2002年6月 No.41
 
特集/建設廃棄物リサイクルの現状(1) ―JPEC講演会から―  

 建設・解体工事におけるリサイクルの現状

 鹿島建設(株)の島田啓三部長が講演。建設廃棄物の現状と塩ビ建材リサイクルの課題など

  

 

 建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)が5月30日から完全施行されました。建設資材としての用途が6割以上を占める塩ビ製品にも大きく影響する法律の施行を機に、今回は建設廃棄物リサイクルについて特集を組んでみました。第1部は、鹿島建設(株)安全環境部の島田啓三部長が「建設・解体工事におけるリサイクルの現状」と題して行った当協議会主催の講演会(5月14日、東京都千代田区のJEMAホール)から、概要をレポートします。

 

塩ビ建材も「特定建設資材」指定の可能性

 建設廃棄物は、産業廃棄物全体(平成10年度で年間約4億1,000万トン)のほぼ2割を占めます。建設省(現国土交通省)が5年に一回実施している排出量の調査では、平成7年度の約9,900万トンに対し12年度は8,500万トンと、建設投資の減少や業界の減量化努力などによって5年間でおよそ15%減少していますが、同省がまとめた建築解体廃棄物の将来推計によれば、高度成長期に建てられた非木造建築が2005年ごろから更新期を迎えるため、その廃棄物が飛躍的に増えると予測されています。
 建設リサイクル法は、こうした将来予測、さらには増加する不法投棄の実態などに対応して、建設廃棄物を適正に処理・有効利用する目的から、平成12年5月に制定されたもので、一定規模以上の工事(解体工事では床面積80平方メートル以上、新築工事では500平方メートル以上など)における特定建設資材を対象に、分別解体(新築・土木工事の現場分別を含む)と再資源化を義務付けることを基本骨格としています。
 特定建設資材に指定されているのは、現時点ではアスファルト、コンクリート、木材の3品目ですが、建設リサイクル法に基づいて国が定めた基本方針では、石膏ボードとプラスチック建材、特に塩ビ管・継手など塩ビ建材について追加指定の可能性が示唆されています。塩ビ業界でも、こうした動きを視野に入れながら、《トップ・ニュース》でご紹介した塩化ビニル管・継手のリサイクル・システムづくりなど、さまざまな取り組みを進めています。

 

 

■建設混合廃棄物のリサイクル促進が課題

 今回の島田部長の講演は、建設廃棄物の排出状況や建設リサイクル法とその施行規則などについての詳細な説明に加えて、塩ビ建材が特定建設資材に指定された場合のリサイクル上の課題などにも言及したもの。
 この中で島田部長は、「基本方針の中で近い将来特定建設資材になり得る品目としてあげられているプラスチック建材とは実質的に塩ビ管を指すと考えていい」と述べて、塩ビ建材の追加指定の可能性を改めて確認するとともに、
 「建設廃棄物の内訳を重量ベースで見ると、アスファルトとコンクリートだけで全体の8割近くを占め、塩ビ建材や石膏ボードなどを含む建設混合廃棄物は6%程度に過ぎない(図1)。しかし、これは一種の数字の落とし穴であり、容積ベースで見た場合、建設混合廃棄物の割合は3割強に達する。しかも、アスファルトやコンクリートなどが極めて高いリサイクル率を達成しているのに対して、建設混合廃棄物のリサイクル率はかなり低位に留まっている(図2)」
 として、混合建設廃棄物のリサイクル促進が今後の大きな課題となることを指摘。その上で、鹿島建設が独自に進めている解体分別の取り組み事例などを紹介しながら、塩ビ建材や石膏ボードリサイクルを進める上での技術的な問題点を具体的に説明しました。

 

■誰にでも分かる「塩ビ建材の識別表示」を

 鹿島建設ではこれまで、建設リサイクル法を先取りする形で、解体分別と建設廃棄物の有効利用に積極的に取り組んできており、その中で、塩ビ管、塩ビ電線被覆材などのリサイクルでも着実な成果を上げています。
 島田部長は、こうした「現場での経験」から指摘される塩ビリサイクルの問題点として、まず「素材の識別表示の問題」を上げ、「誰でも簡単に見分けられる識別表示を工夫することが塩ビ建材リサイクルの大前提になる」との考えを示しました。
 塩ビ製品については、平成13年4月に施行された資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)において、塩ビ管、塩ビ壁紙など5品目が、分別回収を進めるため材質表示を義務付ける「指定表示製品」に定められていますが、島田部長は「製品の隅に一ヶ所表示があるといっただけでは現場の人間には識別しにくい」として、次のように要望しました。
 「プラスチックのマテリアルリサイクルは技術的にも用途が限られており、現実的には高炉原料やセメント燃料など、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルが欠かせない。その際は予め塩ビを分別して脱塩素しておくことが必要だが、そのためには、塩ビを塩ビとして識別できる表示制度が最大のキーポイントになる。例えば塩ビシートの一面に塩ビの識別マークをプリントするとか、他のプラスチックと分別できる特定の色を使うなど、現場の誰にでも簡単に見分けがつき、素早く分別できるような方法を塩ビ業界としてぜひ工夫してほしい」

 

■関係業界のネットワーク構築の必要性

 このほか島田部長は、石膏ボードのリサイクルとの関係から、塩ビ壁紙とボードの分離技術の問題にも言及。
 「石膏ボードが特定建設資材になった場合、ボードの上に張られた塩ビの壁紙を剥がさなければならない。現在石膏ボードについては粉砕して壁紙と石膏を分離する技術などを研究しているが、現状ではかなりの量、紙や塩ビの微粉が混入するのを避けられない。この量を一定の限度内に制限できなければ、効率的な石膏ボードのリサイクルも難しくなる」との課題を指摘した上で、最後に、「製品の材質について知り抜いているのは何といっても資材メーカー。建設廃棄物のリサイクルには建設業界と資材メーカーが連携しながらリサイクルシステムを作っていくことが最も望まれることであり、ぜひ塩ビ業界とも一緒に仕事をさせていただきたい」と、リサイクル促進へ向けた関係業界のネットワーク構築の必要を呼びかけました。

 

■プロフィール しまだ けいぞう
1949年京都市生まれ。1972年名古屋工業大学建築学科卒。1973年建設省(現国土交通省)入省。建設経済局建設業課において建設廃棄物問題を担当した後、1992年、鹿島建設入社。東京支店廃棄物処理計画室主査、安全環境部次長を経て現職。(社)建築業協会副産物部会副部会長。