2022年07月 No.116 

特集 持続可能性と塩ビ レポート1

持続可能な社会づくりの実現を促進する
バイオマスマーク認定制度

 バイオマスとは、農業・林業作物、有機廃棄物・農産物非食部・資源作物などの動植物由来の資源。そんなバイオマスを使って生まれた商品に対してつけられる「バイオマスマーク」をご存じでしょうか。今回は、バイオマスマークの運営を行う一般社団法人日本有機資源協会の牛久保明邦会長(東京農業大学名誉教授)からお話を伺いました。

写真:イメージ
写真:イメージ

一般社団法人日本有機資源協会

 2000年8月に任意団体日本有機資源協会として発足し、2002年3月に社団法人日本有機資源協会を設立。2006年からはバイオマスマークの運営事務局としても活動。2012年4月に法人格を一般社団法人に移行。発足当初から、バイオマスのエネルギー・マテリアル活用の促進を図るための活動に積極的に取り組む。

持続可能な循環型社会の構築を目指す団体

 日本有機資源協会は、「豊かなる大地、永遠の地球」を次世代に引き継ぐことを使命とし、産業界・学界・国・地方自治体・市民の皆さまとの連携のもと、動植物由来のエネルギー・マテリアル資源「バイオマス」の有効活用による「持続可能な循環型社会の構築」「地域活性化」「環境保全」「新産業創出」に取り組む団体です。
 発足は2000年8月。地球環境への関心が高まりつつある中、「生ごみを有機資源として活かすことはできないか」と考えたプラントメーカー、機械メーカー、ゼネコン、環境系コンサルタントが集まり設立されました。
 設立当初は任意団体でしたが、バイオマス活用促進の活動と実績を重ね、2012年からは「一般社団法人日本有機資源協会」として活動を続けております。

多様な切り口からバイオマス活用を促進

 まず、「バイオマス活用推進事業」では、地方公共団体や民間企業からの要請に応じて推進の支援を行っています。「人材育成事業」では、バイオマス活用の正しい知識と技術を持った人材を育成。育成プログラムの中では、バイオマス活用事業の計画づくりを行うなど、より実戦的な教育も実施しています。
 様々な商品に表記されている「バイオマスマーク」の認定や普及に関する事業も、私たちの大きな事業の一つです。
 ほかにも、当協会Webサイトからの情報発信や展示会への出展を行う「普及啓発事業」、バイオマス活用に関する書籍を出版・販売する「出版事業」、バイオマス技術の意見交換やビジネスマッチングを行う「技術調査事業」、各省庁の取組を支える「委託・補助事業」、バイオマス関係の各種協議会の「事務局運営」も事業として取り組んでいます。
 私たちが設立当初より取り組んできた事業は、現在注目されているSDGsにもつながります。これからも、バイオマスの有効活用を促進し、持続可能な循環型社会の構築に貢献していきます。

本『バイオマスプラスチック』
2022年3月には、バイオマスプラスチックを学べる書籍を出版。
この一冊で、バイオマスプラスチックの基礎的な知識から未来を拓く技術開発・普及に挑む最前線まで知ることができる。

バイオマス普及を担う「バイオマスマーク」

 「バイオマスマーク」とは、生物由来の有機物資源「バイオマス」を活用した商品につけられるマーク。申請があった商品に対し、第三者委員会が審査し、認定することで表記が認められます。
 このマークは、2002年に定められた「バイオマス・ニッポン総合戦略」の中で、バイオマス商品の識別マークの導入が推進されたことを発端に考案されました。バイオマスマークの本格運用が始まったのは2006年。以来、当協会がバイオマスマーク事業の事務局となり、普及と推進を進めています。
 バイオマスマーク商品が普及することで、石油など化石資源への依存低減にもつながり、環境負荷の軽減や循環型社会の形成にも貢献していきます。
 自社商品にマークを導入した企業様には、商品の差別化、消費者への環境意識のアピール、顧客企業による商品採用の可能性拡大、といったメリットが挙げられます。

バイオマスマーク

ロゴが表す「バイオマス度」

 地球から伸びる四葉のクローバーを模したデザインで、葉の左半分はBiomassの「B」の裏文字を表しています。右上はProductの「P」を表現し、右下の輪を描いて中心に戻る矢印は、カーボンニュートラルを表現しています。
 地球の上に書かれた文字は、認定商品に含まれるバイオマスの割合「バイオマス度」です。バイオマス度は、最小10から最大100までの間を、5刻みで表示しています。
 マークの最下段に書かれている6桁の数字は、バイオマスマーク認定商品ごとに割り振られた固有の認定番号。認定された商品は、この番号で厳密に管理されるだけでなく、当協会のWebサイトから誰でも参照し、詳細情報を確認することができます。

「バイオマスマーク認定商品を導入したい」の声が増加中

 2022年現在、日用雑貨品や物流梱包品、土木建築・農林漁業・情報通信の分野など8分野の商品で、合計1,400点以上のバイオマスマーク認定商品が登録されています。
 近年は、バイオマスマーク認定商品導入への意識が高まっていることを感じています。その背景には、SDGsをきっかけとした世界的な環境意識の変化があるのではないでしょうか。
 さらに、2022年4月1日から施行された「プラスチック資源循環促進法」も、今後のバイオマスマーク認定商品導入の後押しになるのではと考えております。
 実際に、当協会が展示会に出展した際も、「このバイオマスマーク認定商品を扱っている会社さんを紹介してもらいたい」というご相談を受けることがあります。また、企業様の中には、営業戦略や販売戦略の一環で、「同じ用途の商品なら、よりバイオマス度の高い商品を導入する」という動きもあるようです。
 バイオマスマークへの関心が高まっていることは嬉しい一方、正しく運用されるようよりチェックを怠らないことも心がけています。これまでも、一度マークを取得した認定商品に対し、認定後の検査も行ってきました。環境意識への機運が高まっている今だからこそ、正しくバイオマスマークが運用され、信頼される認定制度でありつづけるよう、運営していきたいと思います。

写真:牛久保明邦会長
牛久保明邦会長

製造からリサイクルの環境配慮も評価

 バイオマスマークに賛同してくださる企業様、消費者の皆様のご理解もあり、マークは広く普及しました。これからも、持続可能な社会の実現に向けて加速できるよう、尽力してまいります。
 現在のバイオマスマークは「商品の中にバイオマス資源がどの程度使われているか」を示していますが、お客様より、商品の製造やリサイクルに関わる環境配慮度合いを評価する制度作りも検討していく必要があるのではとの声をいただいております。
 商品そのものだけでなく、商品が生まれてから再利用されるまでのサイクル全体で環境配慮を評価し、企業様や消費者に伝えることで、より地球環境と持続可能な社会づくりに関心が高まると考えています。
 これからも、当協会は、現場の知恵や情報を幅広く集結させ、バイオマスの総合的な促進を図るための活動に、積極的に取り組んでまいります。

写真:牛久保明邦会長
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バイオマスマーク認定商品の例。バイオPETを使用した容器(上画像)、卵殻を配合したシート()、麦わら、バガスを配合した食器()、米を配合した樹脂ペレット(
バイオマスマーク認定商品の例。バイオPETを使用した容器(左画像)、
卵殻を配合したシート()、麦わら、バガスを配合した食器()、米を配合した樹脂ペレット(