2018年11月 No.105
 

押出成形の老舗潟Jツロンの安全製品

工事現場や医療・介護施設、交通機関など、
身の回りで息づく多彩な製品群

パイプクッション
カツロンの多彩な押出製品群。
左下のレンコン型の製品が「パイプクッション」
 プラスチックと安全衛生特集の最後は、プラスチック押出成形の老舗潟Jツロン(石川明一社長、大阪府東大阪市)の登場です。チョコレートの押出成形から樹脂の押出成形に転じたという特異な社歴もさることながら、石川社長の説明を伺いながら強く感じたのは、「ああ、あの製品がカツロンか。これもカツロンか」という発見の驚き。同社の製品は、それほど私たちの身の回りに息づき、ともすると見逃しそうな役割で世の中の安全維持に貢献しているという事実でした。

●安全手すりカバーの開発

■潟Jツロン
 1949年、チョコレートの押出成形からスタート。シガレット型チョコなどのヒット商品を生み出したものの、事業の行き詰まりから、既存設備をそのまま利用して合成樹脂の押出成形に転身。散水用のホース、フラフープなどの塩ビ製品を皮切りに、成形技術の革新を進めながら、本文に見るとおり数々ヒット商品を生み出してきた。
 現在は塩ビ、ナイロン、ウレタンなど熱可塑性樹脂を原料に、建築、土木、自動車、医療、アパレルまで、オーダーメイド対応を中心に、全産業分野に製品を供給している。来年で創業70年を迎えるのを機に、営業、製造、開発部門を統合した新本社工場を東大阪市内に立ち上げる計画。
バスの手すりに
バスの手すりに

 押出成形とは、加熱溶融したプラスチックを押出機の金型からトコロテン式に押し出し、金太郎あめのような長尺の製品を作る方法で、最後に切断機で必要な長さにカットすることで、同じ断面のものを大量に製造することができます。また、より複雑な形状を成形する方法を異型押出と呼びます。
 カツロンが、初の押出成形品として散水用の塩ビホースを開発したのは1961年(右の囲み参照)。その4年後には異型押出製品の生産もスタートし、第一弾となる安全手すりカバー「パイプクッション」を発売しています。この製品は、断面がレンコン型の二重構造をしているのが特徴で、もともとは井戸水を使ったクーラー(冷風扇)の金属パイプカバーとして開発されたものですが、その後改良を加えて、現在では電車やバスなどの手すりカバーとして広く普及しています。まさに、誰でも一度はお世話になっている製品。
 「ステンレスの握り棒を軟質塩ビでカバーすることで、冷たさや硬さが緩和され、安心感を生み出す。パイプクッションは当社のロングセラー商品のひとつで、後にここから介護・作業現場用手すりなどの進化型が生まれることとなった。異型押出製品としても、公衆電話ボックスや電車のドアパッキン、コンテナのガスケットなど続々と開発が進んだ」(石川社長)

●三次元ハイブリッド製法のインパクト

三次元ハイブリッド成形機
三次元ハイブリッド成形機。製品は横方向に押し出される。
 同社の製品開発の歴史を語る上で重要な意味を持つのが、同社を含む東大阪の異業種交流グループ・ギアテックが開発した三次元ハイブリッド製法の導入です。「この製法は、押出成形と射出成形(加熱溶融した樹脂を金型内に射出注入し、冷却・固化して成形する方法)の長所を融合したもので、縦横二次元の断面を成形するだけの一般の押出成形に比べて、凹凸などの緻密な立体形状をエンドレスに成形できる画期的な技術です」(同社営業部の荻野大輔次長)。
 三次元ハイブリッド製法の導入は、その後の次世代型製品開発に大きなインパクトを与えることとなりました。以下にその代表的な製品をピックアップします。

●作業員や高齢者の安全を守る次世代型製品

ラクラクロード   キュービックチューブ   ウエーブ手すり

ラクラクロード

キュービックチューブ

ウエーブ手すり

石川社長
石川社長
【ラクラクロード】
 1996年に、三次元ハイブリッド製法の第1弾として開発された歩行者用マット。細かい突起で作った凹凸が優れた滑り止め効果を発揮し、工事・作業現場や公園、学校等の保安用品としてヒットした。
 「脳出血後のリハビリ中だった父(石川宏会長)が、健康サンダルのような突起のあるマットを押出加工で作ればリハビリに役立つだろうと発想したのが開発のきっかけ。突起をより高くした姉妹品『ヘルシーマット』は、病院や介護施設などで市場を開拓している」(石川社長)

【キュービックチューブ】
 「パイプクッション」にはじまる手すりカバーの進化型。2010年の開発。ダイヤ型の凹凸が美しい立体感を表現し、握った時に馴染み感、安全性が高い。難燃性も付与されており(自動車内装難燃試験適合)、東京の都電荒川線の車両、大阪南港ポートタウン線のニュートラムなどに使われている。

【ウエーブ手すり】
 進化型手すりカバーの第2弾。2011年の開発。一般のストレート手すりと異なり、25p間隔で竹のような節を付けた製品。「節の部分が握りやすいため、お年寄りが階段を上り下りする時や、歩行困難な方が車いすでスロープを移動する時など、少ない力で体を支えることができて、疲労が少なく安心感がある」(大島太朗営業課長)。

大島課長
大島課長
荻野次長
荻野次長
「プラスチックのフィールドは非常に広く、まだまだ新たな分野を確立することが可能。昔ながらの押出成形も維持しつつ、新しい技術でこれまでにない製品を開発し、新たな市場を作っていきたい」(石川社長)
 塩ビ以外でも、PP、PEのリサイクル材を使った公園等の緑化対策用マット「ターフパーキング」、オレフィン製の点字タイルなど、カツロンの安全製品は注目アイテム目白押しです。