2012年9月 No.82
 

驚き!ルノン(株)のサイクル消臭壁紙

触媒機能で臭いの素を半永久的に消臭。
医療、福祉の現場でも採用増加中

 光も電気も使わずに、悪臭原因物質を半永久的に消臭する─そんな驚きの機能を備えた塩ビ壁紙が、じわじわと支持を広げています。「空気を洗う壁紙®」で話題のルノン(株)(本社:東京都品川区)に、事業の現状を聞きました。

● 悪臭物質を水と二酸化炭素に分解

丸山部長

 ルノン(株)は、今年で創業80年を迎えるインテリア資材の開発・販売会社(1990年、光建産業から現社名に変更)。もともとは和室用の襖紙を主力製品としていましたが、生活様式の変化に対応して1950年代後半から壁紙の販売を開始。現在は取扱品目の約8割が塩ビ系を中心とした壁紙となっています。
 ルノンが、消臭壁紙「空気を洗う壁紙®」を発売したのは2005年のこと。消臭機能を持つ壁紙はそれ以前からも開発されていましたが、同社の製品には他と大きく異なる点がありました。
 「『空気を洗う壁紙®』は、触媒機能を用い、吸着した臭いを水と二酸化炭素に分解、放散してしまうため、半永久的に臭いを取り続けるのです。以前の消臭壁紙は臭いを吸着しても分解機能がないので早期に飽和状態になってしまうのに対し、当社の製品は吸着→分解→再生のサイクル消臭を繰り返します。表面の汚れを拭いても消臭効果は落ちません」(企画本部の丸山誠一部長)
 当初は「室内環境改善として、シックハウス症候群のホルムアルデヒド軽減をセールイポイントに売り出した」といいますが、その優れた機能性が徐々に認められるに従い、現在では、一般住宅はもちろん、全国各地の病院や福祉施設、エステ、飲食チェーンなどの商業施設でも採用する動きが広がっています。

● 特殊消臭剤の働き

 こうした独自の消臭機能を可能にしているのが、壁紙の表面に塗布した特殊な消臭剤の働きです。この消臭剤(「トリプルフレッシュ®」)は、親会社である住江織物(株)(本社大阪)が1998年に開発した薬剤で、はじめ同社がカーテンなど繊維系の製品に使用していたのを、ルノンが壁紙に応用したものですが、「商品化するに当たり苦労したのは、消臭剤を壁紙表面に平均に塗布する技術とバインダー(固着材)の設定に時間がかかり、製造メーカー様の多大なご協力なくしては実現しなかった」(同)といいます。
 「空気を洗う壁紙®」が吸着する臭い物質は、ホルムアルデヒド、タバコの煙に含まれるニコチンやアセトアルデヒド、トイレの臭いに含まれる硫化水素やアンモニアなど8種類。同社が行なった消臭性能実験結果では、濃度による差はありますが、いずれの物質についても数分〜数時間でほぼ完全に消臭可能であることが確認されています(上のグラフ)。
 「ただ、中には苦手な臭いも有ります。分子構造が複雑な芳香族(トルエン、キシレンなど)・線香・香水・芳香剤や、非常に種類が多いカビ臭などは、吸着・分解できないので、その点は今後の研究テーマと考えています」(同)

『空気を洗う壁紙®の消臭メカニズム
「空気を洗う壁紙®」の消臭性能実験結果。特定サイズにカットしたサンプルを500ml容器に入れ、各種の悪臭原因物質を投入して所定時間放置後の消臭率を計測表している。※ニコチンガスのみ、常温での気体濃度安定性に欠けるため異なる試験方法を採用

● 「2011グッドデザイン賞」を受賞

 ルノンでは「空気を洗う壁紙®」の次世代型製品として、「空気を洗う壁紙®クラフトライン」シリーズを発売しています。同シリーズは、塩ビならではの印刷性、デザイン性を生かした落ち着きのある配色とテクスチャが特徴で、現代に求められる「癒し」=ホスピタリティをデザインで表現した製作意図が評価されて、「2011グッドデザイン賞」(公益財団法人日本デザイン振興会が主催する日本唯一の総合的デザイン推奨制度)を受賞しています。
 「『空気を洗う壁紙®』の発売当初は、営業マン全員が消臭キット(アンモニアガスを充填したビンの中にサンプルの壁紙を入れて短時間で消臭体感できるキット)を持って、お客さま一人一人に実際に消臭効果を体感してもらった。軌道に乗るまで時間がかかったが、『グッドデザイン賞』の受賞を含め、ここに来てそういう苦労がようやく実ってきたという手応えを感じている」(同)

● 新機能を追加した製品も続々

「丁寧につくり込まれたテクスチュアと使い勝手の良いカラーシステムが高い評価を得た。表面の繊細なエンボスや深みのある印刷表現により、プリントものでありながら高品位の質感を実現しており、空間の価値を高めることに貢献している」(「空気を洗う壁紙®クラフトライン」シリーズに対する「グッドデザイン賞」の審査講評から)

 クラフトラインシリーズには、汚れが落としやすく表面強度が高い「撥水表面強化タイプ」もあります。他には調湿性を高めて通気機能を付加した「通気性タイプ」、太陽光や照明の光を蓄える蓄光塗料の柄が、消灯後柔らかな光を発する「蓄光タイプ」などが揃っているほか、従来の8物質に汗の臭いや加齢臭、便臭など4物質の消臭性能をプラスした「空気を洗う壁紙®+プラスケア」も、介護現場の環境を和らげるインテリアとして注目を集めています。機能性とデザインのコラボレーションで住空間に快適性を与えるルノンの塩ビ壁紙。この先どこまで進化していくのかが楽しみです。