2020年3月 No.109 

インフォメーション 3

首都高速道路サービス㈱の「HATARAKU TOTE」

高速道路のターポリン横断幕をリサイクル。
世界にひとつのデザインバッグ

写真
『TALL』タイプのバッグ
写真
 

 「HATARAKU TOTE(はたらくトート)」は、首都高で使われた告知用の横断幕をリサイクルしたオリジナルデザインバッグ。発売から10年、今もコンスタントな人気を維持し続けているのは何故?企画・販売を担当する首都高速道路サービス㈱(大西英史社長;本社 東京都中央区。以下、首都高サービス)で、お話を伺いました。

魅力的なデザイン。丈夫で雨にも負けず

 意表を衝く漢字や記号の図柄、大胆で見栄えのする色彩のコントラスト、そして、さりげなくファッショナブルなシルエット。ひと目見ただけで「使ってみたい!」という気持ちになる魅力的なデザインです。何より、そのひとつひとつが世界にオンリーワンの1点もの。ちょっとしたキズやシミも、他にはない個性の証です。
 もちろん、見るべきはデザインだけにあらず。ターポリン製(ポリエステルの基布に塩ビをコーティングした素材)だけに、丈夫で長持ち、雨にも負けない撥水性の良さは折り紙付き。しかも、デイリーユースに便利なバツグンの収納力。手作りのデザインバッグなのに値段も手頃(5千円〜9千円代)とあれば、流行に敏感な若者や女性が注目するのも頷けるところです。

写真:横断幕がトートバッグに
横断幕がトートバッグに

首都高速道路サービス㈱

 首都高速道路㈱のグループ会社として、2006年に設立。首都高管轄内の高架下駐車場やPA(パーキングエリア)の運営をはじめ、フードサービス、不動産、物販などの事業を展開している。  横断幕のリサイクルトートバッグは、物販事業の中で扱われている商品で、同社の通販サイト「首都高みやげ」(https://www.shutokomiyage.jp/)では、そのほかにも、標識をリサイクルしたキーホルダーなど、エコで楽しい商品がラインナップされている。

「もったいない」の思いにROOTOTEが賛同

 「HATARAKU TOTE」が発売されたのは2010年の10月。開発の経緯について、企画部事業開発第一課の高橋秀樹課長は次のように説明します。
 「高速道路では、横断幕を使って日々道路案内や通行止めなどのお知らせを行っているが、これらの横断幕は、役目を終えると廃材になってしまう。その数は年間800枚程度。ターポリン製の非常に丈夫な素材なのに、あまりにもったいないということで何とかリサイクルしたいという思いがあった。具体的に動き出すきっかけとなったのは、親会社の首都高速道路㈱(以下、首都高)で2009年にスタートした新規事業の社内提案制度。この中で、ある技術職の社員から『横断幕でバッグを作ってみてはどうか』という提案があり、そこから実際の取組が始まった」
 とはいえ、開発当初は苦労も多かった様子。首都高事業開発部事業管理課の川崎謙介氏によれば「初めての経験だったので、当初はどこに相談してもバッグの作り方が分からない。そこで開発チームを作り、各メンバーが様々なバッグメーカーに出向いて提案を行った。一番苦労したのはこの時期。結局、トートバッグの専門ブランドROOTOTE(ルートート。当時の社名はスーパープランニング)が賛同してくれたので、ライセンス契約を結び、ROOTOTEとのコラボという形で商品化に至った」
 ちなみに、「HATARAKU TOTE」というネーミングは、「旗から生まれた楽しくて働き者のトートバッグ」というコンセプトから生まれたものだそうです。

写真
回収された使用済みの横断幕
 
写真
文字やデザインの面白い部分をカッティング
写真
工業用ミシンで縫製
 
写真
ご協力いただいたた方々。
左から、首都高の高橋課長代理、同社の川崎氏、首都高サービスの高橋課長、同社の潤間氏。

環境施策の成功事例

 横断幕のサイズは用途によって様々ですが、1枚から出来るバッグの数は平均4〜5個。昨年は約300個のバックが作られました。
 「首都高サービスが廃材を集めて、ROOTOTEが製作する、というのが基本的な役割分担。デザインについては、大凡のスペックをこちらで示し、ROOTOTEが提案してくる具体的な形を基に相談しながら決める。これまでに2回モデルチェンジを行っており、現在はTALL(P14冒頭左端の写真)、2WAY(上の写真)の2タイプを展開している」(首都高サービス企画部事業開発第一課の潤間あゆみ氏)
 製造工程は、まず横断幕のメンテナンス会社から廃材を回収→リサイクル適合品の選別(汚れや損傷のひどいものを除く)→洗浄して工場に搬入→裁断(カッティング)→縫製、というのが主な流れ。丈夫な生地なので工業用ミシンで縫製します。
 「新規事業の社内提案は今も毎年行われているが、事業化されるものはそう多くない。その中で10年も続いているリサイクルバッグ事業は、環境施策としても成功した事例のひとつと評価できる」(首都高事業開発部事業管理課の高橋紀了課長代理)
 「HATARAKU TOTE」は、通販サイト「首都高みやげ」、ROOTOTE代官山ルーストリート店などで販売中です。

写真
リュックとしても使える『2WAY』タイプ