1994年12月 No.11
 

 レポート・第3回「塩ビ3極会議」東京会議

  −12カ国90名の関係者が塩ビのリサイクルテーマに3日間の集中討議−

 

   第3回目の「塩ビ3極会議」が、去る10月24日〜26日の3日間にわたって、東京新宿区のホテルで開催され、世界12カ国から90名の関係者が参加して塩ビのリサイクル問題などについて熱心な討議を繰り広げました。3日間の概要をレポートします。  

 

アジア地区からも3国が初参加

 年に1度、日米欧の塩ビ関係者が一堂に会し塩ビの廃棄物問題やリサイクル問題について意見交換する場としてスタートした「塩ビ3極会議」。92年アメリカ、93年ベルギーと続いて、今回が日本での初開催となりましたが、期間中は塩化ビニル工業協会が総力を挙げて運営に当たり、3日間におよんだ大会は成功のうちに幕を降ろしました。
  また、今回の会議には、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、オランダ、ベルギー、オーストラリア、コロンビアのほか、アジア地区からもタイ、韓国、台湾の3国が初参加。参加者の数も過去2回の大会を大きく上回る90名に達するなど(第1回ワシントン大会が43名、第2回のブリュッセル大会が55名)、塩ビのリサイクル問題に対する関心と熱意が「3極会議」という枠を超えて、全地球的な規模にまで広がりつつあることを強く実感させる大会となりました。

 

塩ビ協の佐藤会長が所信表明

  会議は、3極を代表して塩化ビニル工業協会ならびに塩化ビニルリサイクル推進協議会の佐藤彰夫会長(三井東圧化学社長)、米塩化ビニル協会(VI)のペイセント会長、欧州塩化ビニル製造者協会(ECVM)のプレスカ会長が所信表明を行った後、各国の塩ビのリサイクルの現状や技術開発に関する報告、および全体討議という日程で進められました。このうち、佐藤会長は挨拶の中で、「日本における塩ビのリサイクルについては、通産省の方針に沿ってサーマルリサイクルを中心とした様々な技術開発が進められているが、こうした取り組みと同時に、塩ビへの誤解を解消するための広報活動の重要性もますます高まってきており、今後は国際間の情報の交換が不可欠である」と日本側の姿勢を説明して各国の共感を集めました。
 

 

高まるサーマルリサイクルへの関心

  一方、25日〜26日にかけて行われた現状報告と全体討議では、各国から報告を希望する関係者が25名にもおよび「整理するのに苦労したほど」(事務局関係者)の活況となりました。2日間の話し合いを総合して最も特徴的だったのは、欧米におけるリサイクルの考え方の変化が討議の中ではっはりと示されたことだったと言えそうです。
  「欧米では、従来のマテリアルリサイクル中心の考え方から、サーマルリサイクル(焼却、油化)に対する理解、認識が確実に高まっており、現実的な方向への転換が進んでいる。このため、会議では日本の先進的な取り組み、例えば塩化ビニルリサイクル推進協議会の調査研究などに対しても高い関心が示された」(日本の参加者)。会議終了後に行われた東京都有明清掃工場の見学会でも、こうしたサーマルリサイクルへの関心を反映してか、参加した欧米の関係者の間からは都の職員に対して熱心な質問が飛び交っていました。

 

情報センターの設立構想で合意

  また、3極共同で情報センターを設立する構想が合意されたことも、今回の大きな成果のひとつと言えます。この構想は、情報交換による3極の協力関係強化の必要性、あるいは科学的根拠のあるデータを社会にアピールすることの重要性などに対する認識から生まれたもので、「PVCの生産からリサイクルに至るすべての側面に関わる世界的な情報センター」の設立構想が、今回の共同コミュニケの一項として明記されました。
 
  会議は、最後に上記の情報センター構想などを含む7項目におよぶ共同コミュニケを採択した後、次回の開催地をカナダのトロントとすることを決定して閉会しました。共同コミュニケの内容は以下のとおりです。

 

第3回「塩ビ3極会議」共同コミュニケの内容

 1.参加者は、塩化ビニル製品が半世紀以上にわたり、住宅・建設分野、輸送分野、包装分野、安全衛生分野およびその他数多くの分野で使用され、人々の生活を豊かにし、社会の発展に貢献してきたことを誇りに思っており、今後も塩化ビニル製品がその役割を十分に果たして いけるものと確信した。
 
 2.参加者は、そのライフサイクルを通じて既に環境に優しいビニル(ポリ塩化ビニルまたはPVCとも呼ばれるが)をさらに改善するために、科学的な取り組みによってPVCの環境 的性能の向上を図るとともに情報を収集し、関係政府機関とかかる情報を共有することを誓 い合った。
 
 3.参加者は、PVCリサイクルの急速な進歩を認識し、メカニカルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル等、あらゆる種類のリサイクル技術について既に行っている情報交換を継続し、また拡大するとともに、全世界に亙ってこれら技術の育成に努めることを誓い合った。
 
 4.参加者は、廃棄物中のPVCを焼却してエネルギーを回収・再利用したり、プラスチックの熱分解によって油を得る等、多くの場合にサーマルリサイクルが効果的であることを確認 するに至った。この分野については、なお一層の開発努力を続けていく必要がある。
 
 5.参加者は、PVCのリサイクルにとって望ましい方法はそれぞれの国および地域における 実情と廃棄物処理形態に依存するものであることを表明した。社会はそのニーズをみたす幾つかの選択肢を与えられるべきであり、経済性のみならず環境に及ぼす影響も考慮しなければならない。しかしながら、今日人類が直面している主な廃棄物処理問題の解決には、市民、政府および業界の間の相互協力と、リサイクルに関わる費用を社会の中で公平な方法で分担することが求められる。
 
 6.参加者は、社会の要求をみたすPVCの継続的な成長とその重要性を認識し、21世紀におけるPVCの役割、特に来るべき四半世紀における住宅、インフラストラクチャー、輸送および情報システムに対する社会のニーズをみたすために不可欠な技術の開発に対する努力を一層尽くすことを誓い合った。
 
 7.参加者は、以上について一層の協力関係を推進すべく、PVCの生産からリサイクルに至るすべての側面に関わる世界的な情報センターを設立する意図があることについて合意した。
 
  第4回塩ビ3極会議は1995年秋にカナダ国、トロント市で開催することを決定した。
 
 1994年10月26日