2003年12月 No.47
 

 特集/屋上緑化と塩ビ壁紙のリサイクル

 2. 東京都の施工現場から

  最近の屋上緑化と塩ビ壁紙リサイクルブロックの利用状況

    モデル展示や資金助成制度の導入など、自治体の普及事業が活発になるのに伴って、民間にも広がりを見せはじめた屋上緑化の取り組み。東京都の3自治体(豊島区、台東区、墨田区)と中央区の商業ビルのケースから、最近の屋上緑化と塩ビ壁紙リサイクルブロックの利用状況を取材しました。  

 

豊島区役所の「屋上庭園」

  東京・池袋にある豊島区役所では、350平方メートルの本庁舎屋上に、今年7月から「屋上庭園」をオープン、屋上緑化のモデル展示として区民の人気を集めています。
 公園緑地課によれば、開園後、民放テレビのクイズ番組で取り上げられたことで区民からの問い合わせが急増。平成13年度から実施している屋上緑化普及のための助成制度(1平方メートル当たり1万円。上限40万円)に対する申請も、「今年度は11月末現在で既に9件/161.75平方メートルと、順調に伸びている」とのことで、屋上緑化に対する区民の認識は着実に高まりつつある様子です。
 庭園の建設には、屋上緑化に携わる44企業が参加。造園芸ゾーン、芝生ゾーンなどテーマ別に区分された 4つのゾーンの各所に塩ビ壁紙のリサイクルブロックの使用を見ることができますが、花とみどりの係では「塩ビはリサイクルブロックだけでなく防水・防根シートなどにも使われており、しっかりした緑化をする上で大切な資材だ」と語っています。

 

台東区役所の「エコガーデン」

  台東区役所の「エコガーデン」は、JR上野駅にほど近い10階建て本庁舎の屋上に、この10月にオープンしたばかり(面積約300平方メートル)。台東区では、昨年3月に第一弾として隣の分庁舎(44平方メートル)の屋上緑化に取り組んでおり、「エコガーデン」は、その拡大版として新たに建設されたもの。区民に対してモデル事例を提案することで、屋上緑化の普及に拍車をかけようという狙いです。現在は、土日祝日も試験的に開園しており、オープンからわずか1カ月で、見学者の数は900人以上に達しています。
 また、ガーデンのオープンと同時にスタートした助成制度(2平方メートル以上の緑化が対象で、助成額は1平方メートル1万円。上限40万円)についても、10件以上の相談が寄せられたうち、既に2件の申し込みが来ています。
 環境保全課の飯野秀則係長の説明では、「区民の意識調査では、屋上緑化・壁面緑化をやってみたい、興味があると答えた人が約7割。緑化に対する区民の興味は非常に高い」といいます。
 「エコガーデン」の特徴は、その名前のとおりエコロジーの考えをより強く打ち出している点。「緑化資材には、参加企業40社にできるだけリサイクル製品を使うようにしてもらっている。塩ビのリサイクルブロックもそうしたエコロジカル製品のひとつだ」とのことで、ほかにも太陽光や風力発電、雨水利用施設などの展示を含めて「エコロジカルな屋上緑化」が提案されています。
 

 

墨田区役所「屋上緑化見本コーナー」

  2025年までに区内の緑化率を13.8%に引き上げる「緑の基本計画」に則して、積極的な屋上緑化政策を展開しているのが墨田区。
 「下町密集地で緑が少ない墨田区では、区民の中に緑を育てたいという要望が強く、その対策として平成9年から『屋上に緑の帽子』キャンペーンをスタートした。その後、ヒートアイランド対策としての屋上緑化が注目されるようになったが、墨田区の場合は、むしろ“区民の憩い”としての緑を増やすことが当初の目的だった」(環境保全課緑化推進担当の内田英穂主任)。
 本庁舎4階の南北両側のテラスに広がる屋上緑化見本コーナーは、区民からの問い合わせに対応できるように具体的な緑化の見本を展示したもので、このほかカフェテラスやホールの屋上など、敷地内の各所にさまざまな緑化モデルが設置されています。総面積約800?は全国でも最大規模。昨年5月から実施している見学会の参加者も既に4,000人(平成15年11月現在)を数えます(見学会は現在週1回開催で要予約。窓口=環境保全課緑化推進担当/TEL. 03−5608−6208)。
 「区民が安心して緑化できるようになるには、安全で低コストの部材が必要」と言う内田主任は、塩ビのリサイクルブロックについて「ノコギリで簡単に加工でき、コンクリートよりも軽いなど利点が多い」と評価していますが、一方で「塩ビ業界は屋上緑化に役立つ塩ビ製品の安全性やリサイクル情報などについて積極的にPRして欲しい」と業界への要望も示しています。S

 

クアトロ室町ビルの屋上庭園

  最後に、民間の取組事例として、今年4月に竣工した東京都中央区日本橋の商業ビル「クアトロ室町ビル」の屋上庭園を取り上げます。生活産業資材の総合メーカー・興人(株)のグループ企業である興人商事(東京・日本橋)がプロデュースしたもので、「ヒートアイランド対策と同時に、屋上を楽しみの場としてもっと有効に利用したいという地権者の方々の意向で緑化に取り組んだ」と話すのは、同社東京営業部新商品開発グループの志村康太氏。
 様々な草花の周りにふんだんに塩ビ壁紙リサイクルブロックを敷き詰めた庭園は、まさしく生活を潤す都心のオアシスといった雰囲気ですが、これを採用した理由について志村氏は、「軽量で耐久性とデザイン性に優れること、木材に比べてひび割れが少なくメンテナンスしやすいこと、しかもリサイクル商品であること」と説明しています。
 「屋上緑化は多様な技術力を総合した究極の外断熱。建物も長持ちし、省エネ効果も高い」と強調する志村氏は、今後の普及拡大のポイントを「戸建住宅への普及と、企業交流による技術情報の蓄積」と指摘しています。