2005年3月 No.52
 
 

 昭和電工(株)の廃プラスチック・ガス化プロセス
   稼働後2年、順調な展開を見せる“塩ビ分別不要”のケミカルリサイクル事業

 

    昭和電工(株)(本社=東京都港区)が、経済産業省と川崎市が進める川崎エコタウン事業の認定を受けて使用済みプラスチックのケミカルリサイクルに参入してから丸2年。塩ビを含むプラスチックを熱分解し、その生成ガスをアンモニアなどの化学品原料に再利用する画期的取り組みの現状を、事業の拠点となる同社の川崎事業所(神奈川県川崎市川崎区扇町5−1/TEL.044−322−6979)に取材しました。  

廃プラスチック100%リサイクル

 

  平成15年4月から操業を開始した昭和電工の廃プラスチック・ガス化プロセスは、容器包装リサイクル法に基づく一般廃棄物系のプラスチックを中心に、一部産廃系プラスチックの再利用を目的としたもので、処理能力は年間約6万4,000トン(日量195トン)。国内最大規模のプラスチック・ケミカルリサイクル施設です。
 処理設備(日量97.5トン×2系列)は、(1)廃プラスチックを破砕してRPF(減容成形品)に加工する前処理工程、(2)RPFを高温と低温の加圧二段式ガス化炉で熱分解し、水素や一酸化炭素などを生産するガス化工程の2つで構成され、廃プラスチックは、一連のプロセスを経てナフサで作る従来のアンモニアと全く同品質の製品に生まれ変わるほか、下に示したとおり様々な形で有効利用されます。廃プラスチックを100%リサイクルする同社の取り組みは、石油資源の節約、循環型社会の構築に大きな貢献が期待されています。

【廃プラスチック・ガス化プロセスの主な特長】

  1. 塩ビを分別することなくすべてのプラスチックを原料に、高純度のアンモニア合成ガスを安定的に精製できる。
  2. 合成ガス中の塩素は工業塩として回収し、ソーダ電解原料にリサイクルする。
  3. 合成ガス中の硫化水素を硫黄として回収し重亜硫酸ソーダ原料にリサイクルする。
  4. 不燃灰分は水砕スラグ化して路盤材や改良土などの原料に利用するほか、除去された金属類も有価物として販売する。

   

塩ビ混入処理の意外な効果

 
  2年を経過した事業の現状について、同社ガス・化成品事業部のプラスチックケミカルリサイクルプロジェクト企画・営業グループリーダー・平倉一夫氏に話を聞きました。
 「一廃系プラスチックについては順調に入荷が増加しており、平成16年度の実績では横浜市など約60自治体から4万5,000トンを受け入れた。これに伴って設備の稼働率も約70%とほぼ計画どおりに上がってきている。17年度は稼働率を90%まで引き上げるのが目標だが、最大の排出先である横浜市がこの春から全市一斉の分別収集実施を予定しており、ほぼフル稼働状態が達成できる見込みだ」
 一廃系プラスチック中に含まれる塩ビの量は2〜3%程度。当初の予測(5%程度)より「実際の混入割合は下がってきているようだ」とのことで、まったく問題なく処理が行われています。
 一方、産廃系プラスチックについても平成16年度から受け入れが始まっています。量的には約2,000トン、全体の5%程度に留まっていますが、ここでは塩ビが意外な効果を発揮しているようです。
 「産廃系プラスチックは製品メーカー経由と産廃業者経由の2種類があるが、単一素材に偏らないように組成を調整して処理している。塩ビ製品は塩ビ管、床材、壁紙などが主だが、塩ビが混ざると、他のプラスチックに比べて溶けやすいのでRPFの成形性がよくなる。特に塩ビ壁紙は紙がつなぎ粉の役割をしてさらに成形性が高まるというメリットがある。塩ビの分別不要というのはこの設備の特徴だが、そういう意味では必要ないというよりも分別しないほうがいい。容リ法のプラスチックも、RPFの成形性という点ではもう少し塩ビがあったほうがやりやすい」
 産廃系の処理では、塩ビ濃度を5%程度に調整していますが、最大10%までは処理可能とのことです。

『エコアン』も発売開始

 
  ここで製造されたアンモニアは、昨年5月からは『エコアン』という製品名で発売されており、順調な動きを見せています。
 「『エコアン』は、環境調和型・廃棄物由来のグリーン製品として既にさまざまな工業原料に利用されている。現在エコマークを申請したところ、化学製品でグリーン製品というのは前例のない取り組みということで一定の評価をいただいた」
 塩素の再利用については、塩ビの混入量が予測より少ないことなどから、まだまとまった事業にはなっていませんが、「ここに持ってくれば塩素もリサイクルできるというのは、当社のケミカルリサイクル事業、さらにはエコタウン事業の大きな特徴のひとつであり、17年度中に9割稼働を実現した段階で積極的に取り組みを進めていく計画」です。
 また、今後の課題について平倉氏は、「できるだけ早期にフル稼働を実現して、容リ法の廃プラスチック有効利用を担うという与えられた役割を果たすこと。同時に、70年間アンモニアを作ってきた当社が今後も安定的に事業を継続していくため、年間製造量13万トンの半分をこの設備でまかなうという当初の目標を達成したい」と説明しています。