2014年3月 No.88
 

「アンビエンテ2014」にソフトPVCの<awa>出展

ジャパンクリエイティブのプロジェクト。
日本のものづくりと 海外のデザインがコラボ

写真:Japan Creative photo by Nacása & Partners
 2月7日から11日まで、ドイツのフランクフルト国際見本市会場で開催された「アンビエンテ2014」に、ソフトPVCを素材にした作品<awa>が出品されました。一般社団法人ジャパンクリエイティブのプロジェクトとして、フランス人建築家のデザインを塩ビ業界が作品化したもの。日本のものづくりと海外のデザインがコラボレーションした貴重な成功事例といえます。

●世界最大級の消費財見本市

白を基調にしたプロジェクトブース

 アンビエンテ展は毎年2月にフランクフルトで開催される世界最大級の消費財見本市。毎回、家具・インテリア、ファッション雑貨、ギフトなど、生活を彩るさまざまな製品を一堂に集めて、世界各国のメーカー、商社、デザイナーなどが最新情報の発信や商談などを繰り広げます。
 5日間で14万人超の来場者が押し寄せた今回は、約33万uという広大な会場に89カ国がブースを出展(計4724ブース)。特に欧州以外の国で初めて日本がパートナーカントリー(一国に焦点を当て、その国のライフスタイルや出展企業への注目を高める特別企画)となったこともあって、100以上の日本企業・団体が出展して、日本のものづくり力、デザイン力を世界にアピールしました。
 そのひとつが、ソフトPVCの〈awa〉を展示したジャパンクリエイティブのブース。ジャパンクリエイティブは、日本人の優れた美意識と伝統に根ざした技術を新たな視点で創造・提案していくことを目的に、日本のものづくり力と国内外トップデザイナーとのコラボレーションによる作品制作プロジェクトなどを展開している組織で、今回のアンビエンテ展には、〈awa〉を含めて計9つの「マニュファクチュア×デザイナー」プロジェクト作品を出展しています。

●素材の柔らかさと透明感でシャボン玉の虹色を表現

〈awa〉のデザインを担当した
エマニュエル・ムホーさん 

 〈awa〉の制作プロジェクトは、塩ビ工業・環境協会(VEC)に対して、ジャパンクリエイティブからソフトPVCを用いたプロジェクトの提案が寄せられたことを受けてスタートしたもので、同団体の活動の主旨が、VECをはじめソフトPVC関連団体が主催している「PVC Design Award2013」のテーマ「ソフトPVCで日本の力をためす」とも重なることが取り組みの大きな動機となっています。
 日本で活躍しているフランス人建築家エマニュエル・ムホーさんがデザインを、第2回「PVC Design Award」(VECをはじめソフトPVC関連団体が主催しているデザインコンテスト)で大賞を受賞した(株)三洋が製作を担当しており、両者を中心にソフトPVCの特徴などを考慮しつつ検討を重ねた末、「柔らかな色調のソフトPVCシート14色を用いて、異なるサイズの五角形24個を1ユニットとして、182ユニットを高周波溶着でネット状につなぎ合わせる」という製作テーマを決定。三洋のほかにも加工協力にスズキ産業(株)、シートの製作にオカモト(株)、アキレス(株)、パーツの加工(10o幅のテープにカット)に(有)紅日ビニール工業所の協力を得て、いかに薄く巾の狭いフィルムを五角形に溶着させるか、展示設営の際に各ユニットを変形しないように繋ぎ合わせるかなど、ソフトPVCの新たな可能性を追求しつつ作品づくりが進められました。作品名〈awa〉は、素材の柔らかさと透明感でシャボン玉の虹色を表現していることから命名されたものです。

 

▲五角形のパーツ182個を繋ぎ合わせている。

◀メディアからも熱い注目が集まりました

 今回のプロジェクトについて、現地で展示の模様を視察したVECの一色実広報部長は、「期間中、ジャパンクリエイティブのブースには多くの海外ビジターが訪れ、ハースト婦人画報社のELLE DÉCOR誌が取材したり、exeite.ismが現地レポートで作品を紹介するなど、メディアからも熱い注目を集めた。今回のプロジェクトは短期での製作にも関わらず、関係者の熱心な取り組みと連携で実現したもので、伝統的な織物、陶器、鋳物等と並んで、プラスチックの中ではじめてPVCが取り上げられたことはとても嬉しい。この作品は、将来パーティションやファッショングッズ等への展開が考えられる。その過程で色々な課題が出てくると思うが、日本のものづくりと海外のデザインのコラボレーションの成功例として、ぜひ大きく育っていくことを願っている」と期待を示しています。

Heart Art in TOKYO 2014 −蓄光性塩ビ和紙の複合作品などを特別展示−
 
仄青く輝く百鬼夜行図(部分、上)   桂堂玄定氏

 一般社団法人Heart Art Communication(H.A.C.)が主催する第17回エイズチャリティー美術展が、1月13日から2月3日まで東京六本木の国立新美術館で開催され、壁紙や和紙などを販売する光心堂(京都市上京区)の桂堂玄定氏が蓄光性の和紙を使った作品を特別展示。
 桂堂氏は、特殊な蓄光素材を用いて和紙に漉き上げた淡光紙の開発者で、「PVC Design Award 2013」にも製品応募しています。今回展示したのは、大徳寺真珠庵の百鬼夜行図を模写した作品や、満天の星座図、草むらに戯れるスズメ、さらにはシェードに塩ビ和紙の淡光紙を使った照明器具など。中でも、塩ビペースト樹脂に蓄光素材を分散させ、和紙の表面に塗布した百鬼夜行図は、一筆で巧みに描かれた鬼たちが仄青い灯の中で踊っているような錯覚を起させ、来場者も興味津々の様子。
 「淡光性の塩ビ製和紙を使った照明器具は、災害時の停電などのときに非常灯がわりにして避難を助けることができます」(玄定氏)とのこと。この技術、既存の塩ビの世界に新たな分野を切り開きそうです。