2021年11月 No.114 

インフォメーション 3

「捨てられないモノづくり」を
㈱三共のブランディングへの挑戦

技術を要する手加工と先進設備の活用でお客様のつくりたいものを形にする。

写真
(写真左から 営業担当の小酒井 陽一さん 代表取締役の小酒井 茂さん)

 戦後、日本有数のアパレル産地として発展してきた岐阜県。繊維産業の隆盛とともに、衣類の包装資材を製造する会社も増えていきました。今回は、岐阜市にビニール工房を構える「株式会社三共」の代表取締役 小酒井 茂さんに、包装資材の製造からスタートされた会社の現在の取り組み、今後の展望についてお話を伺いました。

ホームページの「制作事例」が全国のお客様とつながるきっかけに

-小酒井さんが二代目代表に就任された1993年からチャレンジされたことを教えてください。
 当社の転機となった取り組みは、2000年のホームページ立ち上げです。先代までのお客様は、ほとんどが地元アパレル企業。しかし、全国的にアパレル産業が縮小を始め、岐阜県も例外ではありませんでした。自分たちの技術が活かせる場面がないかと、他業界の会社を一軒ずつ訪ねて営業をしたものの、新たな需要を見つけることは難しく、注文があっても不定期。なんとか販路を拡げたいという想いでホームページをつくり、製作実績を掲載していきました。お客様が「こんなものを作りたい!」と検索してたどり着きやすいページを目指し、20年以上、地道に更新を続けてきました。

-ホームページからの反響はいかがでしたか?
 製作実績をご覧になったエンドユーザーの方から「こういったものを作れますか?」と問い合わせいただけるようになって、仕事の楽しさに気づかされました。「作りたい」という想いを持ったエンドユーザーの意図をしっかり汲み取れますし、直接取り引きすることで、価格も抑えながら高品質な製品をお届けできます。
 お客様とのコミュニケーションも取りやすいので、製品の使用シーンを伺ってこちらから素材や製法をご提案することもあります。工場を持つメーカーだからこそ、素材も製法も熟知している。そう自負し、お客様の理想を形にすることにやりがいを感じています。

写真
異物混入等のトラブルを回避するための
「工場勤務用のウエストポーチ」は知られざるヒット商品

-御社の強みについて教えてください。
 わたしたちは、ケースやカバー類などの日用品、文具・雑貨などをメインに製作しており、長年技術力を磨いてきました。同時に、お客様のご要望を実現するための設備投資も行っています。昨年も、ものづくり補助金を活用してハイブリッド高周波ウェルダー機・インクジェットプリンターなどを導入しています。

写真
ハイブリッド高周波ウェルダー加工機を導入し、生産体制を強化。

PVCの魅力を活かしたオリジナル商品を生み出したい

-PVC Award2019で入賞された「美濃和紙クリアバッグ」など、自社製品にも力を入れておられるのですね。
 「美濃和紙クリアバッグ」は、地元の伝統工芸品「美濃和紙」をPVCでカバーした製品で、はかない和紙の美しさをいつでも堪能できると評価いただきました。このバッグは、長女とその同級生が立ち上げた自社ブランド「V-ista(ビスタ)」の製品。ブランド名は、ビニールのVに、「なにかに非常に熱心な人」という意味を持つistaという言葉を組み合わせた造語です。また、Vistaという英単語には「未来への予想、展望」という意味があり、PVCの魅力を活かし、日本のものづくりの未来を拓きたいという願いが込められています。V-istaのアイテムは、若々しい感性がデザインに活かされていて、親ながら素晴らしいと感じます。ネットショップやマルシェでも販売されています。

写真
小酒井あゆみさんが企画された「美濃和紙クリアバッグ」

-最後に、今後の展望についてお聞かせください。
 この先も、一言にすると「商品として大切に使っていただけるもの」を生み出したいですね。大量生産の時代が終わり、個人個人の感性を揺さぶる商品しか選ばれなくなってきました。従来からある製品であっても、質感にこだわったもの、商品にオリジナルのプリントを入れたいというお客様が増えました。効率は落ちてしまいますが、そういった細やかなご要望にひとつひとつ向き合うことが、捨てられないモノづくりにつながるのだと思います。

写真
PVCの質感が活かされたファッションアイテムが揃うブランド「V-ista」。

株式会社 三共

 創業1960年、アパレルメーカーの包装資材の製造から事業をスタート。現在は、ホームページ等で全国のお客様とつながり、要望に応えるビニール製品を提案、多彩なアイデアを形にしている。自社工場を持ち、コストや納期も意識した多品種小ロットに対応。