2003年12月 No.47
 
プラ処理協「建築解体廃棄物中の廃プラ基礎調査報告書」から

我が国初の詳細な排出実態調査。プラスチック建材の再資源化へ向け貴重なデータ

 

  (社)プラスチック処理促進協会が平成14年度の事業として取り組んだ「建築解体廃棄物中の廃プラスチック再資源化のための基礎調査」に関する報告書がまとまりました。プラスチック建材の排出実態について部材ごとの樹脂の種類や重量などを詳細に分析したもので、今後の再資源化促進へ向けた貴重なデータとなっています。

 

●戸建住宅8棟を分別解体

 
  丈夫で寿命が長く、断熱性が高いなど数々の特性を備えたプラスチック建材は、現代の快適な住まいづくりに大きく貢献してきました。一方、住宅の平均寿命が30年から40年程度とされる中で、1960年代から急速に普及しはじめたプラスチック建材も今後本格的な排出時期を迎えることが予想され、分別・再資源化の動きが急務となっています。今号のトップ・ニュースでご紹介した塩ビ壁紙のリサイクルも、そうした取り組み事例のひとつ。
 プラスチック処理促進協会が行った今回の調査は、今後の排出予測と再資源化の促進に備えて、解体住宅から排出されるプラスチック建材の実態を明らかにしておこうという狙いから実施されたもので、プラスチック建材の排出量についてはこれまでもいくつか報告が出ているものの、建材・部材ごとに分別収集し、樹脂種類、重量、排出状況を厳密に調査したのは今回が初めての試みとなります。
 調査は、築40年未満で延床面積100平方メートル程度の戸建住宅8棟(木造軸組住宅6棟、軽量鉄骨住宅2棟)を対象に、平成14年1月から15年3月にかけて行われました。解体業2社に委託して現場分別した廃プラスチックを、中間処理場で部材・部品ごとにさらに細かく分類し、近赤外分光計器で樹脂種類を判別した後、それぞれの重量および容積を計測しています。
 

●排出量の約8割を占める塩ビ建材

 
  以下に、調査結果の要点を整理します。
(1)廃プラスチックの排出量と種類
 建築廃棄物全体の排出量は延床面積1平方メートル当たり平均500kg余り。うち、廃プラスチック類は平均2.6kg程度で、廃棄物全体に占める重量割合は平均0.5%となっています(表1)。
 廃プラスチックの種類の内訳は図1のとおりです。今回の調査では計17種類のプラスチックが分類されましたが、最も量が多かったのは塩ビで、硬質、軟質を合わせると全体の76%に達します。

(2)用途別の廃プラスチック割合
 廃プラスチックの排出割合を用途別に見ると、屋根・外壁材(23%)、配管材(22%)、内壁・天井材(15%)、保温・断熱材(11%)、電気配線(10%)の順になっています(図2)。
 これらの用途のなかで、どの解体物件からでも比較的まとまった量の廃プラスチックの排出が見られたのは、屋根・外壁材、配管材、電気配線、窓材で、これらは住宅仕様としてプラスチック製の建材・部材の使用が標準化されている用途とみられます。
 一方、解体物件によって廃プラスチック量にばらつきが見られる用途は、床材・畳床、内壁・天井材、保温・断熱材で、プラスチック化の過渡期にあるとみられる用途や、住宅仕様としていくつかの選択肢がある用途となっています。

(3)部材・部品別の廃プラスチック排出量
 建材・部材別に廃プラスチックの排出量(延床面積1平方メートル当り)とその割合を調べた結果では、下水管(18%)、壁紙(13%)、雨樋(10%)、発泡成形体(9%)、電線(8%)など、上位10位までで全体の75%を占め、その殆どに塩ビが利用されています(表2)。

(4)解体系廃プラスチックのマテリアルリサイクルについて
 報告書では、最後に解体系廃プラスチック建材の再資源化の方向について考察し、「雨樋、電線、防水シート、上下水道など異物等の付着が少なく樹脂単体で回収できる部材・部品はマテリアルリサイクル(MR)の可能性はあるが、壁紙、床シートなど接着または複合化され基材から容易に分離できないもの、あるいは少量で樹脂の種類も多様なその他の部材・部品のMRは事実上困難」とした上で、「解体現場からでてくる廃プラスチックの大半が減容化され、最終処分されている実態を鑑みれば、まずは適正な処理さらには最終処分量の減少へと進めることが肝要であり、そのためには、解体現場での分別、中間処理による分離、分別、破砕・減容化など、また廃プラスチックの回収・運搬方法なども当面の課題と考えられる。そのうえで、フィードストックリサイクルやサーマルリサイクルを含めたリサイクル方法・技術の開発が必要と考える」と指摘しています。

 

●塩ビの価値は「パフォーマンスの総合評価」で

 
  最後に、今回の調査を担当したプラスチック処理促進協会調査部の加納芳明部長にお話をうかがいました。
 「今回の戸建住宅の調査は、建築系廃プラスチックの将来の排出予測を行う上で重要なデータのひとつだ。我々は既に新築系廃プラスチックの排出調査を平成12年度に終了しており、これに集合住宅の解体調査が加われば、今後の住宅の滅失および着工予測をもとに建築系廃棄物中の廃プラスチック排出量の将来予測に必要なデータが揃うことになる。
 今回の調査で明らかになった重要な点のひとつは、プラスチック建材の分野では基本的に塩ビ製品が圧倒的で、その他の樹脂は住宅設備などの細かい用途に沿って多様な使われ方をしているということである。これは、塩ビが建材用途で要求される難燃性、強度、耐久性などに優れる上、様々な製品形状にできる加工性の良さで多用されてきたことを裏付ける結果と言える。
 それだけに塩ビ建材のリサイクルは大きな課題だが、管・継手など量的にまとまるものは別として、再資源化に限界がある複合製品についてはまず適正処理を基本に考えることが必要だと思う。塩ビ建材の価値は、リサイクルのしやすさといったことだけでなく、その耐久性、長寿命、社会生活への貢献度など多様なパフォーマンスをトータルで評価しないといけない」