2005年3月 No.52
 

 公共住宅への採用拡がる、リサイクル塩ビ管

  「グリーン購入法」の特定調達品目指定など、製品への高い信頼を背景に

 

    循環型社会構築への動きが加速する中、使用済みの硬質塩化ビニル管および継手等(以下「塩ビ管・継手」という)をリサイクルした再生塩ビ管が、地方自治体などの公共住宅に採用される動きが拡がっています。今回はその中から、独立行政法人都市再生機構の賃貸住宅と東京都の都営住宅のケースを取材しました。  

 

都市再生機構、東京都の取り組み

  塩化ビニル管・継手協会では、平成10年から塩ビ管・継手のリサイクル事業に取り組んでいます。全国の建設解体現場などから排出される塩ビ管・継手を受け入れ、再び塩ビ管として利用するもので、これまでに、塩ビ管・継手の受入拠点の整備(現在、リサイクル協力会社・中間受入場・契約中間処理会社を合わせて57拠点)を進める一方、再生塩ビ管についても3種類の協会規格を制定(表1)。平成15年度の実績で年間約1万8,000トンがリサイクルされており(リサイクル率52%)、国等の環境物品の調達方針を定めたグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進に関する法律)の特定調達品目や、官公庁の営繕関係の統一基準となる国土交通省の「公共建築工事標準仕様書」で指定資材に選ばれるなど、再生塩ビ管に対する公的な認定もあいついでいます。
 こうした信頼を背景に、近年、地方自治体や公共団体などが行う建設事業の資材として再生塩ビ管を採用する動きが加速しています。今回ご紹介する都市再生機構と東京都の取り組みは、その中でも代表的な事例と言えるものです。

 

 
施工事例(1) 独立行政法人 都市再生機構の賃貸住宅
 

他にさきがけて平成13年から採用

  公的機関の中でいち早く再生塩ビ管の採用に踏み切ったのが、独立行政法人 都市再生機構(神奈川県横浜市)です。同機構は、都市基盤整備公団と地域振興整備公団(地方都市開発整備部門)が統合して、平成16年7月に誕生した組織ですが、再生塩ビ管の使用は、旧都市基盤整備公団時代の平成13年8月から始まっており、首都圏を皮切りに、現在では全国9支社が建設・運営する賃貸住宅すべてで再生塩ビ管の使用が積極的に進められています。
 再生塩ビ管を採用した理由について、同機構技術・コスト管理室設備計画課の玉井祐之係長は、「都市基盤整備公団(現都市再生機構)としては、世の中に対する省資源化及び循環型社会への貢献を行う取組みを推し進めていたところである。そういった中で、塩化ビニル管のリサイクル率の向上を図ろうとしていた同協会より、建物排水用の実用化に向けて、公団に対して強度試験等の依頼を受けたこともあって、共同研究により建物排水用リサイクル発泡三層硬質塩化ビニル管(RF−VP)の開発を行ったものである。そういった意味で、機構としては、この間、他に先駆けて、積極的に使用してきたところである」
 また、平成15年度より、都市基盤整備公団(現都市再生機構)が発表したグリーン購入法に基づく「環境物品等調達方針」で、「建物の排水管に塩化ビニル管を用いる場合において、建物排水用リサイクル発泡三層硬質塩化ビニル管の使用を推進する」ことが明記されており、今後、再生塩ビ管の使用は拡大していくことが予想されます。

 

施工現場の評価「軽量で作業員の負担が軽減」

  現在、都市再生機構が使用している再生塩ビ管の種類はリサイクル発泡三層管(RF-VP)で、排水だけでなく、通気に関わる部分も含めて、塩ビ管はすべて従来のJIS管(バージン管)から再生管に切り替わっています。
 東京都杉並区に建設中の賃貸住宅を訪ねて、施工現場の様子を見せてもらいました。この住宅は都市再生機構が杉並区と連携して取り組んでいる再開発プロジェクト「THE PARKS荻窪」(杉並区桃井三丁目地区プロジェクト)の一部となるもので、総戸数331戸。今年6月に完成予定です。
 再生管が使用されている場所は、建物の基底となる1階ピット下の排水用横主管と、各住戸内の排水および通気用の枝管で、ピット下には直径150mmの大口径管を使用。住戸内の排水用には直径50mm、通気用には直径100mmの再生管が使われており、使用量は一戸当たり平均で20〜30mになるとのことです。
 現場の作業担当者から、「リサイクル発泡三層管はJIS管に比べて重量が軽くて運びやすく、作業員の負担軽減になる。また、切断作業も楽だ」と、基本的に高い評価が寄せられています。

 

普及拡大のカギは製品情報PR

  玉井係長は、今後の再生塩ビ管の使用について、「現在は建物内に限定しており屋外埋設管にはまだ使っていない。いずれ屋外にも使うようになっていくと思うが、径の大きさが足りないこともあってまだ使えない。このへんは協会側の技術開発の進展に期待したい。他の部分については、今後も循環型社会構築という世の中の流れに即して、どんどん使っていく」としています。
 また、一般ユーザーへの普及拡大の条件としては、製品情報のPRの必要を指摘。「再生塩ビ管というのは大変地道な製品であって、トータルに考えれば、環境負荷の削減効果は決して小さくないと思うが、そういうことは外から見てもなかなか理解されにくい。住宅性能評価上もリサイクル資材を使っていれば環境配慮型ということで等級が上になるが、そうしたことも含めて、一般のユーザーにどうやってうまく情報を伝えていくかがカギになると思う」として、塩化ビニル管・継手協会の積極的な広報活動に期待しています。

 

 
施工事例(2) 東京都の都営住宅
 

 

約40件の都営住宅に採用(平成16年度)

  東京都では、平成15年10月に「都営住宅機械設備工事特記仕様書」の改訂を行い、この中で「都営住宅に関しては再生塩ビ管の使用」を決定してから、本格的に再生塩ビ管の採用に乗り出しています。
 都市整備局都営住宅経営部の萩原秀昭設備技術担当課長の説明。
 「最初は、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)に基づいて指定4品目(コンクリート、木材など)の有効活用を進める中、指定品目以外にも使えるものは使っていこうということで、排水用設備としての再生塩ビ管が浮上してきた。また、旧都市基盤整備公団が東京都内の工事で熱心に再生塩ビ管を使っているという動き、さらには国土交通省の平成13年版『機械設備工事共通仕様書』に再生塩ビ管が採用されたことなどを受けて、いろいろ検討を行って使用上の問題がないことを確認した上で、積極的に使っていこうということになった。」
 都の年間発注予定書によれば、平成16年度では杉並区の高井戸西一丁目アパート、葛飾区の新宿六丁目アパートなど、建替え、部分リフォームを合わせて約40件、戸数にして約4,900戸の工事が進行中で、これらの都営住宅には、1階床下にリサイクル発泡三層管が利用されています。

 これに対して、各住戸内の枝管は建替え工事などの部分的な使用にとどまっていますが、これは「導入して間もないので、まず一番下の部分から試験的に使用して、状況を確認しながら住戸内に拡大していく」という方針によるもので、都営住宅経営部住宅技術課の仁平幸男課長補佐は、「住戸内での利用を、部分改修も含めてどこまで広げていけるかが今後の課題になる」としています。

 

都の「グリーン調達方針」でも指定

  一方、東京都は国のグリーン購入法に基づいて策定した「公共工事におけるグリーン調達方針」(2004年度東京都環境物品等調達方針)を平成16年11月から適用開始しており、再生塩ビ管の普及にとっては、この動きも大きな推進力となることが期待されます。
 都のグリーン調達方針は、国の法律に準じて義務化される特定調達品目53品目のほか、都独自に定めた特別品目44品目(積極的な使用を推奨)、調達推進品目(現状では価格等の問題で実用できないが採用を検討)を盛り込んでいるのが大きな特徴で、再生塩ビ管は特定調達品目のひとつ(配管材)として採用されています。
 東京都では、この方針に基づいて今後各種リサイクル材を積極的に活用していく計画で、再生塩ビ管についても、平成17年度以降、都営住宅以外の公共工事(学校、庁舎の建築・改修工事など)に関して本格的な発注が出てくるものと見込まれています。

 

建築設備リサイクルの最先端

  現在のところ、再生塩ビ管は各都営住宅の工事現場で問題なく利用されており、萩原課長も、「建築設備(機械設備、電気設備を含めて)の中では塩ビ管のリサイクルが最も進んでいるし、成功しているケースだと思う。協会のこれまでの努力が大きい」と評価しています。
 今後の課題としては、「屋外に使われているJIS管を再生管に切り変えていくこと」が挙げられます。屋外敷設の場合、比較的浅い場所に埋設されるケースも多いので、強度的にどれだけ耐えられるかが問題となります。また、屋外の工事では土木部など他の関係部署との調整も必要となるため、現在塩化ビニル管・継手協会と都の間で検討が進められています。
 なお、協会のリサイクル事業に対して萩原課長は次のように要望しています。
「再生管の規格自体には問題ないが、解体工事から発生する使用済み塩ビ管の回収について、よりリサイクルされやすいような環境整備をしてほしい。具体的には、受け入れ条件の緩和。特に汚れ落としなどの作業はコストがかかり、行政として排出者に処理を強制することはできない。リサイクル不適な製品は現在サーマルリサイクルに出しているが、再生塩ビ管の使用を拡大するためにも、排出する側が利用しやすい回収システム、受入態勢を生産者として工夫してほしい」

 

 

  お問い合わせは、塩化ビニル管・継手協会まで
(TEL.03−3470−2251/FAX.03−3470−4407)
[URL]http://www.ppfa.gr.jp