2009年9月 No.70
 

エコシステム千葉(株)の産廃中間処理事業

国内最大級の2号炉稼動で年間処理量は
25万トンに。リサイクルにも意欲

国内最大級の処理能力を誇る
エコシステム千葉の2号炉
 DOWAエコシステムグループのエコシステム千葉(株)(手塚和正社長/千葉県袖ヶ浦市長浦拓1-1-51;TEL 0438-62-4097)が建設を進めていた産業廃棄物中間処理の新施設(2号炉)が、この3月に完成し、4月からの試験運転を経て、現在本格稼動に入っています。年間処理量25万トンという日本有数の規模に加えて、熱エネルギーや燃え殻のリサイクルにも意欲的に取り組む産廃焼却プラントの近況を取材しました。

●創業125年の技術とインフラを生かして

  非鉄金属の製錬事業からスタートして125年、現在では、DOWAホールディングス(株)(旧同和鉱業)を中核に、金属加工、環境・リサイクル、半導体など多彩な事業活動を展開するDOWAグループ。中でも環境・リサイクルは同グループのコアビジネスに位置づけられる重要部門で、事業を担当するDOWAエコシステム(株)および傘下のグループ企業群の連携により、@携帯電話や電子回路基板、家電製品などの金属リサイクル、A産業廃棄物の中間処理、B土壌浄化、の3事業を中心とした、回収〜最終処理までのネットワークビジネスが構築されています(図参照)。
  本誌でも、「塩ビリサイクルの促進」という観点から同グループの活動には継続的に注目してきており、これまでにエコシステム小坂(旧小坂製錬)やエコシステム岡山、光和精鉱などを訪れ、鉱山製錬で培った独自の技術とインフラを生かしたその取り組みの状況を詳しくレポートしてきました。

●関東一円の環境負荷低減に寄与

DOWAエコシステムのネットワーク

  そのDOWAエコシステムネットワークの中で、産廃中間処理の拠点となるのが、今回ご紹介するエコシステム千葉(旧日本パール(株)、2006年に社名変更)。
  日本で初めてドラム缶ごと投入し焼却できる溶融型ロータリーキルン(現1号炉)を採用したことでも知られる同社は、京浜京葉工業地帯のほぼ中央という地の利を生かして、周辺企業から出る汚泥や廃液、廃プラスチック、さらには重金属等を含む処理の難しい危険物など、多種多様な産業廃棄物の安全処理に取り組んでいます。その活動は、周辺企業のみならず、日本最大の産廃発生地域である関東一円の環境負荷低減と資源の有効利用に大きく寄与しており、2008年には環境省が推進する「産業廃棄物処理業者の優良性評価制度」(環境保全への取り組みなどで優良と認められる産廃処理業者を都道府県が認定し、その自主的な取り組みを支援する制度)の適合確認も受けています。

●1日840トンの処理能力

内径5.5mの巨大なロータリーキルン

  新設された2号炉は、処理能力600トン/日。巨大なロータリーキルン(内径5.5メートル)を備えた日本最大級の産業廃棄物焼却プラントで、同炉の稼動により、エコシステム千葉全体の処理能力は既存の1号炉(240トン/日)と併せて840トン/日(年間約25万トン)にまで拡大。DOWAグループ全体で見ると、年間約100万トンの廃棄物処理体制が完成したことになります。
  また、こうした処理能力の大きさばかりでなく、廃熱ボイラーで水蒸気を発生し、それを廃棄物発電に利用していることや、燃え殻セメント原料などに再資源化しマテリアルリサイクルすることなどに特徴があり、「廃棄物の適正処理を行うと同時に熱エネルギーを回収し、燃え殻なども再資源化し有効利用することで、お客様により質の高いサービスを提供できる」(同社の竹田道郎管理課長)システムとなっています。


●最新式の立体自動倉庫を導入

処理品目の管理システム

  2号炉の処理フローは下図のとおり。さまざまな企業から集められた幅広い性状、多様な荷姿の廃棄物は、ロータリーキルンと2次燃焼炉により、最大1300℃の高温で分解、無害化され、投入されたドラム缶は鉄スクラップとして回収し金属原料に、廃棄物の溶融残渣は燃え殻としてセメント原料や路盤材などにマテリアルリサイクルされています。また、前処理工程に設置された4軸の破砕機は強力な設備で、廃プラスチックも硬いドラム缶も同時に難なく砕くことができます。
  一方、排ガスについては、急冷塔と2段のバグフィルター(消石灰噴霧による乾式処理)、触媒脱硝設備により徹底的な有害物除去が行われています。また排ガスの熱エネルギーは、廃熱ボイラーで水蒸気を発生させて発電を行い、得られた電力4000kWは工場内に供給されます。
  こうした炉本体の性能に加えて、最新式の立体自動倉庫(積層式の棚を設置して、荷物の積み下しから保管、移動、在庫管理などをすべてコンピュータで制御する倉庫)を導入した管理システムも2号炉の注目点のひとつ。

危険物立体倉庫

 例えば、ドラム缶などの容器入り廃棄物は個別の検査を経て廃棄物情報を登録した後、立体倉庫に一旦保管し炉の運転を見て随時投入することや、悪臭のあるものや引火性のある危険な廃棄物はドラム缶詰めすることで倉庫保管が可能になります。しかもその後の工程の破砕機、キルンへの投入がドラム缶のままでできるため工程全体において安全かつスムーズな作業が行えるよう工夫がなされています。また、処理品目ごとの徹底した管理を行いながら、綿密な操業計画に基づいて細かく廃棄物の投入を調整することで運転の効率化、安定化が図られています(下記「手塚社長のコメント」参照)。
  このほか、廃棄物の受け入れをすべて密閉された建屋内で行い、建屋内の空気は炉の燃焼用空気として炉に吹き込み臭気を外部に洩らさないといった外部への環境対応も見逃せません。

2号炉の処理フロー

 

●塩ビのリサイクルでも2号炉の動きに注目

事業の現状を説明する
手塚社長(右)と竹田課長

 竹田課長によれば、「当社が扱う廃プラスチック類は全体の3割程度。現在処理している塩ビの含有量は不詳ですが、2号炉でも塩素分で5%程度なら問題なく処理できる」とのことです。
  ただ、自動車シュレッダーダストや建設系混合廃棄物、家電製品などの比較的塩ビを多く含む廃棄物は、塩素の含有量を把握した上で、主に既存の1号炉を使って処理が行われています。これは、乾式洗浄の2号炉に対して、「1号炉は苛性ソーダによる湿式の排ガス洗浄設備を備えているため高負荷の酸性ガスにも対応できる」ことが主な理由です。
  また、同社の手塚社長は、「当社は方式の違う2つの炉を持っていることが強み。塩ビを含め、様々な品目を2つの炉の特性を使い分けて処理していくことで、お客様の要望に、より一層幅広く応えて行きたい」としており、塩ビのリサイクルという点でも、2号炉の今後の動きは大いに注目されるところです。

★手塚社長のコメント★
立体自動倉庫をフル活用して、少量多品種処理の時代に対応

 2号炉の完成で1日600トン、既設炉と併せて840トンという大量の産業廃棄物を処理することができるようになったが、プラントはまさに今立ち上がったばかりであり、まずは、周囲のお客様からの信頼を得られるように、粛々と事業を進めていくことが第一と考えている。
 廃棄物の処理は少量多品種処理が主流になりつつあると思う。当社が初めての試みとして立体自動倉庫を導入したのもそうした方向に対応するためで、この設備を使えば、庫内の廃棄物情報、例えば塩ビ系のものであれば塩素の含有量とかが倉庫単位ですぐに把握できる。さらに、これらの情報をDOWAエコシステムのネットワーク全体で取り組んでいる情報システムにリンクさせ管理に生かしていくことで、より安定した操業が可能になり、完全な適正処理を実現することができる。事故に対するリスクも極力減らすことができる。そういう努力こそが最終的にお客さまの信頼につながってくるのであり、我々は今それに取り組もうとしている。
 立体自動倉庫という最新の設備をフルに活用して、一歩一歩全体の仕組みをきちっと構築していくことで、少量多品種の時代に対応していく。それが私たちの使命であり、その活動を通じて、関東周辺の廃棄物適正処理、ひいては循環型社会の形成に貢献していきたい。