2007年3月 No.60
 

塩ビを含む建設系混合廃プラの
有効利用へ新たな道

関東建廃協、DOWAエコシステム(株)、VECの
サーマルリサイクル共同試験で最終報告

 関東建設廃棄物協同組合(関東建廃協)とDOWAエコシステム(株)(旧同和鉱業鰍ゥら分離)及
び塩ビ工業・環境協会(VEC)の3者が進めてきた「建設系混合廃プラスチックのサーマルリサイ
クル処理試験モデル事業」の最終報告書がまとまりました。塩ビを含む混合廃プラスチックを商業
規模で安定的かつ連続的にサーマルリサイクル処理できることを実証したもので、資源循環型社会
の構築や省石油資源へ向けて、またひとつ新たな道が開かれたことを示す試験結果となっています。

●商業規模で安定的かつ連続的な処理が可能

  ビルや家屋の建設工事からは様々な廃棄物が発生します。このうち、新築工事で発生する廃棄物については、建設会社を中心に発生抑制と現場分別の努力がなされ、排出量も年々減少傾向にあります。しかし一方で、改修や解体から発生する廃棄物は、高度成長期に建設された建物が建替え時期をむかえていることから、今後さらに増加することが見込まれています。
  改修・解体系の廃棄物の中には、塩ビをはじめ多種のプラスチック類も含まれていますが、これらの廃プ
ラスチックのうち塩ビパイプや電線被覆材など見分けが容易でリサイクルシステムが確立している廃塩ビの
一部を除くと、多くのものが混合物の状態で排出されています。このため選別も困難であり、埋立処分に頼
らざるを得ないのが現状です。このような状況の下で、建設系混合廃プラスチックの埋立処分量を減らし有効活用していくことが、資源循環型社会構築への寄与という観点からも関係業界全体の重要な課題となっています。
  こうした中、関東建廃協、DOWAエコシステム、VECの3者は、平成16年度から塩ビを含む建設系混合廃プラスチックのサーマルリサイクル確立へ向けて共同試験を開始しました。
  まず平成16年度には小坂製錬(株)(現エコシステム小坂(株))において、100トン規模の技術実証試験を実施し、その処理が技術的に可能であることを確認しました。今回の試験はこの取り組みをさらに進めて、平成17年7月より実用化を視野に入れたモデル事業を実施しました。
  具体的には、関東建廃協の会員の中間処理会社6社から多様かつ大量な建設系混合廃プラスチック(総量約1,100トン)を提供してもらい、既に商業規模で稼動しているエコシステム岡山(株)(旧同和鉱業岡山工場)の施設を用いて長期間継続して(1年以上)サーマルリサイクル処理を実施しました。今回まとめられた最終報告書では、「商業規模の運転において、塩素濃度3〜7%を含む建設系混合廃プラスチックが安定的かつ連続的に処理可能で、埋立処分に替わる新たなリサイクルシステムとして確立できたこと」が報告されています。また、建設系廃プラスチック以外の塩ビを多く含む混合廃プラスチック例えば容器包装プラスチックの分別残渣などのサーマルリサイクルへの適用も期待されます。

建設系混合廃プラスチックのサーマルリサイクル処理試験フロー


●塩素による設備への影響もクリア
 今回のモデル事業では、以下の3つを主な目的として、その結果がまとめられています。
【目的1】塩ビを含む多種多様な建設系混合廃プラスチックがサーマルリサイクル処理できることを実証する。
【試験結果】多種の建設系混合廃プラスチックが、商業施設において他の廃プラスチック同様に、焼却、エネルギー回収、排ガス処理などの問題もなく、また同施設で処理されているASRの法的な基準である施設活用率も充分に満足して処理できることが実証されました。
 このことにより埋立処分量の削減とエネルギー回収が可能になり、今日の埋立処分場の問題、資源循環問題や化石燃料資源問題において1つの役割を果たし得ることが確認されました。
【目的2】商業規模の安定的かつ連続的な処理ができること(特に塩素の含有にも問題がなく安定かつ連続
処理ができることを確認する)。
【試験結果】1年間以上にわたる商業規模の長期運転において、安定的に良好な処理ができたことが確認されました。また塩素による腐食の問題は特になく、廃塩ビもサーマルリサイクルできることが分かりました。
【目的3】経済性があり、社会システムとしてリサイクル活用できること。
【試験結果】リサイクルシステムとしては確立できましたが、異物を除去する選別や破砕などの前処理の手間とそのコスト問題があり、その改善が今後の課題です。
現段階では安定型埋立処分のコストには至っておらず、更なるコストダウンの努力が必要と考えています。

建設系廃プラスチック類の有効活用に大きな期待を抱かせる試験結果

関東建設廃棄物協同組合専務理事 斉藤俊吉 氏

  建設廃棄物を取り扱う当組合にとって、廃プラスチック類のリサイクル率の低迷は大きな課題の一つです。その原因としては、(1)リサイクルに比べて埋立処分費の方が安いこと、(2)マテリアルリサイクルをする場合、廃プラスチック類を種類ごとに分別することが困難であること、(3)サーマルリサイクルをする場合、混入している塩化ビニルの分別が困難であること等があげられます。
  このような状況のなか、これからは廃プラスチック類の埋立処分が困難になることが想定されることから、現在、各種リサイクルに取り組んでおりますが、今回の実験結果により塩化ビニルをパーセントオーダーで含む廃プラスチック類の処理に活路が見出せたということは、大変意義あるものです。
  今後は、異物の混入、破砕精度の向上等を解決することにより、サーマルリサイクルの有効な方法の一つとして検討していきたいと考えております。

建設系混合廃プラスチックのモデル事業を終えて

DOWAエコシステム滑ツ境ソリューション室長 加藤秀和 氏

  多種多様の塩ビを含む建設系混合廃プラスチックを商業施設であるエコシステム岡山(株)の施設で、継続かつ安定的にサーマルリサイクルができたことは大きな成果と考えます。塩素問題もなく、NOx、CO、ダイオキシンの発生を抑えつつ安定した連続運転を行い、エネルギー回収できたことは画期的なことです。
  その一方で、良好な運転を行うためには、異物を除去する選別や破砕を十分行うことが必要で、前処理が重要であることを認識しました。この選別や破砕などの前処理の手間とそのコストの問題が今後の課題といえます。
現状では、安定型埋立コストと競合することは難しいかもしれませんが、将来的には極力コストミニマイズできるよう技術開発を進め、このサーマルリサイクルの実現に向かっていきたいと考えています。当社は、塩ビを始め多くの廃棄物のリサイクルを総合的に推し進めることで、循環型社会構築に役立て行きたいと願っています。