2011年9月 No.78
 

地下スペースを生かし切る!
金森化学工業(株)の「スマートフォーム」

二重壁工法を超える塩ビ製打込式型枠。軽くて丈夫で、工期も手間も大幅削減

 高価な土地を有効利用する上で地下室は貴重なスペースですが、厄介なのが防水対策。その難題を硬質塩ビパネルを使ってクリアしたのが、プロファイル(異型押出)メーカー大手・金森化学工業(株)(大阪府枚方市)の「スマートフォーム」です。わずか3.2pという驚きの薄さが可能にした地下室有効活用法にご注目を。

●独自の異型押出成形技術を駆使

スマートフォームの構造
<拡大図>

 地下室の防水対策としてはブロック材を使った二重壁工法(外壁の内側に新たな壁を作る工法)が一般的ですが、外壁のコンクリート施工に伴う型枠の組立・解体やブロック積みなどの作業が煩雑で手間が掛かること、壁と壁の間に排水のための空間(30〜40p)を設けなければならないこと、さらには熟練作業者を必要とすることなど、難点も少なくありません。
 金森化学工業の「スマートフォーム」は、型枠と排水とブロック壁の3役を単独でこなすスグレ物。同社が誇る異型押出技術を駆使して成形した硬質塩ビパネルの裏面に特殊不織布を張り合わせた形で、超音波溶着で不織布と外壁を一体化させることにより、壁のひび割れなどから浸入する水を、パネルの内部に作られた溝(導水層)から排水層へと無理なく導く構造になっています。
 しかも厚みはわずか3.2p(幅60p、高さは2mから5.6mまで各種)。このスマートさが、二重壁で必要だった排水空間+ブロックの厚み分のスペースを不要とし、その分地下スペースを有効活用できるという大きなメリットを生み出しているのです。また、強度を確保するための空気層を有する中空トラス構造なので、軽くて耐衝撃性、断熱性能に優れ、工期も手間も大幅に削減することができます。

●オフィスビルや住宅などで着実に普及

松本取締役

 「スマートフォーム」は、同社と機械メーカーの(株)クボタが共同開発したもので、1994年にクボタ「スマートフォーム」として発売された後、2002年には同社がその事業を全面的に継承、2003年からカナモリ「スマートフォーム」として新たなスタートを切っています。
 営業担当の田畑重明取締役によれば、オフィスビルや住宅などを中心に着実に普及が進んでおり、西武球場や東京八重洲の大丸東京店、さらには2013年開館予定の伊勢神宮「式年遷宮記念 せんぐう館」の地下室にも施工されているとのことです。
 「塩ビのよさは丈夫で加工しやすく、コストも安いこと。複雑な異型押出成形品を作るには実に使い勝手がいいんです」と言うのは、同社取締役の松本雅裕業務統括本部長。

金森化学工業の皆さん
(中央が田畑取締役)

 同社のラインナップには「スマートフォーム」のほかにも、東京臨海交通ゆりかもめのケーブル座床(保護カバー)などに使われている大型プロファイルや、建物にやさしい屋上緑化資材「オアシス」など、注目の塩ビ製品が目白押し。その概要は機会を改めてご紹介することとします。