1999年9月 No.30
 

  高濃度塩ビを含む廃プラ燃焼試験でダイオキシン規制値をクリア

 

  高濃度の塩ビを含む廃プラスチックがガス化溶融炉を用いて問題なく処理できる上、排ガス中の塩化水素濃度とダイオキシン類濃度の間に相関関係が見られないことなどが、(株)荏原製作所と(社)プラスチック処理促進協会および当協議会が行った共同研究で明らかになりました。
 

● 塩ビ=ダイオキシン主犯説に反証

 
  廃棄物の焼却処理に関してダイオキシン問題に対する関心が高まる中、"次世代型ごみ焼却処理システム"としてガス化溶融炉への期待が集まっています。しかし、ガス化溶融炉での燃焼試験については、一般廃棄物(食塩などの無機塩素を含み塩素濃度l%以下の廃棄物)を対象とした実施例は多数あるものの、廃プラスチック類(通常の塩素濃度2〜4%)のみの専焼試験に関する技術データは少ないのが実状で、塩ビ含有率の増減の影響についても実証データはほとんど見られません。
  今回の共同研究は、こうした状況に対応して、
 (1)廃プラスチックだけを燃焼した場合のダイオキシン類の排出濃度
 (2)廃プラスチック中の塩ビ含有率の影響
 の2点について技術データを採取したもので、ガス化溶融炉を用いて塩ビ含有廃プラ
 が問題なく処理できることを実証することに加えて、塩ビを最大のダイオキシン発生源とする一部の誤った認識を払拭する上でも重要な意味を持っています。
  試験で使用された設備は、荏原製作所藤沢工場の流動床式ガス化溶融実証炉で、処理能力は1日20トン(廃プラのみの場合は1時間400〜500kg)。試料としては、(1)新潟市で分別収集された都市ごみ系廃プラスチック類(塩ビ含有率約8%)、(2)(1)に使用済み農業用塩ビの再生品を加え塩ビ濃度を2倍(塩ビ含有率約16%)にしたもの、の2種類を用いており、それぞれについてダイオキシンのほか、コプラナPCBや塩化水素など12物質について分析を行いました(以下、(1)の燃焼試験をRun1、(2)をRun2とする)。

 

●  脱塩化水素剤も予想以上の効果

 
  試験結果のポイントは次のとおりです。
 (1)Run1、Run2ともに、排ガス中のダイオキシン類濃度はバグフィルタに続き脱硝触媒塔を経て、最終的に煙突出口で0.05ng−TEQ/Nm
3以下になることが確認できた。また、煙突出口における排ガス中のNOx、SOx、塩化水素、一酸化炭素の濃度も、自主管理基準値(荏原製作所と藤沢市との公害防止協定値)を十分下回る濃度だった。
 (2)Run1およびRun2のダイオキシン類濃度は、全体的に同等であった。
 (3)塩化水素濃度とダイオキシン類濃度の間には、相関関係が見られなかった。
 (4)不燃物および溶融スラグの溶出試験については、Run1、Run2いずれも土壌環。
 境基準値を下回る結果であり、そのまま再利用出来る品質のものであった。
  さらに、今回の試験では、脱塩化水素剤としてガス化炉内への生石灰投入とバグフィルタ前での消石灰噴霧を併用したことにより、煙突出口での塩化水素濃度を20ppm以下に抑えることができ、生石灰による高温での塩化水素除去の効果も確認されました。その効果は予想以上に大きく、溶融炉出口の塩化水素濃度、ダイオキシン類濃度の更なる低減へ新たな技術開発の可能性を示唆する結果と言えます。