2013年6月 No.85
 

リサイクルを商う─フジ化成(株)の35年

塩ビ端材を買い取り、再生原料として販売。守り続けたビジネスモデル

 塩ビ製品の工場から出る端材を有価で引き取り、ぺレットなどに加工して再生原料として販売する─廃棄物処理ではなく、あくまで「商売として成り立つリサイクル」にこだわり続けてきたのが、フジ化成(株)(本社 愛知県豊橋市豊清町字比舎古1-187/TEL 0532-41-6028)。自社はもちろん、加工メーカーも販売先の会社も満足させる塩ビのリサイクルビジネスとは─。

●価値ある資源を売買する

藤本輝雄会長

 「私がこの仕事を始めた頃は、資源の有効利用とか環境問題といった意識は殆どなかったんです。ただ、工場から製品のバージン端材がたくさん出てくるのを見ていて、こんなに素性のいいものを捨てるのはもったいない。これを再加工して欲しがるところに販売すれば商売になるんじゃないかと興味を持ったのが、すべての始まりでした」と語るのは、フジ化成の創業者である藤本輝雄会長。
 以前から塩ビフィルムメーカーなどの運送業務に携わっていた藤本会長が、工場端材の商品価値に着眼して、フジ化成を知人と共同設立したのは昭和53年5月(当初の社名は(株)ヤマモト。平成18年10月からフジ化成(株)に改称)。
 「廃棄物を処理するんじゃない、価値のある資源を売買するんだという考えだから、原材料となる工場端材(塩ビフィルムや農業用ビニルなど)は初めっから有償で引き取りました。今もそれは変わりません。そうやって仕入れた原材料を丁寧に再生原料に仕上げて販売するというビジネスモデルを、うちは35年間ずっと守り続けてきたのです」
 大手樹脂メーカーから高品質の原材料が入ってきたこともあって、同社の再生原料は床材のバッキング層や自動車のダッシュボードの遮音シートなどに幅広く利用され、事業は順調に進んでいきました。

●ウイン・ウインの取引

藤本孝之社長

 環境問題が急速な高まりを見せた昭和の末から平成にかけて、同社の事業にも変動期が訪れます。「新しい業者の参入が増えて原料の争奪戦になったのです。価格競争で省力化、省人化を迫られ、生き残るためには製品に付加価値を付ける必要があった。うちがペレット化に着手したのは昭和62年頃から。日本でも最初のほうだったと思います」(藤本会長)
 現社長の藤本孝之氏(藤本会長のご子息。社長就任は平成23年)が入社したのはこうした変動期のさ中のこと。以後、環境対応や工場のシステム化などの面で同氏が大きな役割を担っていくことになります。
 「ぼくが会社に入った頃、世の中はバブルが弾けて景気が悪化、販売先の生産が縮小する一方、環境問題への関心もさらに大きくなっていました。重金属の有無などペレットの中身にも厳しい目が向けられるようになり、当社でももっと販売先の要望を汲み取って中身のデータもきちんと公開していくといった対応が求められました。例えば、エコマークを取得(一定量の再生原料使用などが取得条件)するために、初めて再生原料を扱うようなメーカーには、事前に材料分析を行うなどして品質を保証した上で、うちのペレットを使えば製品の品質を安定させ、配合コストも下げされることを納得してもらう。そういう形でお互いの本音を出し合い、ウイン・ウインの取引をしたいと思って事業を進めてきました」(藤本社長)

●新しいビジネスモデルへの挑戦

塩ビペレットの製造ライン

 現在、同社の年間取扱量は塩ビを中心にポリエチレン、ポリプロピレンなどを含め約1万トン。うち約8割が塩ビとなっていますが、リーマンショック以降、国内の塩ビ製造量の低迷や、加工メーカーの製造拠点の海外移転が進んだことなどで、原材料が集りにくい状況が続いているといいます。
 「不当な高値で原材料を買い取り海外へ流すバイヤーも横行している。原材料の取り合いの中で、うちが加工メーカーにアピールできるポイントは、資源を有価で引き取ってきちんとした設備で再生原料を作る『製造者』なんだということ。そのためには大型集塵機の導入などクリーンな工場作りも重要です。こういう点で勝負しないと悪質なバイヤーとの価格競争になってしまう」
 同社では、原材料不足に対応して仕入れの範囲を九州、北関東あたりまで広げるといった対策のほか、海外の加工メーカーから仕入れることも検討中で、藤本社長は「海外の業者でもきちんと話ができる所であれば、その材料を使える可能性がある」として、近く北米視察に出かける予定。
 もうひとつ注目されるのは、リターン加工・リペレット加工という新たなリサイクルの提案です。これは、加工メーカーから工場端材を預かって、ペレット加工した後、再びそのメーカーに再生原料として納入するという仕組みで、いわば個別対応型のクローズド・リサイクルとでもいうべき試み。原材料不足という逆境の中で、新しいビジネスモデルへの挑戦が始まっています。

●農ビのリサイクルを進めたい

 最後に、藤本会長が「余生を掛けた運動にしたい」とまで意気込む問題についてお話を伺いました。
 「農ビのリサイクルを進めたいんです。農ビは張り替えのときにそっと外せば殆どそのままで使えるのに、みんな地面に落として泥まみれにしてしまう。それで処理費が嵩んでリサイクルが進まないのです。安価で加工しやすい塩ビはリサイクルに適した素材。無駄なコストを掛けずにリサイクルを進めるために、農ビの交換は丁寧にと農家や農協に呼びかけているところです」

塩ビの工場端材(写真左)が高品質のペレット(中央)に生まれ変わる。右端の写真は製品を袋詰めするフレコン設備