2000年12月 No.35
 
 

 青森RERのサーマルリサイクルセンター

 塩ビ混入シュレッダーダストの有効利用を実現する、
 (株)荏原製作所の流動床式ガス化溶融システム

    今回訪れたのは、青森リニューアブル・エナジー・リサイクリング(株)(本社=青森県弘前市/略称=青森RER)のサーマルリサイクルセンター(青森市戸門字山部/TEL.0177ー63ー1680)。塩ビやその他廃プラスチックの有効利用を可能にするガス化技術の最先端情報をレポートします。  

 

高温燃焼でダイオキシンを完全分解

 

  青森RERのサーマルリサイクルセンターは、塩ビを含む廃プラスチック(シュレッダーダスト)や汚泥などを中心とした産業廃棄物の処理施設です。その名前のとおり、廃棄物の熱エネルギーを電力として回収、再利用することを目的とした最新鋭のリサイクル施設で、発電だけでなく鉄、アルミ、銅などの金属、灰(溶融スラグ)などの再利用でも注目すべき取り組みが進められています。
 その高度なリサイクル事業を可能にしているのが、(株)荏原製作所(本社=東京都大田区)が開発した流動床式ガス化溶融システムです。このシステムには、

  1. 1,350℃の高温燃焼でダイオキシンを完全分解できる
  2. 灰を溶融スラグ化しリサイクルすることで最終処分場(埋立地)の延命化が図られる
  3. 鉄、銅、アルミなどの有価金属を未酸化状態で回収しリサイクルできる
  4. 蒸気発生量が多く自己消費電力も少ないため効率的発電が可能
  5. 従来より少ない空気で運転できるため、排ガス量が少なく、設備をコンパクトにすることができる

などさまざまな特長があり、平成10年には「適切にごみ処理を行うことができる技術であると認められる」とする(財)廃棄物研究財団の技術評価書を受領。既に全国で8件の受注実績があり、自治体(山形県酒田市、埼玉県川口市など)の一般都市ごみや産業廃棄物の処理に役立つほか、スイスのABB ALSTOM社(事業用発電設備の世界最大手)などに対する技術供与を通じて、その性能は海外でも評価されています。

 

■ 日量450トンの処理能力

 

  RERサーマルリサイクルセンターの処理能力は日量450トン。システムは225トン炉2基から成っており、設計上は各ラインごとに150トンのシュレッダーダストと75トンの汚泥を処理することができます。但し、現在試運転期間中であり、稼働しているのは1ラインのみ。現在の処理量はシュレッダーダスト約200トン、汚泥約30トンで、シュレッダーダストについてはグループ企業の青南商事(シュレッダー業)より発生するものを扱っています。
 以下、処理フロー(図参照)に沿ってシステムの主な特長を整理してみます。まず、第1段目の流動床式ガス化炉に投入された廃棄物は500〜600℃の温度で可燃性ガスとチャー(固形カーボン)に熱分解されます。この炉は、荏原の流動床式焼却炉の技術を延長して開発されたもので、炉の下部から空気を吹き込んで熱媒体である砂を旋回させ廃棄物をガス化する仕組みです。
 この段階でガス化炉から鉄、銅、アルミなどの有価金属が回収されますが、炉内の酸素濃度が低いのでリサイクル可能な未酸化状態で取り出すことができます。

■ ダイオキシンは、0.1ngを十分クリア

 
  ガス化炉で生成した可燃性ガスとチャーは次の旋回溶融炉に送られ、1,350℃という高温燃焼によりダイオキシン類も完全に分解されます。また、ここでは溶融スラグが取り出されるとともに、ボイラーからの蒸気で発電が行われます。
 青森RERの分析では、排ガス、スラグ中のダイオキシンはほぼゼロに近く、飛灰中のダイオキシンも0.1ng−TEQ/gと、厚生省のガイドライン3ng−TEQ/gを大幅に下回っています。トータルダイオキシン量はごみ1トン当たり0.69μgで、これも厚生省の目標値5μgの7分の1以下という低い数値になっています。
 溶融スラグも土壌環境基準や溶融固化物に関わる目標基準を完全にクリアしており、不足している砂の代替品として道路用舗装材や土木建築材などに全量利用することが可能です。土木建築材としての利用は既に始まっていますが、青森RERではスラグをさらに微粉砕して下層路盤材に利用することを計画中で、渇`原製作所環境開発センターの廣勢哲久部長は「量がまとまって流通に乗れば輸入されている砂のかなりの割合がガス化溶融スラグに置き換わることになる」と期待してます。
 一方、発電設備の能力は約1.8万キロワットで、発電端効率は約20%。一般都市ごみによる発電が通常11〜12%程度なのに比べると、かなり効率的な発電が可能と言えます。現時点ではまだ本格的な発電は行われていませんが、場内消費分を除く1.5万キロワットを東北電力に売電する計画です。

   

■ 塩ビも全く問題なく処理

 
  排ガス処理工程ではバグフィルターを2段式にしているのが特徴で、1段目で飛灰を捕集し、2段目で消石灰を噴霧して塩化水素を中和する方式です。
 廃棄物中の塩素分はごみの状況により0.5%〜3%と異なりますが、平均1.5%程度となっており、この数字から推計するとシュレッダーダストのうちのほぼ3%程度が、自動車の内装材などに使われている塩ビと考えられます。廣勢部長は「予想したより塩ビが多い」と言いますが、消石灰の量を調整するなどして、塩ビも全く問題なく処理されています。
 なお、青森RERでは、中和に使われる消石灰の中の未反応分について再利用技術の研究を進めているほか、飛灰の中に含まれる鉛や銅、亜鉛などの重金属類の有効利用についても検討を行っているとのことです。
 青森RERのサーマルリサイクルセンターは、循環型社会に向けたゼロエミッションの諸条件を満たす、文字どおり次世代型のごみ処理施設と言えそうです。