1999年3月 No.28
 

 "塩ビの高炉原料化は可能"実証試験で確認

  共同研究で成果まとまる。焦点の脱塩化水素技術も高効率、実用化へ関係者の期待大

    日本鋼管株式会社(NKK)と(社)プラスチック処理促進協会、および当協議会の三者で進めてきた「高濃度塩ビの高炉原料化」に関する共同研究の結果がまとまりました。焦点となる脱塩化水素技術をはじめ、塩ビが問題なく高炉原料として利用できることを試験設備を用いて確認したもので、今後はこの成果を踏まえ、実用化へ向けた技術開発が進められることとなっており、塩ビ関係者の期待が募ります。  

 

4ヵ月の実証試験結果を解析

  塩ビの高炉原料化とは、製鉄の際に鉄鉱石から酸素を取り除く還元剤(コークス)の一部を塩ビで代替する技術で、塩ビの再利用率を飛躍的に高める新しいリサイクル手法であるのと同時に、コークスの消費節約、製鉄に伴う二酸化炭素排出量の低減、高温・完全焼却による有害物質の分解といった環境対策の面でも、関係者から一日も早い実用化が望まれています。
  また、今回の共同研究は、塩ビ100%までの高濃度塩ビ廃棄物の高炉利用をめざすという点で世界的にも例の少ない試みであり、一般の都市ごみ中の塩ビ以上に産廃系塩ビのリサイクルという点で画期的な効果が期待できます。
  研究は昨年3月から7月まで、川崎市のNKK京浜製鉄所に建設された試験プラント(処理能力=年間1,000トン)を用いて進められ、次の4項目に関して様々な実証試験が重ねられてきました。
 (1)高濃度塩ビのロータリーキルン式脱塩化水素方式の設計・製作
 (2)塩ビ含有プラスチックの脱塩化水素試験およびその評価
 (3)脱塩化水素塩ビの高炉原料化試験およびその評価
 (4)実用化の評価

  このほどまとめられた成果報告書は、これら一連の試験結果を詳細に解析したもので、高濃度塩ビ廃棄物が高炉原料として十分に使用可能であることを明確に示した内容となっています。

 

共同研究の3つの成果

 共同研究全体の成果としては、次のような点が挙げられます。
  1. ロータリーキルン式脱塩化水素装置を開発
     塩ビを高炉原料として利用するには、前処理工程として塩ビ廃棄物から塩化水素を取り除く脱塩化水素技術が最大のポイントとなります。今回の研究では、NKKが開発したロータリーキルン方式による高性能脱塩化水素装置が採用されましたが、試験結果から連続運転でも安定した操業を維持できることが分かりました。
     また、脱塩化水素後の樹脂の塊状化防止やキルン内壁への付着を防止するために、熱媒体として粉コークスを同時に供給しているのも技術的な特徴ですが、コークス混合による脱塩化水素への影響はほとんどなく、キルン内壁への塩ビ樹脂の付着も認められませんでした。
  2. 95%以上の脱塩化水素率を達成
     試験材料には硬質塩ビとしてパイプ類、PTP(薬品包装材)端材、ガラス纖維入波板、軟質塩ビとしては農業用ビニル、レザーを用いたほか、他樹脂の影響を調べるためにポリエチレンやPETを混合した試験も実施しています。
     この結果、硬質塩ビ、軟質塩ビそれぞれで95%の脱塩化水素率が達成できました。
     このほか、ポリエチレンを添加して行なった試験では、25%までは許容可能であることが分かりました。
  3. 「塩ビ高炉原料化」の可能性を確認
     脱塩化水素した樹脂の性状は、塩化水素が抜けるのに伴って発泡した状態となります。硬質塩ビは試験前の材料に比べて球状化するのに対して、軟質塩ビ(農ビ)は加熱に伴いフィルムが軟化して小粒化しますが、いずれも高炉原料として十分利用可能な性状であることが確認されました。