2009年9月 No.70
 

活気ある都市景観を生む、塩ビターポリンの屋外広告

塩ビならではの印刷性が可能にする
広告表現の鮮やかさ。リサイクルも順調

首都高速のネットワークボード
 インターネットの登場で、テレビ、新聞といった既製広告メディアのポジションが低下する中、塩ビターポリン(帆布)を使った屋外広告に新たな注目が集まっています。優れた印刷性で街を彩る塩ビターポリン広告の最新事情を、業界大手の(株)ヒット(東京都中央区銀座)に取材しました。


●圧倒的なインパクトを実現する塩ビターポリン

 屋外広告は街中の看板や貼紙も含めて古くから用いられてきた広告媒体のひとつですが、今回取り上げるのは『ビルボード広告』と呼ばれるアメリカ生まれの新手法。巨大なスクリーンに広告意匠を印刷しビルの屋上や壁面などに掲出するもので、日本でも街を彩る風景の一部として既に見慣れた眺めとなっています。
  ビルボード広告の最大の特徴は、圧倒的なスケール感が与えるインパクトの強さ。詳細な情報提供を主眼とする広告(例えばインターネット広告)と違って、訴求ポイントが瞬時に受け手の眼に飛び込んでくるため、自動車や飲料品などの新製品キャンペーンやテレビ番組、イベントの宣伝など即効性が求められる広告展開に威力を発揮します。スクリーンの素材にはポリエステル繊維や紙なども使われますが、その圧倒的インパクトを実現する上では塩ビターポリンこそ打ってつけの素材といえます。
  塩ビターポリンとは、ポリエステル繊維などの織物に塩ビ樹脂を両面コーティングした幕素材で、非常に丈夫で長持ちするためテントや簡易倉庫の屋根、フレコン袋地などに巾広く利用されています。ビルボード広告に使うメリットとしては、風雨に強く剥がれにくい、施工も手軽で低価格といった点もさることながら、何よりもその優れた印刷性が大きなポイント。インクの乗りや発色のよさといった塩ビならではの特性が、大画面でも鮮やかで精彩のある広告表現を可能にしているのです。

●使用済み品はリサイクル(高炉原料化)

 1991年に設立された広告代理店のヒットは日本におけるビルボード広告の草分けで、現在では80m2(10m×8m)や160m2の大ボードを都心部を中心に多数保有して、様々な企業に広告媒体として提供しています。中でも首都高速の周辺で展開しているネットワークボードは、80m2のボード32面をセットとして使い、渋谷のネットワークボードは8面をセットにしたもので、2週間〜1ヶ月半程度の短期間で集中的に一社の広告を掲出するものです。これはビルボード広告の「規模のインパクト」を最も際立たせる手法といえます。
  「生活パターンの変化で人々の外出時間は増加傾向にあり、それに伴って屋外広告に触れる機会も増え、媒体の有効性が高まっている。とりわけネットワークボードは当社の主力であり、この分野では業界トップのシェアを持つ。素材に塩ビターポリンを使っているのは当社のみだが、耐久性、印刷の鮮やかでこれを超える素材はなく、今後も塩ビターポリンは不可欠と考えている」と語るのは、同社営業管理部の松山将一郎課長。
  同社では使用済み塩ビターポリンのリサイクルにも熱心で、排出される塩ビターポリンの全量がJFE環境(株)(川崎市)の高炉原料化プラントで再資源化されています。
  単なる広告媒体にとどまらず、街の美観を維持しながら活気ある都市景観を創出する塩ビターポリン。最近では、不燃性を高めたFFシート(裏から照明を当てる内照式の幕素材)も開発されており、その可能性はさらなる広がりを見せています。