2015年6月 No.93
 

創業60年、光洋ビニールの塩ビリサイクル事業

塩ビの工場スクラップを回収、多彩な技術でシート・マット等にリサイクル

 今回訪れたリサイクルの現場は、プラスチックリサイクルのメッカ・大阪でおよそ60年にわたって塩ビの再生加工に取り組む光洋ビニール(金沢辰男社長/大阪市生野区小路東4丁目3番22号、電話 06-6754-4690)。塩ビのスクラップに新たな命を吹き込む独自技術の多彩さ、そして顧客のニーズに徹底して応えようとする経営姿勢が印象的です。同社の金沢泰勲専務にお話をうかがいました。

●たゆまざる技術研鑽の成果

若き後継者、金沢専務

 光洋ビニールの創業は昭和33年。金沢専務の祖父・金沢清志氏が塩ビのスクラップを集める会社を起業したのがはじまりで、以来57年にわたり塩ビの加工・リサイクル製品の取り扱いひと筋に事業を展開してきました。金沢専務によれば「大阪にはプラスチックの加工をやっている会社はたくさんありますが、塩ビだけを扱っているのは珍しく同業社の数も減ってきている」とのことです。
 同社の主な事業内容は、大阪近郊の塩ビ製品メーカーから出る工場端材を引き取り、リサイクルシートやリサイクルマットに再生加工する、ということになりますが、注目すべきはその多彩な加工技術。バリエーション豊かな凹凸柄の押し模様を入れるエンボス加工、不織布や綿布と貼り合わせたりするラミネート加工、タガネ(型)を使って様々なサイズ、デザインを形にする打ち抜き加工、さらにはロール状のシートなどを指定のサイズに正確にカット(輪切り)するスリッター加工といった高度な技術の蓄積が、競合他社が多かった大阪市で半世紀以上に及ぶ事業継続を可能にした最大要因といえます。
 「指定した厚さのマットがほしいとか、塩ビと綿布をラミネートしたい、塩ビ製品にエンボス加工をしたい、あるいはコストダウンをしたい、自分で上手く加工できないので信頼できる業者に頼みたいなど、お客様のニーズは多種多様。当社では、そうしたニーズに対応するため怠らず誠実に技術を磨いてきました。当社の製品は大阪府の認定を受けたエコ商品であり、そうした環境性能もお客様の信用に繋がっていると思います」

「大阪府リサイクル製品」に認定

 光洋ビニールの製品(デスクマット、養生シート、養生マット)は、大阪府の「大阪府リサイクル製品」に認定されています。
 この制度は、循環型社会の形成に寄与する事業者を育成するため、主として「府内で排出された循環資源を日本国内のプラントで再生した製品」を対象に、循環的な利用の促進に特に資する製品を認定するもの(認定基準は「循環資源使用率、JIS規格等への適合、有害物質の不使用」など)。認定を受けた製品は府のグリーン調達方針に基づく率先購入の対象となります。
     
  リサイクルシート   リサイクルマット   デスクマット
     
ビニールレザー   エンボス加工   打ち抜き加工   スリッター加工

●1次加工から4次加工まで

ラミネート加工してリサイクルマットを製造。三層の製品の場合、表面に要望どおりの色のシート、中地・下地に厚みを出すためのシート(下地には裏面の柄を活かす場合もある)を貼り合わせる。エンボス加工は、貼り合わせるさい、同時に押し模様柄をつける

様々なデザインを自在に形にする打ち抜き機

 同社の製品づくりは、1次加工(リサイクルシートの製造)→ 2次加工(リサイクルマットの製造)→ 3次加工(打ち抜き、スリッター加工)→4次加工(各種製品)という流れで進められます。
 1次製品のリサイクルシートは、工場端材を熱で溶かし、薬品と顔料を少量添加して練り直したもので、それ自体イベント用のフロアシートや建築現場の養生シートなどに利用されますが、2次加工以下の素材にもなります。面白いのは、このリサイクルシートについてのみ製造を外部の協力業者と提携していることで(自社工場に保管してある端材を、必要に応じ協力業者に持ち込みシートを製造委託する手法)、この方法により顧客の求めるコストダウンに対応しています。
 2次製品のリサイクルマットは、1次製品のシートをラミネート(熱圧着)して厚みを増し、エンボス加工などを行ったもので、厚さは0.5mm〜5mmまで調整可能。養生マットとして建築・工事現場や工場内で使用されるほか、型抜きして学習・業務用のデスクマットやマウスパッド等に加工されます。
 また、特殊加工すれば、鞄などの裏地等に使用するビニールレザーの素材にも生まれ変わります。

●既存の枠組みにとらわれない新製品開発

様々なエンボス柄を施した塩ビマット

 昨年からはPVC next(大阪の若手塩ビ加工業者が組織するアクショングループ)にも加入したという金沢専務。「若手経営者として会に参加し、同じプラスチック加工業者と横の繋がりもできました。経営や製品開発などについて、いろいろと情報を得られるようになったことはとてもよかったと思います」とのことで、「今後は既存の枠組みに捉われない新製品の開発や、自社ホームページ(http://www.k-koyo.com/)での注文依頼の強化などに取り組みたい」と、意気込みを示しています。
 新たな試みとして製作された、さまざまなエンボス柄を施したハート型の塩ビマット(右の写真)は、そんな意気込みの表れと言えそうです。