2011年3月 No.76
 

塩ビタイルの「発電床®」床材を共同開発/東リ(株)

ひと足踏むだけでLED照明がピカッ。福祉〜商業・娯楽用まで多彩な用途

 発光ダイオード(LED)を繋いだ塩ビタイルやタイルカーペットをひと踏みすると、アラ不思議、電源コードもないのにLEDに鮮やかな光が−。新発想の「発電床®」床材が、いま密かな話題を集めています。2011年度からの試験発売を前に、その秘密を誌上大公開。

●塩ビ床材のクッション性+高効率発電

踏むと光るよ!

 塩ビタイルの「発電床®」床材は、床材大手の東リ(株)が慶応義塾大学発のベンチャー企業(株)音力発電(神奈川県藤沢市)と共同開発したもの。東リ総合開発部長の西川均理事に、そのメカニズムと開発の経緯を聞きました。
 「人が踏んだ時に生じる振動や圧力のエネルギーを、床材の中に組み込んだ圧電素子と呼ばれる部品で電気エネルギーに変換する、というのが発電の原理。振動発電の原理自体は古くから知られるが、発電量が微少なので音力発電が高効率の圧電素子を開発するまでなかなか実用に至らなかった。この技術を使って新発想の床材を作れないかと考え、2009年に共同開発をスタートした」

発電の原理

 圧電素子を用いた発電する床材は既に他社でも開発されていますが、従来品は表面に大理石や鉄板など固くて厚い材料を用いるのが殆ど。東リの製品は「あくまで普通の床材の感触で使える」という点に最大の特徴があります。
 「確かに、振動を効率的に伝える上では硬い表面材が理想だが、我々は床材メーカーとして、塩ビ床材のクッション性を生かしながら高効率発電するという2つの機能の一体化を追及した。塩ビの柔らかさに振動が吸収されても発電効率が落ちないよう、体重を均一に分散する設計を採り入れるなど、この中には独自のノウハウがいっぱい詰まっている」

●メンテナンスフリーで移動も設置も楽々

 
西川理事   笹川さん

 東リの「発電床®」床材は50cm角の塩ビ床材の中に数十個の圧電素子が埋め込まれています。発電量は1.3〜2mWで、ひと踏みでLED電球100個〜200個の点灯が可能。床表面材と圧電素子部分を一体化することで厚さ約1.5cmと製品を非常に薄くすることが出来ました。
 「その場で電気が起き、手軽にどこでも移動できて設置も楽。しかも、いったん設置すればメンテナンスフリーで半永久的に使える。塩ビの柔らかさを生かしたことで用途の幅も広がった」と言うのは、総合開発部の笹川幸亮さん。

クリスマスツリーの照明にも

 有望な用途としては、災害時の避難誘導灯や映画館など暗がりの足元照明、福祉施設の補助照明などが想定されていますが、蓄電技術や無線化の研究も進んでおり、将来は手近かのパソコンに信号を送ったり、電子看板と連動させて広告電源に利用するなどの用途も可能になる見通し。「この製品は使い方をどれだけ膨らませられるかが鍵。当面はクリスマスツリーのLED照明など娯楽的用途で普及を図るが、福祉・災害対応から商業、娯楽まで可能性は多岐にわたる」(西川理事)。
 東リでは、2011年度に試験販売した後、2012年度から正式販売を開始する予定。面白い使い方のアイデアがあれば同社総合開発部(TEL 06-6494-1792)まで、ぜひご連絡を。
*「発電床®」は(株)音力発電の登録商標です。