケーブル(故電線)は、運搬・処理を容易にするため予め現場で一定の長さに裁断されたものと把状のものとがあり、搬入後、剥線解体向けと粉砕処理向けの選別が行われます。
 このうち、剥線解体の場合は、一本ずつを解体機に通して被覆部分と銅線に解体し、銅線は再び電線の原料として住友電工に出荷するほか、被覆部分もフレーク状(塩ビ)、ペレット状(ポリエチレン)に加工して、リサイクル原料として、電線・ケーブルの被覆材として再利用するほか、外部のリサイクル業者にも売却されたりします。
 なお、塩ビ被覆材については、OW電線(架空電線路に使用する屋外用ビニル電線)への一部再利用が進められているほか、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁塩化ビニルシース電力ケーブル)の外皮に利用する研究も検討されていますが、こちらはまだ実現には至っていません。このほか、塩ビシートの原料に利用される分などを含めて、マテリアルリサイクルされる塩ビ被覆材の量はおよそ160トンとなっています。

   

自慢のケーブル敷設用枕木

 
  一方、細物電線や通信ケーブルのコア(外皮の中の無数の細い銅線を束ねた部分。銅線それぞれがさらに紙やプラスチック材で被覆されている)などについては粉砕処理が行われます。まず粉砕機に投入して細かく砕き、これを比重選別機等にかけて銅と被覆材に分離した後、粉砕銅はブリケット状にプレスされ住友電工の溶解炉で再び電線・ケーブルの導体材料として再利用されます。
 粉砕処理で分離された塩ビとポリエチレンの混合物は、外部の産廃処理会社で発電用の燃料として利用されるほか、一部はセメント燃料としてもサーマルリサイクルされています。さらに、ポリエチレンが大半を占める通信ケーブルの被覆材については、塩ビとポリエチレンを6対4の比率で混合、押出成形機を使って、通信会社がケーブル敷設の際に用いる枕木に加工、販売していますが、これは住電資材加工が昭和51年に開発した、自慢のリサイクル製品。
 同社では、以前から被覆材のリサイクル製品開発にも積極的に取り組んできており、これまでに豚舎用のスノコ板、蛸漁に使うタコ壷、土留用や土砂止め用のハイブロックなどが開発されていますが、現在まで残っているのは、このケーブル敷設用枕木だけ。「腐食しやすい木製、重すぎるコンクリート製に比べて、丈夫で使いやすいということで通信会社の評価が高い」(大阪工場開発課の田畑信一課長)とのことですが、柳社長は、「販路の問題もありリサイクル製品の開発を進めていくには限界がある。幸い、枕木だけは販路が定着しているが、今後は基本的に、自ら用途開発するよりも、フレーク処理した原料を外部に販売していきたい」としています。

   

   

リサイクル事業のさらなる高度化をめざして

 
  以上のようなリサイクルの取り組みにより、住電資材加工では既に「埋立処分ゼロ」を達成しており、今後は、現時点で97%程度となっている粉砕処理における選別、歩留り精度の向上、サーマルリサイクル率(約50%)の引き下げとマテリアルリサイクル率のアップ、などを課題に、リサイクル事業のさらなる高度化実現をめざしていく計画。
 また、「NTTが進めてきた通信ケーブルの撤去工事がひと段落したことで使用済み通信ケーブルの処理が大きく減少し、全体の入荷量が最盛期の半分以下に低下している」(柳社長)という厳しい現状に対応して、他の事業、特に光通信ケーブルおよびその被覆材(ポリエチレン)のリサイクルを新たな柱としていくことも計画しており、平成13 年には光ケーブル中間処理業の認可も取得。現在月20 トン程度の処理量を拡大して、「事業の下支えに取り組んでいきたい」としています。

 

・柳淳太社長のコメント

 循環型社会構築へのニーズは高い。将来に負の遺産を残さぬ意味から、限りある資源の有効活用、産廃減に取り組んでいる。ただ、一業者だけでは、その取り組みにも限界があり、電線業界、国としても更に積極的なリサイクルヘの対応も必要ではないかと考えている。特に、電線メーカーは、リサイクルを考えた設計を工業会レベルで推進する必要があると思っている。
 基本は、電線被覆材は電線へ、であると思うが、メーカーや製造年によって電線被覆材の配合内容が異なるケースが多く、当社では、現在は限定的である。当社は、NTT、電力会社及び住友電工関連の廃棄電線・ケーブルからのスクラップ銅を回収しているが、今後は、建設、電販等の市況品のリサイクルにどう取り組んで行くかが、大きなテーマだ。特に、この分野の製品は、種々雑多であり、回収物流、コスト、被覆材の分別、リサイクル技術の開発等が課題である。(社)電線総合技術センター(JECTEC)が、長年に亘って、電線リサイクルに関して、国の協力も得ながら地道な研究を進めておられるが、分別技術開発、用途開発も含めたリサイクルのシステム作りに期待する所大である。将来は、NTTのメタル撤去電線が減少、電力会社、市況品、自動車用ワイヤーハーネスが主体になると予想しているが、市況品、白動車用ワイヤーハーネスをどう位置づけ、対応するかが経営課題のひとつと考えている。