2004年12月 No.51
 
 

 昭和リサイクル(株)/塩ビ電線リサイクルの現状
   相模原作業所を中心に、年間250トンの塩ビ被覆を再生原料にリサイクル

 

    ビルや工場の建築・改修工事などから出る使用済み電線を解体して、それぞれをリサイクルするのは、循環型社会を実現する上で大切な仕事のひとつ。今回は、使用済み電線再生業界の大手、昭和リサイクル(株)(神奈川県相模原市南橋本4−1−1/TEL.042−773−5359)の相模原作業所(所在地=本社に同じ)を訪ね、塩ビ電線の処理を中心に事業の現状を取材しました。  

 

原油高の影響で好調

 
  電線には、その被覆部分の材料の違いから塩ビ電線やポリエチレン電線などの種類があります。昭和リサイクルは、電線メーカーの大手・昭和電線電纜(株)のグループ企業として昭和41年に設立されて以降、そうしたさまざまな種類の使用済み電線の再資源化に取り組んできました(設立時の社名は「昭和線材加工」。平成11年現社名に変更)。現在の取扱量は、平成15年の実績でおよそ1万トンに達します。
 同社には、今回取材した相模原のほかに仙台、三重にも作業所があり、取引先や扱う電線の種類もそれぞれで異なっていますが、相模原作業所が扱うのは親会社の昭和電線電纜をはじめ、電力会社、JR東日本などから出た塩ビ電線やポリエチレン電線は年間約5,000トン。うち塩ビ電線の量は約900トンで、その中の塩ビ被覆約250トンがリサイクルされます。
 塩ビ電線については仙台でも60トン程度が処理されていますが、大半は相模原作業所に集中した恰好で、これらは、後に述べるような方法で再生原料に生まれ代わり、成形メーカーでシート製品などにリサイクルされるほか、一部は電線メーカーに売却されて再び電線被覆の原料としても利用されています。
 同社の石渡可高社長によれば、「昨今の原油高の影響もあって塩ビは近年にない高値で取引されている。中国からも引き合いがあり、売却先にはまったく困らない」とのことです。

   

処理前の樹脂分別も徹底

 
  電線のリサイクルは、配電用などに使われる細径のものと、電力のメインケーブルなどに使われる太径のものとで、それぞれ方法が異なります。
 細径のものは、一定の長さに切断した後、細かく破砕して乾式の比重選別機にかけ銅などの金属と被覆部分を分離、塩ビはそのまま袋に詰めて成形メーカーに出荷されるとともに、金属類は昭和電線電纜などに引き取られて再び電線として利用されます。
 また、塩ビ電線の中には、絶縁体として架橋ポリエチレンを使っているものもありますが、こうした製品については事前に厳しく樹脂を分別しており、混合粉砕されることはありません。これは混合処理した場合、湿式の比重選別や乾燥などの工程が必要になるためで、石渡社長は「余計な手数をかけず低コストでリサイクルするのが当社の方針。樹脂の分別については徹底的に社員を指導している」と説明しています。架橋ポリエチレンは、再生が難しいため産廃業者に委託してサーマルリサイクルされています。
 一方、太径のケーブルについては皮剥ぎ解体が行われます。電力会社などで予め1.6メートルぐらいに切断したものを、剥線機にかけ、被覆部分を縦に切り裂いて、金属と塩ビに解体、塩ビは皮状のまま束ねられて出荷されます。なお、径の太いケーブルの場合、導体の保護や補強のため紙、テープ、布などが使われていますが、これらの副産物は現在は焼却処理となっています。

捨てればごみ、分ければ宝の山

 
  昭和電線電纜では、ゼロエミッションに向けてグループ各社のリサイクル目標率を個別に定めており、2004年版「環境報告書」によれば、昭和リサイクルの目標値は全体で97.5%以上。塩ビ被覆については既にほぼ100%がリサイクルされていますが、技術開発部の大垣俊久部長は、「今後は比重分別の精度(現在約99%)の向上などを含めて設備面、品質面でさらに全体のリサイクル率を高めていきたい」としています。
 最後に、電線リサイクルの将来について石渡社長に話を聞きました。
 「北海道から沖縄まで、日本の中にはまだまだ埋没した使用済み電線がいっぱいある。それをできるだけ回収して資源に戻すのが我々の仕事で、やることはまだ山ほどある。これからメタルケーブルに代わって急増すると思われる通信用光ケーブルについても、今のうちからリサイクル技術を研究して、他社がやっていないことを先駆けてやっていきたい」
 事業としてリサイクルに携わる者にとっては、“捨てればごみ、分ければ宝の山”という姿勢こそが大切だと、石渡社長は言います。