2011年6月 No.77
 

ナショナルマリンプラスチックの「防火水槽保護膜」

塩ビターポリンは水槽膜の防水性・耐震性に最適です

防火水槽保護膜(40トン)
 東日本大震災を契機に、改めて防災のあり方に関心が高まっています。(株)ナショナルマリンプラスチック(時田周明社長、本社東京都品川区)は、60年以上にわたって蓄積してきたプラスチックの溶着加工技術を駆使して、様々な気密製品、防災製品を生産しているメーカー。今回はその中から、塩ビターポリン製の防火水槽保護膜に注目します。

●独自の技術から生まれた防災製品

 本誌では3年前にも同社の「防災型ウォーターフェンス」を取上げたことがあります(No. 64)。アコーディオン式に畳まれた水槽を引き出し、その中に注水するだけで集中豪雨等による浸水被害の防壁に早変わりするこの製品は、都市機能を水害から守る設備として大きな可能性を感じさせるものでした。
 同社の技術の特徴を一言で表現すれば「切って・貼って・包む」。塩ビなどのプラスチックシートを自在にカットして、高周波ウェルダー・熱風溶着・縫製の3つの加工方式の中から用途に適した方法を選び、立体気密製品に仕上げます。今回取上げた防火水槽保護膜もそうした独自の技術から生まれた防災製品のひとつで、ウェルダー成形した塩ビターポリンのシートを防火水槽などの内側に施工することで、水槽の防水性、耐震性を大幅にアップすることができます。水槽膜容量は40トン〜100トンを加工しています。

●既設水槽の耐震補強、震災被災地の復興にも

時田社長

 同社の防火水槽保護膜は、1995年の阪神淡路大震災以降、西日本を中心に広く普及しているほか、コンクリート製品メーカー・ケーコン(株)(本社京都市)の地下埋設型防火水槽(「マリン防火水槽」)に「KCガード」の名で採用され、今年2月26日JRの品川操車場跡地にも施工されました。
 施工作業は至って簡単。予め水槽のサイズに合わせて成形した製品を小さく畳んで⇒施工現場で水槽の注水口から少しずつ挿入した後⇒空気で膨らませ⇒作業員が中で細部の仕上げを行う、という流れで、"畳み目ひとつ残さない"塩ビならではの復元性、柔軟性が十分に生かされています。
 同社の時田社長(東日本プラスチック製品加工協同組合理事長)は、防火水槽保護膜の可能性について「既設水槽の注水口(600φ)をこわさずに水槽膜を水槽内部に挿入できます。地下埋設型の水槽であれば津波にも流されず、中の水をすぐ利用できる。万が一水槽にひび割れが生じても塩ビターポリンの力でしっかりと水を守る。今後長期間にわたって復興作業が続けられる東北の被災地はもちろん、全国各地の災害への新たな備えとして、少しでも役立ててもらえれば」と語っています。

畳まれた製品を広げて 注水口から挿入し  空気でふくらませ    仕上げ作業   フタを被せて設置完了