1999年9月 No.30
 

 『元気なごみ仲間の会』が塩ビ管リサイクルの現場を見学
 
松田美夜子さんらメンバー7名。消費者・塩ビ業界関係者が浦和市で交流の1日

  

 

    リサイクルシステム研究家の松田美夜子さんが主宰する『元気なごみ仲間の会』の会員7名が6月8日、埼玉県浦和市の大水産業(株)を訪れ、塩ビ管リサイクルの状況を見学しました。見学の後に行われた意見交換会では、塩ビ関係者との間で忌憚のない言葉が交わされるなど1日がかりで行われた見学会は市民・業界双方にとって有益な試みとなりました。  

 

エコ市民の連帯組織、塩ビにも高い関心

  『元気なごみ仲間の会』(事務局=東京都千代田区三崎町3―1―5、神田三崎町ビル3F)は、環境問題や廃棄物問題に取り組む市民の緩やかな連帯をめざして、平成8年5月に発足した"ごみ仲間"の情報交流ネットワークです。同会はかねてから塩ビについても高い学習意欲を示しており、これまでにも塩ビ業界と反塩ビ団体の双方から関係者を招いて両者の主張を聞く講演会を開催するなどの活動に取り組んできました。
  今回の見学会は、塩化ビニル管・継手協会が推進している塩ビ管リサイクル事業の実情を見てもらいたいという塩化ビニル環境対策協議会からの申し出がキッカケとなって実現したもので、参加したのは、代表の松田美夜子さんのほか、副代表の澤田和子さん(東京都北区役所区民施設課長)と藤田あや子さん(リサイクルアドバイザー)、事務局長の崎田裕子さん(環境カウンセラー・ジャーナリスト)、総務の鬼沢良子さん(元・柏市ごみ減量推進協議会)と久富欣哉さん(『月刊廃棄物』編集長)、そして会報編集副委員長の杉島和三郎さん(環境システムエンジニアリング株式会社)の7名。塩ビ業界からは当協議会の西村義信運営委員長と佐々木慎介本誌編集長、また、塩化ビニル管・継手協会からは環境委員会の荒井弘光前委員長と松澤俊彦委員長、環境・リサイクル対策室の野田公生部長らが同行して、案内に当たりました。

 

活発な意見交換

  一行はまず、浦和市にある大水産業本社を訪れ、佐藤志郎社長から使用済み塩ビ管の回収状況やリサイクル工程、加工技術などについて概要の説明を受けた後、隣接した本社工場で、回収された塩ビ管が粗粉砕される工程を見学。続いて、茨城県八郷町の八郷工場に移動して、粗粉砕された原料が微粉砕からペレット、再生塩ビ管に成型されるまでをつぶさに見て回りました。
  大水産業では、塩ビ管リサイクル事業の協力会社になって以降、新規に持ち込まれる使用済み塩ビ管が急増しており、回収量は前年の約1.5倍に達しています。また、同社の再生管は浦和市や蕨市で公共下水道の取り付け管に使用されているほか、今年からは新潟県新発田市にある法務局関係施設で排水管として採用されることが決定するなど、自治体への参入という点でも様々な実績を挙げています。
  工場を訪れた一行は、分別された使用済み塩ビ管が真新しい再生管に生まれ変わる様子を、工場関係者の説明を聞きながら熱心に見入っていましたが、見学後、同社の佐藤一郎会長をまじえて行われた懇談の席では、見学の感想やリサイクル問題などについて活発な意見交換が行われました。
 

 

「表示の実施」で業界に要望も

  『元気なごみ仲間の会』のメンバーからは、「密度の濃い見学で勉強になった」「公共の施設が再生管を積極的に採用することで塩ビのリサイクルがスムーズに広がっていくことを期待する」「しっかりした理念を持ってリサイクルに取り組んでいる姿に感銘を受けた。ダイオキシン問題は、消費者がきちんと理解することや環境教育を行うことが、今後の重要な課題であると思う」「"パイプからパイプへ"というリサイクル手法は天然資源を長く使うためには理想的な考え方だ」など、業界の取り組みを評価する感想が聞かれた一方、「塩ビがリサイクルしやすいことは分かったが、分別しにくい身近な塩ビ製品をどうするのか。きちんと集めてリサイクルしていくには表示の問題も真剣に考えてほしい」「再生管の需要を広げるためにも、誰にでも一目で塩ビと分かる材質表示を」といった声も聞かれ、表示制度の実施に対する要望が強まっていることを感じさせました。
  リサイクル問題については、「マテリアルリサイクルは物によってはバージン製品よりエネルギーの浪費になる場合がある。リサイクルすべき物と、してはいけない物の区別が重要だ」と、リサイクルの根幹に触れる視点がメンバーの1人から提示されましたが、これについては業界側が「塩ビ管でも、汚れのひどい物を無理にリサイクルしようとすればむしろ無駄なエネルギーを使うことになる。このような物は高炉原料化やセメントの原燃料化など、他の方法を組み合わせて有効利用していく」と説明して、今後の取り組みに対する理解を訴えました。

 

トップランナーの気構え持って(松田さん)

  意見交換の中ではこのほか、バージン管と再生管の品質上の違いなどについて質疑応答があったほか、リサイクルの用語の問題についても、「廃塩ビといった言葉に換えて、リサイクルの原料・資源であることをもっと明確にイメージできる表現を工夫する必要がある」などの提言が示されました。
 最後に松田さんは、 「技術開発により再生する仕組みはできた。次は使う仕組みをどうするかが問題。
 この点で私たち市民に何が出来るのかを考えていきたい。排出事業者が適正な処理費を払い、かつ再生品を使っていく方向に向かせるのが消費者サイドの仕事であり、行政に対しても再生塩ビ管の採用をもっと強く働きかけたいと思う。塩ビ業界の人たちには、単にパイプだけでなく、塩ビ全体として循環していくために何をすればいいのかを、製造者責任の問題も含めて真剣に考えてほしい。皆さんはリサイクルのトップランナーという気構えを持って、胸を張って頑張ってもらいたい」と述べて、成果の多かった1日を締めくくりました。