2009年9月 No.70
 

関東学院大学の学生が、
塩ビ管リサイクル現場の研修会

織 朱實教授のゼミ学生15名。さいたま市・大水産業(株)で2日間の研修

織教授(前列中央)と学生たち
 さる8月3日〜4日の2日間、埼玉県さいたま市の大水産業(株)(佐藤志郎社長)で、関東学院大学法学部(神奈川県小田原市)の学生による塩ビ管リサイクルの現場研修会が実施されました。真夏の炎天下で繰り広げられた2日間の取り組みから、学生たちが学び取ったものは?

●体を動かし汗を流して環境学習

 
大水産業本社

 研修に参加したのは、同大学法学部の織 朱實教授が主宰するゼミの学生15名(男性11名、女性4名)。織教授は、環境と法政策、文系における環境安全教育などの専門家で、塩ビのリサイクルにもかねてから深い関心を寄せています(本号2頁の「特別寄稿」参照)。
  その織ゼミのモットーは徹底した「現場主義」。環境問題を解決するために何ができるのか、現場を知ることで具体的な問題意識を育てていくという方針で、毎年1回行っているゼミ合宿でも、京都府長岡京での間伐作業や内蒙古の植林活動など、実際に体を動かし汗を流しながらの環境学習が進められています。
  今回の研修会も、このゼミ合宿の一環として実施されたもので、「塩ビ管のリサイクルの現場をぜひ一度見学したい」という織教授と、使用済み塩ビ管・継手のリサイクル事業に取り組む塩化ビニル管・継手協会との間で、昨年暮れから研修内容や日程の調整などが進められてきました。

●使用済み塩ビ管の分別作業を実習(研修初日)

 
まずは佐藤社長の説明を聞く

 塩化ビニル管・継手協会の使用済み塩ビ管・継手リサイクル事業は「パイプtoパイプ」のマテリアルリサイクルが基本。平成10年のスタート以来着実に実績を積み重ねており、平成20年度現在で回収量は年間約21,000トン、リサイクル率は約60%に達しています。
 今回、研修の舞台となった大水産業は、協会のリサイクル協力会社のひとつで、使用済み塩ビ管の回収から再生原料への加工、リサイクル塩ビ管の製造まで、一貫処理体制を構築した取り組みが大きな特徴。関係各方面からの注目も高く、これまでに環境NPOの「元気ネット」や行政機関などが度々見学に訪れていますが、学生の研修対象となったのは今回が初めて。
 研修初日の朝、織教授に引率された一行はまず、さいたま市岩槻区にある大水産業本社を訪れ、同社の佐藤志郎社長、塩化ビニル管・継手協会の石崎総務部長らから、リサイクル工程やリサイクル事業の現状、塩ビ管の種類と見分け方などについて説明を受けた後、隣接した浦和工場の屋外ストックヤードで、回収された使用済み塩ビ管の分別作業を実習。
 照りつける夏の太陽の下、3つのグループに分かれ、選別基準に基づいて6種類の分別に取り組んだ学生たちは、大水産業の現場担当者の指導をうけながら、種類の違いや汚れ具合などを慎重に見定めたり、シールやゴム輪などの異物をていねいに除去したりして、500kg詰めの専用カゴパレットに詰め込まれた使用済み塩ビ管を、30分ほどで分別完了。終了後、学生からは「分別が如何に大切で根気の要る作業かを実感できた」といった感想があいつぎました(下の囲み記事)。

   
いよいよ分別実習スタート
慎重に選別
汚れ落としもていねいに

●2日目はリサイクル塩ビ管の製造工場見学

  翌日、一行は茨城県石岡市にある大水産業の八郷工場に移動して、粉砕された原料が再び塩ビ管に生まれ変わるまでを見学。また、工場関係者の懇切な指導を受けながら、検査治具を使用したリサイクル管の寸法測定(外径や肉厚)や梱包作業なども実習し、精密なチェックを経て製品が出荷されるまで、いかに細心の注意が払われるかをつぶさに学習しました。
  2日間の研修は、今後の環境学習に取り組む上で貴重な体験となったようです。

   
八郷工場に到着
リサイクル管の外径を測定
梱包作業の実習

 

■ 分別の大切さを実感(参加した学生の感想から)

○使用済み塩ビ管は汚れているし、異物も混ざっているので、選別は手作業となり怪我にも注意しなければならない。家庭でやっているごみの分別とは全然違うことが実感できた。
○ガムテープの付着しているのを取るのが大変だった。気の遠くなるような仕事だ。
○大水産業の佐藤社長が「リサイクルの要は分別。分別がうまくいけば後はすべてうまくいく」と言っていた理由がわかった。分別を徹底するためにこんなに気を使わなければならないとは。
○塩ビ管を作っているところが見られておもしろかった。いずれの作業でも、より良いものを作る!という意識をすごく感じた。
○塩ビ管の精密な検査と、結束を体験させてもらったが、どの作業も精確さが必要な作業だと感じた。

【織教授からのコメント】
  1日目の分別実習では、リサイクル原料に異物が入っていると再利用しにくくなるということが学生にも十分理解できたと思う。2日目の工場見学では、中小企業のノウハウとはどういうものなのかを学生に感じ取って欲しかった。日本の技術力の核心は金型・検査の精度の高さにあり、それこそが中小企業の生き残りの技術であることを学生たちはしっかり学ぶことができた。今回の体験で、塩ビを見たら素通りできない気持ちになってしまったかもしれない。