2021年03月 No.112 

特集 リサイクル レポート 1

2019年版「プラスチックマテリアルフロー図」

プラスチック有効利用促進の基礎資料に見る、資源循環の現状とリサイクルの課題など

2019年 プラスチックマテリアルフロー図

 一般社団法人プラスチック循環利用協会が毎年作成しているマテリアルフロー図は、プラスチックの有効利用を進めるための重要な基礎資料。ここでは、昨年末に発表された2019年版フロー図の概要に目を通しながら、プラスチック資源循環の現状とリサイクルの課題などについて、同協会・土本一郎専務理事にお話を伺いました。

マテリアルフロー図とは

 プラスチックのマテリアルフロー図とは、日本国内における1年間のプラスチックの生産、輸入、消費、廃棄、さらには処分(リサイクルと単純処理)まで、各段階の実態を数値的に明らかにしたもので(環境省、経済産業省、各自治体及び関連諸団体から提供されるデータと、廃プラ排出事業者、処理業者へのアンケートなどを基にした推計値)、これを経年比較することによりプラスチックの有効利用促進に資することを基本的な目的としています。
 「このフロー図は政府の審議会等の基礎資料として政策決定にも利用されるので、我々の責任も大きい。毎年作成する上で特に気に掛けているのは精度の向上。図の数値はあくまで推計値なので、どうしても曖昧な部分が残る。それを出来るだけ残さないよう、毎年テーマを見付けて精度向上に取り組んでいる」(土本専務)
 2019年版でも、これまで過大評価していた国内樹脂製品消費量について算定方法を訂正するなど(※従来のフロー図に、本来は対象外であるPET樹脂輸入量の中の「繊維用途」分が含まれていたため、今回からこの数値を控除した)、より精度の高いフロー図作成へ向けた努力が払われています。

一般社団法人プラスチック循環利用協会

 1971年、社団法人プラスチック処理研究協会として発足。社団法人プラスチック処理促進協会(1972年)を経て、2013年4月から現組織に変更。
「廃プラスチックの循環的な利用に関する調査研究等を行い、プラスチックのライフサイクル全体での環境負荷低減に資するとともにプラスチック関連産業の健全な発展を図る」ことなどを目的に、①LCA基礎データの提供とリサイクル技術などのLCA評価、②プラスチックフロー図の作成と精度アップ、③教育・学習支援/広報(教師研修や出前授業の実施など)、④内外関連機関との交流・協力、などの事業に取り組んでいる。

2019年のプラスチック有効利用率は85%

 2019年版フロー図の主なポイントを見てみると、この1年間における「樹脂生産量」は1,050万tとやや減少(前年比△1.6%)したのに対し、「国内樹脂製品消費量」は939万t(+0.8%)。一方、「廃プラスチック総排出量」は850万t(△1.3%。一廃412万t/産廃438万t)で、このうちリサイクルされたのは計726万t(+0.7%)。手法別ではマテリアルリサイクル186万t(△1.0%)、高炉原料、ガス化、油化などのケミカルリサイクル27万t(+4.7%)、固形燃料、セメント原・燃料、発電焼却などのサーマルリサイクル513万t(+1.2%)と、ケミカルとサーマルが増加傾向を見せています(手法別の比率はそれぞれ22%、3%、60%)。この結果、有効利用率は85%(+2.0%)となり、単純焼却、埋立処分は125万tに減少(△11.7%)しました。

再生品の需要拡大が最大の課題

 以上の結果について土本専務は「日本のプラスチック有効利用率は世界的に見て高い方と言えるが、引き続きリサイクルを加速していく必要がある」として、手法ごとの課題を次のように指摘します。
 「マテリアルリサイクルは再生品の需要拡大が最大の課題。再生品を使うことがエコでクールだと思われるような社会環境に変えていかなければならない。何より重要なのは教育・学習支援と広報活動であり、当協会も出前授業など環境教育に力を入れているが、今年はコロナ禍に対応したオンライン出前授業の実施や、子ども向けの学習支援サイトのリニューアル、プラスチックの授業を担当する小中学校教師向けサイトの新設などに取り組んでいきたいと考えている。関係各団体も、プラスチックに対する社会的関心が高まっている現状を千載一遇の好機として、それぞれやれることをやり尽くしてほしい。また企業側も、SDGs(持続可能な開発目標)などを持て囃すだけでなく、同価格ならバージンより再生材を使うといった具体的な行動に繋げていく姿勢が必要だ。
 なお、塩ビについてはマテリアルリサイクル有効利用率が33%程度と、全体の22%を上回っており、これまでの業界の努力を評価したい。今後さらにマテリアルリサイクルを広げていく上では、サッシ類など新しい分野についてリサイクルシステム構築の努力を続けてほしい」

写真:土本専務
土本専務。1985年経済産業省入省。SDS(化学物質安全データシート)や、PRTR(化学物質の排出移動量届出制度)の創設など、化学物質の管理、再生可能エネルギーの推進に携わる。2020年から現職。

ケミカルリサイクルの技術開発

 「ケミカルリサイクルは量的にはまだ少ないが、汚れたものでも分別せず受け入れられるという利点がある。今後処理量を増やしていくには更なる技術の進化が望まれるが、幸い、ここ数年企業による技術開発の努力が進んでいて、数年後には新しいケミカルリサイクル技術が立ち上がってくるものと期待している。近年、増加傾向にある種類の異なる樹脂の複合製品など、マテリアルリサイクルしにくい製品の有効利用を進める手法として、ケミカルリサイクルの役割は大きくなっていくと思う。
 サーマルリサイクルについては、CO2の排出抑制効果が適正に評価されるべきだ。例えば、固形燃料化して産業界で活用するとか、セメントキルンで焼成するといった用途は、マテリアルリサイクルに比べてCO2の排出抑制効果が非常に高い。そういう点も含めて、科学的知見を踏まえた議論ができるようにならなければいけない。また、発電焼却については効率性向上が課題で、今後市町村が焼却炉をバージョンアップするような際は、複数の自治体が共同で高効率な発電施設を建設するといった取組が必要になる」

コロナ禍の影響は?

 土本専務は、現在のコロナ禍が今後のマテリアルフローに与える影響を次のように予想しています。
 「マスクを初めとした医療用プラスチックが急増していて、その多くがリサイクルできずに単純焼却されている。その点はプラスチックの資源循環にとってネガティブなインパクトになると思う。また、経済活動の停滞でプラスチックの生産や消費が減ってくるので、結果として廃棄物の発生量にも影響してくるだろう。2020年版のフロー図はだいぶ様相が変わってくると見ている」