2020年3月 No.109 

インフォメーション 1

テントの新トレンド。
ゴトー工業㈱の防災関連製品

防災/医療用テントと防災用トイレの2シリーズ。
注目製品目白押し

 防災、医療、省エネ、遮熱-今、テントの世界に新たなトレンドが。埼玉県川口市に本拠を置き、多彩な製品を開発し続けるゴトー工業㈱(後藤陸社長)の取り組みから、テント開発の最新動向をご紹介します。

写真:緊急医療用・住居用テント「防災パック」
緊急医療用・住居用テント「防災パック」
写真:「みんなでトイレ」男性用(7人用)
「みんなでトイレ」男性用(7人用)
写真:テント内側の小便器
テント内側の小便器

重要性高まる防災製品の開発

 「社会の状況や人々の価値観の変化に伴って、企業に求められる役割も変わってくる。創業以来75年、当社では時代のニーズに応えて様々なテントを開発してきたが、災害や環境変化への危機意識が高まる中では、従来のイベント用だけではなく、防災分野の製品開発がますます重要になっている」(後藤社長)
 現在、同社が展開する防災対応製品は、防災/医療用テントと防災用トイレの2シリーズ。まずは、その主なラインナップを見ていくこととします。

初の防災製品「防災テント(多目的)」

 平成18年に発売した「防災テント(多目的)」は、同社が防災分野に取り組むキッカケとなった製品。「災害発生直後のパニックを回避するには、プライベートな空間の確保が不可欠」との考えから開発したもので、災害・緊急時の避難用住居用として、さらには負傷者の応急救護所として多目的に活躍します。生地もアルミのフレームも軽量で組立てやすい構造、明り取り窓を付けた居住性と、数日間の緊急避難用して必要十分な設計になっています。
 「防災パック(医療/住居)」は防災テントのグレードアップ型。横桁パイプを無くすことで、室内空間を最大限活用できるようにした緊急医療用・住居用テントです。組立簡単な一体型フレーム、雨水の浸入を防ぐ四方立ち上げ式の床シートなどの工夫もポイント。断熱材入りの保温タイプと通常タイプの2種類があります。
 このほか、テント内の支柱を無くし大きなスペースを確保することで、避難用だけでなく、対策本部としても活用できる「大型避難用テント」(シートは防炎認定品)、エアブロワーで支柱を膨らませ、たった3分で完成する除染・医療用の「エアーテントX」、ODA、JICAなどの支援物資として納入実績がある応急住居・医療用テントなど、注目すべき製品が目白押しです。

写真:プライベートな空間が安心を生み出す「防災テント(多目的)」
プライベートな空間が安心を生み出す
「防災テント(多目的)」
写真:空気を入れて3分で完成。「エアーテントX」
空気を入れて3分で完成。
「エアーテントX」
写真:対策本部としても活用できる「大型避難用テント」
対策本部としても活用できる
「大型避難用テント」

ゴトー工業㈱

 昭和20年、㈲後藤製作所として事業をスタート(法人化は昭和33年。58年現社名に変更)。川口市の地場産業である鋳物を使用した「日除け巻上機」の製造を皮切りに、チェーン巻上機の製造などにより事業を拡大した。昭和54年テントの製造に進出し、日本初の組立式テントを開発。平成18年、災害時の緊急避難用「防災テント」を発売して防災分野への取組みをスタートして以降、平成23年の集合仮設トイレ「みんなでトイレ」など意欲的な開発を続ける。

日本で唯一の公衆仮設トイレ

 一方、防災用トイレは東日本大震災を契機に開発されたもの。「テントメーカーとして何ができるかを考えた時、最も望まれるのがトイレだと思い付いた。当時1人用の仮設トイレはあったが、実際の避難現場を考えると、大人数が効率的に使えるトイレでなければ役に立たない」(後藤社長)。
 ということで平成23年に発売されたのが、日本で唯一の公衆仮設トイレ「みんなでトイレ(集合用)」。男性用、女性用それぞれ7人用と15人用があり、男性用は内側の横幕に小便器を設けているのが新案(冒頭の写真)。一回使い捨ての吸水式トイレ袋を使用する衛生設計、高齢者や車いすにも配慮した安全設計などで、地元川口市をはじめ自治体の需要が増加しています。
 このほか、パパッと開けばどこでもトイレが出来上がる「パパッとトイレ(男性用)」、コンパクトサイズの個人用トイレテント「パーソナルトイレ」、などもラインナップされています。

エコ対応製品も進化中

 こうした多彩な製品を生み出し続ける背景に、同社の卓抜な開発力があることは言うまでもありません。そのことを物語る恰好のエピソードが、昭和54年の組み立て式テントの開発。パイプと接続部品をその場で組み合わせて簡単にセットアップできるこの製品は、同社が業界で初めて実現したもので、当時を知る後藤喜与治会長によれば「従来の溶接式に比べて大量生産が可能になったこと、また支柱を伸縮式にしたことで地面の凹凸に適合して設営できるようになったことなどで、製造が間に合わないほど大ヒットした」といいます。

写真:後藤会長
後藤会長
写真:後藤社長
後藤社長

 また、平成14年発売のベランダオーニング「ニューサンアクターR」は、同社のエコ対応の先駆けとなった遮熱・省エネ製品ですが、平成30年には、その進化形と言える「シェードフレームテント」を発売。風を受け流す独自のヒネリ構造(ハイパボリック形状)でバタ付きを抑え、街中に安全な日陰を確保するこの製品は、新しいエコ商品として今後の成長が期待されます。
 後藤会長は「防災や環境に取り組んできたお陰で、最近は国の仕事も多い。そういう仕事を積み重ねていくことで、業界に新しい風を吹かせたい」と語っています。

写真:シェードフレームテント
街中に安全な日陰を生み出す
「シェードフレームテント」