1995年6月 No.13
 

 エネルギー・資源回収WGの‘94年度研究報告

  ―塩ビ含有廃プラの脱塩化水素技術を共同研究。都市ごみ系廃プラへの活用にも可能性―

 

    当協議会のエネルギー・資源回収ワーキンググループ(WG)では、一昨年以来、外部の研究機関の協力を得て、塩ビ含有廃プラの油化および脱塩化水素のためのモデル技術開発に取り組んでいます。このほどまとめられた昨年度の研究報告によれば、塩ビがかなり多いものでも処理できる見通しが得られており、今後のプラスチック廃棄物処理問題に幅広く貢献できる可能性が出てきました。報告の概要をご紹介します。  

 

4項目の研究テーマ

  昨年度、エネルギー・資源回収WGが実施した事業は、(1)塩ビ含有廃プラを脱塩化水素するための技術の基礎研究、(2)軟質塩ビの油化・脱塩化水素に関する基礎研究、(3)小型焼却炉の研究、(4)油化残渣(炭化物)の有効利用の研究、の4項目。
  このうち、特に重点を置いたのが(1)の事業で、日鉄化工機と共同で実施した研究の成果、パイロット・プラント建設のための貴重な基礎データを得ることができました。

 

脱塩化水素の基本条件を解明

  その最大の成果は、塩ビ含有廃プラを迅速、均一に脱塩化水素するための基本的な条件が明らかになったこと。
  プラスチック廃棄物を油化するには、通常、加熱・溶融して、発生したガスを冷却するという工程ほ経て油が回収されますが、塩ビ含有廃プラの場合、排ガス中に含まれる塩化水素の処理が大きな問題となります。
  今回の研究では、塩ビ含有廃プラを約350℃まで加熱して、その溶融体を「できるだけ粘度の低い状態にしておくこと」が、迅速に脱塩化水素できる条件であるとが分かりました。
  これは、粘度が低いと均一に攪拌できて反応が早くなるためで、このほかにも、塩ビの含有率が40%を超す場合は、廃油等の熱媒体を加えて粘度を低くすること、40%以下の場合はポリスチレンが混ざっていると粘度が高くならずに脱塩化水素が容易であることなども新たに判明しています。
 

 

国の廃プラ油化事業に貢献の見通し

  この研究は、本来は塩ビ含有率30%〜50%程度の産廃系廃プラの処理を目的に進めてきたものですが、今回の成果は、ポリスチレンが必ず入っているとは限らない産廃系の廃プラに比べて、むしろ都市ごみ系の廃プラ(塩ビ含有率は平均約10%、ポリスチレンは15〜30%程度)こそ、有利に処理できる可能性を示唆しています。
  現在、包装容器のリサイクルに関する新法に備えて、一般都市ごみから分別される廃プラ処理への対応が課題となっており、国(通産省)もプラスチック処理促進協会などと連携して、技術開発に着手しています。
  今回の研究成果は、エネルギー・資源回収WGの研究が、こうした廃プラ油化の試みに何らかの貢献をなし得る見通しが出てきたことを示すものと言えます。
  同WGではこの成果に基づいて、今年度は短時間で効率的に連続して脱塩化水素を行うパイロット・プラントの試験を実施する計画で、これが今年最大のテーマとなります。また、これと併せて、排ガスを精製して塩酸として回収してリサイクルする研究もテーマに挙げられています。

 

軟質塩ビ油化の問題点が明らかに

  (2)の軟質塩ビの油化・脱塩化水素に関する基礎研究については、北海道工業技術研究所の協力により実験が進められています。
  軟質塩ビの場合、可塑剤が含まれる分、比較的容易に脱塩化水素できるのではないかと考えられていましたが、研究の結果、軟質塩ビは種類によって必ずしも同じように脱塩化水素しないことなどが分かりました。今年はその究明が研究テーマとなります。

 

アルカリフィルターの性能評価

  (3)の小型焼却炉の実験は、焼却炉メーカーのダイトーと共同して実施しているもので(本誌No.11、平成6年12月号参照)、昨年度はダイトーが開発したアルカリフィルターの性能評価のための実証実験が行われました。
 塩ビ含有廃プラを焼却する場合、その初期段階で塩化水素が集中的に発生することが分かっていますが、実証実験の結果、塩ビの含有率20%程度であれば、炉の煙突部分にフィルターを装備することで、国の基準を満たす程度には塩化水素を除去できることが分かりました。
  WGでは、今後もメーカーと情報交換を行いながら研究を続ける予定です。
 
 ● 炭化物は活性炭に利用
  (4)の油化残渣(炭化物)の有効利用については、活性炭に利用する研究を化学工学会に委託して実施しており、現段階では、脱塩化水素時の条件(温度等)が活性炭の性能に影響することがある程度分かってきています。