2007年3月 No.60
 

創刊15年、60号発刊を迎えて

塩化ビニル環境対策協議会 事務局長
塩ビ工業・環境協会 専務理事
西出 徹雄

 「PVCニュース」は1992年6月の創刊以来今回で60号となります。季刊誌ですので、15年の間たゆまずに発行を続けてきた結果ではありますが、読者の皆様、本号にお言葉を寄せていただきました松田美夜子先生をはじめ情報提供や取材、インタビューなどにご協力いただきました多くの皆様の温かいご支援と、作成に当たった関係者の熱意があって初めて、今日まで継続してくることが可能となったものであり、ここに改
めて厚く御礼申し上げます。
 創刊以来の15年を振り返ってみますと、第1号が発行された1992年はリオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議で「アジェンダ21」が採択された年ですが、その後今日までの世の中の変化、特に環境安全問題についての認識の変化の大きさは驚くばかりです。塩ビ樹脂は90年代後半、ダイオキシン問題やいわゆる環境ホルモンの議論の高まりの中で大きな影響を受けてきました。塩ビ樹脂が無くなればダイオキシン問題が無くなるかのようにマスメディアで繰り返し報道された当時の議論は、業界関係者の立場からすれば濡れ衣、風評ともいえるもので、科学的な議論が進まないまま塩ビ樹脂を使う消費財メーカーや流通事業者の塩ビ忌避により国内需要が大きく落ち込むという、欧米では見られない状況にまで立ち至りました。塩ビの事業に携わる私たちは、一時的な宣伝的手法に頼るのではなく、事実をもって語らせることを基本に、科学的な研究に基づく安全性評価、法律によるダイオキシン類対策の進展、様々な形で進むリサイクルの実態などを、この「PVCニュース」を通じて、多くの方に知っていただくよう努めてまいりました。
 幸いにして、ダイオキシン対策は法律による焼却設備の規制等により排出量が激減する結果となり、ダイ
オキシンは焼却の仕方こそ問題で適正な焼却の実現で排出削減ができるという私たちの主張が実証されました。いわゆる環境ホルモンの問題も環境省等によるメダカやラットを使った評価試験により、問題視された可塑剤については所見なしとの結果が得られ、環境省もExTEND2005プログラムにより科学的な評価や自然観察を冷静に進めていく姿勢に転じました。こうした状況の変化の中で、国や自治体においても塩ビ忌避的な基準や規定の削除、グリーン調達品目への塩ビ製品の追加が進み、民間企業においても塩ビの再評価が進みつつあります。
 塩ビ樹脂が優れた性質を持つことは塩ビ事業に直接関わる方々には自明のことかもしれませんが、環境・安全が今後ますます重視されていくことを考えれば、塩ビ樹脂は石油への依存度が低くCO2排出を削減でき、高度なリサイクルも可能で、省エネにも貢献するなど循環型社会を支える環境に優しい素材であることを消費者やユーザー産業の方々に広く理解していただくことが何よりも重要であると考えます。「PVCニュース」を通じて塩ビの実態をありのままの姿で知っていただけるよう、これまでにも増して努力を続けていく所存です。今後とも皆様のご愛読、ご支援を宜しくお願い申し上げます。