2005年6月 No.53
 
東京メトロに“塩ビ製透明ゴミ箱”お目見え

中身がよく見え、テロ対策と駅の美化にも一役

 都民の足として通勤通学に欠かせない地下鉄・東京メトロに、今年の4月18日から、“中身の見える透明ゴミ箱”がお目見えしました。透明パネル部分には塩ビが使われており、何が捨てられているか、外からひと目で見えるため、不審物チェックやテロ対策など、警備面で大きな効果が期待されています。

 

●帰ってきた駅のゴミ箱

 
 東京メトロ(社長=梅崎 壽)は、一連のテロ対策の一環として、ゴミ箱を一時的に撤去していましたが、このたび新たに「中身が見える透明ゴミ箱」として、「屑物入れ用」「空きカン空きビン用」「新聞雑誌用」の3個を1セットにして、全161駅251カ所に再設置しました。
 「たかがゴミ箱」と思われるかもしれませんが、公共交通機関にとって駅のゴミ箱は、最近10年間だけでも、設置と撤去を繰り返す、厳しい社会情勢の反映がありました。
 まず最初の全面撤去は、95年の地下鉄サリン事件の時で、翌日には駅構内のゴミ箱は完全に撤去されました。これは97年から順次復活しましたが、構造的には前のゴミ箱のままでした。次に04年3月に、スペインで列車同時爆破テロが起き、政府が各交通機関に自主警備の強化を通達し、再び全面的に撤去されました。この時は、同年5月頃からJR東日本が首都圏の主要駅で再設置を進め、次いで京成電鉄と今回の東京メトロの再設置につながります。いずれも機能、形状、サイズに独自の工夫をこらした新しい透明ゴミ箱です。
 しかし、実際の撤去と設置はこれだけではありません。東京メトロの広報部では「たとえば、サミットなど外国要人が来日した時やサッカーのワールドカップ開催の時などには、政府や警察の通達で一時的にゴミ箱を撤去したことは、これまでに何回もあります」とのことで、意外にも駅のゴミ箱は出たり入ったりしていたようです。
 それでは、ゴミ箱が駅から撤去されるとどんなことが起るか。同社鉄道本部運輸営業部旅客課の増田課長補佐は「当社の場合、他の交通機関からの乗り換えのお客様が多いという特殊性もあって、家庭ゴミがそのまま捨てられるケースは少ないのですが、それでもトイレが汚されたり、暗くて見えにくいいわゆるブラインドスポットには影響が出ました」。ゴミ箱が撤去されるということは、その理由がはっきりしているため、利用者の理解も得やすい反面、それでも全面的に利用者のモラルやマナーに頼れない現実もあるようです。
 

●透明パネルに塩ビを採用したいきさつ

 
 東京メトロが新しいゴミ箱を開発するに当っては、その機能や形状についてさまざまな議論があったそうです。最大のテーマはやはり安全対策で、万一不審物を入れられてもすぐ視認できるよう、前面および側面に透明パネルを採用することが基本プランに決まりました。透明パネルの素材についても、塩ビのほかガラスなどが候補に上がりましたが、破損したり飛び散ったりする危険性の少ない塩ビが選ばれました。
 また、ゴミ箱の投入口サイズについても、16cm×12cmと従来よりかなり小さくして、大きなゴミは入れられないようにし、鍵を施錠してみだりに開けられないようにするなど、細かい点にも工夫されています。さらに置き場所についても、従来はホームに設置してあるケースが大半でしたが、今回は、駅社員が常時監視できる改札口付近に設置されています。その他、東京メトロでは各駅に防犯カメラを2,000台以上設置するなど、防犯体制の強化に力を入れています。