2020年9月 No.110 

特集 健康と塩ビ製品 レポート 2

オカモト㈱の「セレブイジェーネ」

抗菌SIAAマーク付き抗菌&防カビ塩ビフィルム。“ウィズ・コロナ時代”の新兵器

写真:粉ふり透明タイプ
粉ふり透明タイプ
写真:梨地クリアタイプ
梨地クリアタイプ

 前項の「医療用陰圧テント」と同様、コロナ禍の拡大を背景に熱い期待を集めているのが、オカモト株式会社(田村俊夫社長/東京都文京区)の「セレブイジェーネ」。悪玉菌やカビの増殖を抑える機能性塩ビフィルムで、安心の抗菌SIAAマーク付き。EUのRoHS2規制にも対応した、“ウィズ・コロナ時代”の新兵器です。

発売早々から引き合い急増

 「セレブイジェーネ」はこの8月に発売されたばかり。同社汎用プラスチック製品部の津下昭部長代理兼フィルム課長の話では、「抗菌SIAAマーク付きの抗菌フィルムということもあって、発売早々から予想以上のお問合せをいただいている」とのことで、コロナ対応製品として如何に大きな期待が掛けられているかがわかります。
 ところで、具体的な製品説明に入る前に注意しておきたいのは、抗菌という言葉の意味。抗菌製品技術協議会(SIAA)によれば、抗菌とは「菌を長時間増やさないようにする」ことで、菌を一時的に死滅・除去する殺菌・除菌とは定義が異なります。言い換えれば、菌を目の敵にするのでなく、増殖をコントロールしつつ共存していくというのが抗菌の考え方で、まさしく“ウィズ・コロナ時代”にふさわしい対応法と言えます。

抗菌活性値2.0以上

 「セレブイジェーネ」は、大腸菌や黄色ブドウ球菌の増殖を抑制する抗菌性能があり、抗菌SIAAマーク取得時に同社が行った性能試験の結果(右の表)でも明らかなように、耐水性・耐光性試験後の抗菌活性値は、いずれの菌に対しても基準値の2.0を大きく上回っています。
 また、クロカビ、アオカビの繁殖を抑制する防カビ効果についても、肉眼はもちろん顕微鏡下でもカビの発育は認められませんでした。「セレブイジェーネ」は、フィルム自体に抗菌剤、防カビ剤を練り込んでいるため、効果が長期間持続します。

写真:「セレブイジェーネ」の抗菌・防カビ性能
「セレブイジェーネ」の抗菌・防カビ性能

オカモト㈱とプラスチックフィルム事業

 岡本ゴム工業(1934年設立)を中心に、日本ゴム工業、理研ゴムなどが順次合併して発展を重ねてきた「ゴム・プラスチックの総合メーカー」(1985年から現社名に変更)。合併各社の理念や生産技術生かした多彩な事業展開など、独自の企業文化を育んでいる。URL:https://www.okamoto-inc.jp/
 事業の柱は、産業用製品事業と生活用品事業の二本で、<産業用製品>ではプラスチックフィルム、車輌用内装材、壁紙、粘着テープ、ゴムバンド、業務用ラップ、食品用手袋など、<生活用品>ではコンドーム、カイロ、手袋、長靴、除湿剤、レインウェアなどと、そのラインアップは極めて多彩。このうち、プラスチックフィルム部門は原反の販売事業で、塩ビフィルムのほか各種汎用樹脂フィルムを製造し、様々な加工製品の基材フィルムとして国内外のメーカーに供給している。

 製品バリエーションは、表面にパウダーを散布して剥離性を高めた「粉ふり透明タイプ」と、エンボス加工で磨りガラス状の半透明「梨地クリアタイプ」の2種類。梨地クリアタイプは、プライバシー保護が重視される用途(避難所の間仕切りシートなど)に対応したもので、両タイプとも、厚み0.2mmと0.3mmの2サイズが用意されています。
 「塩ビフィルムに限らず、常備在庫品のラインナップが豊富なことが当社の強み。『セレブイジェーネ』についても、4パターンの製品を揃えることで、お客様のニーズに合わせていろいろな対応ができるようにしている」(津下部長代理)
 製造を担当するのは同社の静岡工場。「信頼の日本製」ということも強みのひとつです。

SIAAマーク(抗菌)とは

 抗菌製品技術協議会(SIAA)が制定したシンボルマーク。抗菌・防カビ加工製品としての品質・安全基準に適合した製品であることを認定する。ISO 22916(抗菌性能試験)による評価結果に基づき、同協議会ガイドラインで品質管理・情報公開された製品に表示される。
 抗菌加工製品の認定基準は、加工されていない製品の表面と比較して、細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値2.0以上)であること。防カビ加工製品は、防カビ加工されていない製品の表面と比較して、特定のカビの生育が基準より抑えられることが確認されること。

RoHS2規制対応など、既存製品をグレードアップ

 「セレブイジェーネ」開発の経緯について津下部長代理は次のように説明します。
 「この製品は、10年以上前に発売した抗菌・防カビ機能フィルム『イジェーネ』の発展型。当時は抗菌の需要が予想したほど伸びず、『イジェーネ』も長い間忘れられた存在になっていたが、現在のコロナ禍で抗菌機能が見直される中、その復活を望む声がお客様から多数寄せられていた。『セレブイジェーネ』は、そうした要望を受けて『イジェーネ』を再出発させたものだが、RoHS2規制に対応して非フタル酸系可塑剤を使い、『セレブシリーズ』(同社が展開する非フタル酸系フィルムのシリーズ)の一つとしたほか、抗菌SIAAマークも取得して、よりお客様にご安心いただける製品にグレードアップしている。間仕切りシートだけでなく、幅広い用途に利用していただければと思う」

写真:津下部長代理
取材に答える津下部長代理。飛沫防止の対応も万全

抗ウイルス塩ビフィルムも開発中

 同社では、「セレブイジェーネ」以外にも、家具用レザー、柔道場の畳用レザー、業務用ラップフィルム、低密度ポリエチレン手袋などの抗菌製品を販売していますが(ラップフィルムとポリエチレン手袋は抗菌SIAAマーク取得製品)、コロナ禍との長期戦に備えて、引き続き抗菌製品の開発に力を入れていく計画です。既に、抗菌性能を付与した防炎シートの開発など、具体的な検討も始まっている様子で、「抗ウイルス機能の塩ビフィルムも開発中」とのこと。
 津下部長代理は「総合プラスチックメーカーとして、人々の健康や安全、環境に配慮した商品開発は常に意識している。抗菌・抗ウイルスに限らず、そういう社会的課題に対応した製品づくりは、今後もどんどん進めていきたい」としています。

写真:オカモトラップ抗菌
抗菌SIAAマーク付きの「オカモトラップ抗菌」