2008年9月 No.66
 

イオンが塩ビ製ギフトカードを開発。リサイクルの取り組みも

使用済みカードを店頭回収して高炉原料化。塩ビ業界との連携も視野に

 世はまさにカード社会。軽くて便利なカードは今や生活の必需品となっていますが、一方で使用後のリサイクルも大切なテーマ。こうしたなか、流通業界大手のイオンリテール株式会社では、昨年12月に塩ビ製のギフトカードを開発すると同時に、高炉原料化によるリサイクルに着手するなど、積極的な取り組みを展開中。将来のマテリアルリサイクルの取り組みに向けて、塩ビ業界との連携も視野に入ってきました。

●リサイクルできないものは社会に出さない

 リデュース、リユース、リサイクルの3Rを基本とした「環境方針」(2006年2月改訂)に則り、ユニークなエコ経営に取り組むイオンリテール株式会社。店頭での資源回収や「マイバッグ」の推進はもちろん、リサイクル可能な商品の開発、ソーラーパネルなど環境に関するさまざまな仕組みを体系的に取り入れた「エコストア」の全国展開、さらには、2012年度までにCO2排出量30%削減(2006年度比)を掲げた「イオン温暖化防止宣言」の制定(2008年3月)など、その活動は多岐にわたっています。
 新たにスタートしたイオンギフトカードのリサイクルも、こうした活動の一環に位置づけられるもので、「リサイクルできないもの、ごみになるものは社会に出さない」という同社の精神が、事業の隅々にまで息づいていることを示す取り組みといえます。

●デザイン性、印刷性に優れる塩

 ギフトカードとは、一口で言えばカードタイプの商品券のこと。従来の紙製の商品券とは異なり、1枚のカードに1000円〜10万円まで1000円単位で入金(チャージ)できる上、カラーバリエーションも全14色(3万円以上の高額カード用にシルバー、ゴールドの2色を追加)と豊富なため、昨年暮れの発売以来、主に一般的な贈答用として消費者の人気を集めています。百貨店の全国共通商品券のようなオープンタイプではないため、利用はイオン系列の店舗に限られますが、同社では現在の約1000店舗(スーパー、大型ショッピングセンター〈モール専門店〉など)で販売し、モールの専門店を含めると国内最大規模の24,000店で利用が可能。
 また、デザイン性、印刷性に優れた塩ビを素材としているため、単なる贈答用としてだけでなく、生活のシーンに応じたさまざまなバリエーションの展開も期待されています。
 「デザインは自由に変えられるので、会社の創立記念日や結婚記念日、誕生日や入学・就職のお祝いなど、個人の生活スタイルやシーンに合わせてカスタマイズできる。こうした多彩な可能性は、デザイン性が高く印刷しやすい塩ビでなければ難しく、コストの安さといった点でも、素材は塩ビと企画の検討段階から決まっていた」(同社ギフトカード推進グループの高木薫さん)
 カジュアルで嵩張らず、紙の使用も減らせるという点では、それ自体がエコ仕様とも言えるギフトカードですが、1回使い切りのため、使用済みカードのリサイクルは「環境のイオン」にとって不可欠のテーマ。同社が高炉原料化によるケミカルリサイクルを採用したのは、「効率的なリサイクル手法を求めて様々な調査を重ねた末にようやくたどり着いた結論だった」といいます。

●塩ビ業界への期待ーマテリアルリサイクルの情報提供など

サービスカウンターに置かれた回収ボックス
 イオンが取り組んでいるリサイクルの仕組みは、1各店のサービスカウンターに設置した回収ボックスに使用済みカードを回収、2随時ギフトカード推進本部(千葉市美浜区)に搬送、ストック、3一定量に達した段階でJFE環境(株)に引渡し、同社の施設(使用済みプラスチック高炉原料化システム)で高炉原料化、という流れで(右図参照)、各店舗〜推進本部間の搬送には専用の通い袋や商品資材配送用のトラックを利用するなど、回収コスト低減のための工夫も随所に取り入れられています。
 取り組みに対する消費者の理解も徐々に深まって、回収量は順調に増えているとのことですが、今後、利用できる店舗やカードバリエーションの拡大などによる発行枚数の増加に伴い、回収・リサイクル量も急増していくことが予想されます。
 このため同社では、回収ボックスの増設と同時に、リサイクル手法についてもマテリアルリサイクルを含めて選択肢を広げたいとしており、「お客様がこんな利用方法もあるのかと驚いていただけるような、斬新で楽しいリサイクルを考えたい」(前出・高木さん)として、塩ビ業界に対してもリサイクル手法に関する情報の提供など協力を求めたい考えを示しています。
 各種プラスチックの中でも、塩ビは最もマテリアルリサイクルしやすい素材。全国各地で製品ごとに様々な取り組みが進んでいます。塩ビ業界としても、「こうした実際の取り組み事例に関する情報提供や新たな用途の調査研究などで協力できる部分は多い」(塩ビ工業・環境協会)と見ており、将来に向けて、両者の連携の可能性が高まっています。

イオンギフトカードのリサイクルの流れ


2008年は200万枚発行を目標
イオンリテール株式会社 ギフトカード推進グループ マネージャー 栗原 徹氏
 イオンギフトカードは、昨年12月「最大需要期のクリスマス前に全国販売スタート」というスケジュールで準備を進めていました。「リサイクル出来ない物は販売しない」という会社の方針がクリア出来ず非常に困っていた時、JFE環境(株)でケミカルリサイクルが出来ることが分かり、無事昨年12月1日に全国発売することが出来ました。
 2008年は、200万枚のギフトカードの発行を目標としており、これがもしリサイクル出来ない場合は約10トンの塩ビが廃棄物になりますので、お客さま、店舗と協力してリサイクルの徹底を実施していきたいと思います。
 将来的には、ケミカルリサイクル以外にもマテリアルリサイクルも考えており、VECのお力をお借りし今後も取組んで行きたいと思います。