1997年3月 No.20
 

   内外装用塩ビフィルム
  
―車体のマーキングや高級壁装材など多彩なバリエーション


  最近は自動車の装飾もずいぶん派手になって、車体がカンバスになったかと見まがうばかり。
  ところで、一見塗装のように見えるあの図柄も、実はほとんどが塩ビのフィルムを貼りつけたもの。こんなところでも様々な長所を生かして塩ビが活躍しています。今回は“貼るペイント”内外装用塩ビフィルムの多彩な世界を覗いてみました。
 

●  アメリカ生まれの日本育ち

 
  一般に内外装用塩ビフィルムと呼ばれるものの中には、自動車の車体広告や装飾用に利用されるマーキングフィルムや、豊かな居住空間を演出す高級壁装材(裏面に紙を使った一般の塩ビ壁紙とは異なる塩ビ単体の製品)など多くのバリエーションがありますが、もともとは第2次対戦前のアメリカで軍用機のマーキング(国旗やシンボル・マークなどの標示)に使用されたのがこの製品の始まり。 日本でも昭和30年代の半ばからフィルムの輸入販売が開始され、塗装よりも優れた“貼るペイント”として急速に普及していきました。
  その過程では日本独自の工夫、改良も盛んに進められたようで、日本における内外装用塩ビのパイオニア、住友スリーエム株式会社(世田谷区玉川台)の半谷克博氏(デコラティブ・グラフィックス事業部マーケティング部長)によれば、「高級壁装材は、ステーションワゴンに幌馬車風の木目調装飾を施すのに用いられていたアメリカの技術を当社が内装用に改良して、アメリカ以上の技術に育て上げたもの」とのこと。今では壁面はもちろん、エレベータの扉や床面の装飾などビルの内装の至るところにその応用例を見ることができます。

 

●  “砂漠から極地まで”バツグンの耐候性

 
  内外装用塩ビフィルムの特長をまとめてみると、まず@“熱暑の砂漠から酷寒の極地まで”どんな気象にも対応できる耐候性と耐久性との良さが挙げられます。さらに、A平面にも凹凸面にも自在に施工できる施工性・加工性の良さ、Bグラデーションなど複雑な色合いを簡単に表現できる着色性・デザイン性のよさ、C価格の安さ、Dメンテナンスのしやすさなども、内外装用塩ビフィルムの人気を支える重要なファクターです。
  「塩ビはいま環境問題の矢面に立たされている感じだが、『どうしても塩ビでなければ』という長所が多いことにも目を向けてほしい。他の素材のフィルムも開発されているが、現在でも全体の8割以上は塩ビと考えてよく、需要は増加傾向にある」(半谷部長)。
  現在では、着色技術や印刷技術の発達でコンピュータ制御によるシルク印刷なども行われているほか、壁装材の中には金箔を蒸着した豪華なタイプの製品もあって、寺院や仏壇の装飾用、メンテナンス用としても重宝がられているとか。内外装用塩ビフィルムは、商業デザインや空間デザインの可能性、創造性を広げる上でも大きく貢献しているのです。
  既に千葉県の袖ケ浦で1年間の試運転を終了しいるTIFG型溶融炉。来年6月からはいよいよ日量20トン規模の実証運転が藤沢市で開始される予定となっていまいす。