「Ori美」であそぼ ！

軟質塩ビシートがキラキラ「おりがみ」に。その多彩な魅力と可能性

これってホントにおりがみなの？何で光ってるの？女子美術大学の学生・春原けいさんが考案した塩ビおりがみ「Ori美」の世界を紹介する「ジュエリーおりがみ〜きらきらおもちゃで遊ぶ」が、７月31日〜８月31日まで、東京文京区の「おりがみ会館」で開かれ話題を集めました。軟質塩ビシートが生み出す驚きの「おりがみ革命」。その魅力と可能性を、関係者の話から徹底解剖。

●「PVC Design Award 2012」特別賞受賞作品

Ori美を考案した春原さん

　「おりがみは日本で生まれた遊びの文化。支倉常長の慶長遣欧使節団（1613年）が初めてヨーロッパに伝えてから、ドイツやフランスなどでも独自に発達したといわれています」（お茶の水おりがみ会館・小林一夫館長のお話）。
　その日本伝統の紙細工の世界に新風を吹き込んだ春原さんは、女子美術大学デザイン・工芸科でプロダクトデザインを専攻する４年生。昨年の「PVC Design Award 2012」（塩ビものづくりコンテスト）に、東日本プラスチック製品加工協同組合との産学協同作品としてOri美を出品し、軟質塩ビの特徴を巧みに生かした新鮮なアイデアが高く評価されて特別賞を受賞しています。
　今回の展示会は、夏休み中のこどもたちにOri美の楽しさを知ってもらおうと企画されたもので、草花や動物など彩り鮮やかなOri美作品約20点を集めた会場では、「きれいだね」「シートはどこで売ってるの」「私もやってみたい」などと、興味津々の表情で作品を手に取るこどもたちの姿が見られました。

●新鮮だった軟質塩ビとの出合い

春原さんが今回の展示会用に試作した塩ビシートの切り絵。これも鮮やか。
（上）関係者のみなさん。左から小林館長、春原さん、東プラ加工協同組合・加藤事務局長、日本ビニル工業会・鈴木部長 （右）Ori美用塩ビシートのグリッド

　春原さんは、「PVC Design Award 2012」に応募するまで「デザインの素材として塩ビを意識したことはなかった」といいます。
　「大学に協同組合の方がお見えになって『こういうコンテストがあるので出品してみないか』と誘われたのが、軟質塩ビとの出合いでした。見た瞬間、シートの透明感や柔らかさが新鮮で、面白そうだと直感しました。おりがみのアイデアが閃いたのは、こどもが遊べるものを作りたいと思っていろいろ考えていたとき。その後、協同組合から材料と技術を提供していただき、いろいろ相談しながら、Ori美用シートのサイズや規格を決めていきました」

●商品化の期待も

　苦心したのは、折っても元に戻ってしまう塩ビの性質をどう処理するか。この問題は、シートに格子状のグリッドを入れるというアイデアで克服できましたが、協同組合の加藤裕事務局長によれば「シートにグリッドを入れるのは結構難しい技術。下手に入れると破れてしまうので、協力してくれた組合の会員会社が、高周波ウェルダー（熱溶着装置）を使ってすべて手作業で加工した」とのこと。
　若い世代との初めてのコラボは組合にとっても刺激になったようで、加藤事務局長は「Ori美の楽しさが広がっていけばシートの商品化も夢ではない。ものづくりコンテストがビジネスチャンスにつながる可能性がある」と期待を示しています。

●おりがみの大家も太鼓判

　一方、安政５年（1858年）創業、日本ではじめておりがみを製品化したという染紙業の老舗�鰍艪ｵまの小林の社長でもある小林館長も、「おりがみの素材に塩ビを使ったのはとても面白い。切り口が光る蛍光シートを使うとか、今後いろいろ工夫を重ねていけばもっと面白くなるんじゃないですか」と太鼓判を押します。
　既にリフォーム会社への就職が決まっている春原さんですが、「グリッドの大きさを変えるとか、Ori美について試してみたいことはまだまだあります。それと、おりがみだけでなく、ランプシェードみたいな人々の生活に彩りを添える作品も作ってみたい」と、塩ビとの付き合いはまだ当分続きそうな気配。
　９月には岐阜県羽島市の淺野モオムギャラリーでも「Ori美」の展示会が開かれました（21日〜27日）。

�@お茶の水おりがみ会館の外観。おりがみ教室などが毎日開催されています。 �AOri美の手裏剣投げゲームもこどもたちの人気を集めました。�Bバラ、ひまわり、はすの花、船、小箱、ペンギン、犬、扇など、多彩なOri美の数々。